文化・ライフ

六男の挑戦 総公式練習時間は1004時間以上

20151218_Roppongi_01 団員の平均年齢は62・3歳。約140人が所属し、その顔触れは元首相、経営者、医師、弁護士、俳優と、練習場を見渡せば各界で名を馳せてきた人物ばかりが並ぶ。そんな六本木男声合唱団倶楽部(六男)は来年1月、アマチュアの合唱団ながら東京・渋谷のBunkamuraオーチャードホールの大舞台で、オリジナルミュージカル公演「ウェスト・サイズ・ストーリー」に挑戦する。

 この公演は昨年、団長である三枝成彰氏の提案で挑戦することになった。名作「ウエスト・サイド・ストーリー」から50年、ニューヨークの介護施設を舞台に、腹回りが気になる元ギャングの老人たちが抗争を繰り広げるといった内容で、鳩山友紀夫(由紀夫)元首相、宮内義彦・オリックス シニア・チェアマン、服部真二・セイコーホールディングス会長兼グループCEOら約120人が出演する。

 「ミュージカルを上演するまでになるとは思っていなかった。このメンバーは、挑戦しようと思うとなんでも挑戦してしまう。これは六男の強みでもあり、問題点でもありますね」

「本番に強い六男だからきっと成功する」と語るケント・ギルバート氏

「本番に強い六男だからきっと成功する」と語るケント・ギルバート氏

 こう本音を語るのは六男発案者の弁護士、ケント・ギルバート氏。1999年、チャリティーを目的に作曲家の三枝氏らと共に六男は結成した。想定外の盛り上がりを見せ、月1回のペースで練習する想定で本格始動したが、今では週に3回、土日は11時間を費やして特訓に明け暮れ、国内では東京オペラシティやサントリーホールなど名だたる舞台に立ち、海外公演も10回以上行った。

 しかし、今回初挑戦となったミュージカルは苦戦した。歌はアマチュアながらも練習してきたが、踊りと演技は初心者ばかりだ。歌のみならずセリフを覚え、体を動かすのも重労働だった。本番までの総公式練習時間は1004時間を予定しているが、「それでも足りないから、自主練をしようという話になっています。週末も練習を最優先にしているので、家族には不評を買っています」と六男歴8年の元日本テレビアナウンサーの小倉淳氏は苦笑する。

六男の魅力 能動的に動く歌い手

 ここまで突き動かされる魅力は何なのか。六男最年長団員のぴあ取締役、WOWOW元社長の佐久間曻二氏はこう語る。

 「かっこよく言えば、未知への挑戦です(笑)。六男に入るまでは、合唱は一度も習ったことがないですし、それまでは観客や傍観者の立場だった。それが今では全く逆の立場。この挑戦は大変ですが、とても楽しい。現役経営者時代に挑戦していれば、能動的に働く社員の気持ちを考えて、もう少し大切にしていたと思います」

ダンスを披露する予定の三枝成彰団長(中央)と女役に扮する小倉淳氏(右)と佐久間曻二氏

ダンスを披露する予定の三枝成彰団長(中央)と女役に扮する小倉淳氏(右)と佐久間曻二氏

 三枝氏も「アマチュアは真剣にやれば面白い作品が作れる。だから、これだけ熱心に取り組んでいるのです。一所懸命にやればやるほど愛が沸いてくるもの」とし、小倉氏も「中年男がここまで真剣に取り組んでいる。公演が終わったらきっと泣いてしまうと思う」と口をそろえる。

 六男の挑戦はミュージカルにとどまらない。15年はサンクト・ペテルブルク公演、16年にはニューヨーク・フィルハーモニックを従えてカーネギーホールに立つというプロ演奏家でも叶えられないような舞台が控える。その意義を三枝氏は力説する。

仕事帰りのわずかな時間と休日を利用して歌の練習に励むメンバー

仕事帰りのわずかな時間と休日を利用して歌の練習に励むメンバー

 「今回のミュージカルで使った衣装やテープ、楽譜も貸し出す予定で、全国の高齢者に挑戦してもらいたいのです。われわれは男性だけですが、女性が挑戦しても構いません。ゲートボールやカラオケ大会だけでない選択肢を見せたいですし、アマチュアでも真剣に取り組めばできるという見本になりたいのです。そして高齢者に『もう一度頑張ってみたい』と思ってもらえれば」(三枝氏)

 1月の上演まで残りわずか。ギルバード氏は「仕掛けも多く、見逃せない舞台になる。ミュージカルは二度とできないかもしれないので、思い出に残る作品にしたい」と意気込む。練習の成果がどのように実を結び、舞台で花開き、同年代が目標とする姿となれるのか。中高年の男たちの挑戦から目が離せない。

(文=本誌/長谷川 愛 写真=西畑孝則)

 

【文化・ライフ】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

二宮清純のスポーツインサイドアウト

一覧へ

米山公啓の現代医療の真相

一覧へ

見落としやすい薬の副作用

[連載] 現代医療の真相(第19回)

現代医療の真相

[連載] 現代医療の真相(第18回)

肺炎球菌ワクチンから見えるワクチン後進国日本

[連載] 現代医療の真相(第17回)

認知症・徘徊老人を受け入れる街づくり

[連載] 現代医療の真相(第16回)

サプリメント・ブームにもの申す

[連載] 現代医療の真相(第15回)

インフルエンザ予防接種は受けるべきか

吉田たかよしのビジネス脳の作り方

一覧へ

ネット検索の集中力は「独り言」で高まる!

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第20回)

ビジネス脳の作り方

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第18回)

人材育成のコツ ~部下の才能を褒めるとダメ人材に育つ~

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第17回)

株取引の損得は男性ホルモン量で決まる?

[連載]吉田たかよしのビジネス脳の作り方(第16回)

アルツハイマー病は脳の糖尿病!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る