政治・経済

大きな成果を上げる紫波町の「オガールプロジェクト」

 

 岩手県紫波町が取り組む都市開発事業「オガールプロジェクト」が大きな成果を挙げている。

 11年以上も未利用のまま塩漬け状態にあった町有地をPPP(官民連携)方式で再生するのがこの事業の狙いだ。民間の力を生かした独自の手法が功を奏し、年85万人もの人々が押し寄せる。多世代の住民が集い、ビジネスや観光、スポーツなどさまざまな目的で人々が交流する新しい賑わいの街が生まれた。

 プロジェクトの対象地区は、JRの紫波中央駅前に広がる町有地11・7ヘクタール。農村と都市が共生する街、若者や高齢者が安心して暮らせる街、人にも地球にもやさしい街──この3点が目指す開発のコンセプトだ。

 同町経営支援部の高橋堅企画課長は「要するに、持続的に発展する街、若者が挑戦し多世代の市民が交流する街をつくりたいということ」と説明する。

 プロジェクトが動き出したのが2009年4月。官民でつくったまちづくり会社、「オガール紫波」(資本金1千万円)が事業推進の旗振り役、調整役を担っている。

 同社の粘り強い活動でまず実現したのが、岩手県フットボールセンターの誘致だ。人工芝のサッカー場など、総工費1億7千万円を掛けて造られたこの施設は、県内初の日本サッカー協会公認グラウンドとして11年春に開場。今では県内外から年4万人を超す愛好家が利用している。

 開発地区は4街区とその北側にある住宅街「オガールタウン」の5つで構成する。これまでにB街区の官民複合施設「オガールプラザ」が12年6月に、A街区の民間事業施設「オガールベース」が14年7月にオープンしている。

 C街区には老朽化した町庁舎が移設進出し、15年5月にも業務を始める予定だ。D街区には新エネ・ステーションが稼働し、地区全体に熱エネルギーを供給する。隣接地には保育施設が立つそうだ。

 オガールタウンはエコ住宅基準と景観協定に基づいた環境重視の新しい住宅街だ。町産材を使う「紫波型エコハウス」を軸に57戸の宅地分譲を計画、「住みたくなる」街づくりを目指す。

 「プロジェクトの着手率は80〜90%。目標はまだ先だ」──オガール紫波の中村重雄取締役はこう説明するが、事業の成果は既に数字に表れている。12年度で57万人、13年度で83万6千人だった各種施設の利用者数が、14年度は「85万人を超す勢い」。町の人口の25倍もの集客ぶりなのだ。

 ビジネスホテル「オガールイン」と日本初のバレーボール専用体育館「オガールアリーナ」を運営するオガールベースが14年夏から新たに稼働したこと、イベントの参加者が予想以上に多いことなどが利用者の増える根拠だ。

 

オガールプロジェクトが効果をもたらした3つの要因

 

 利用者の目当てはオガールプラザだ。総工費約10億円、木造2階建てのこのプラザは図書館や地域交流センター、子育て応援センターなどの公共施設と民間テナントが同居する。テナント企業は産直や病院、薬局、学習塾、カフェ、音楽スタジオなどだ。

初の町立図書館。利用者を迎える雰囲気づくりに気を配っている

初の町立図書館。利用者を迎える雰囲気づくりに気を配っている

 この中で図書館と産直が目玉だ。蔵書数8万冊の図書館は同町初の公立図書館。雑誌の種類が多く、町内で働く若者を招こうとビジネス支援の情報も重視している。年20万人を超す利用者がある。

 「紫波マルシェ」と呼ぶ産直施設はデパ地下のような雰囲気だ。260人の農家が新鮮な農産物を出荷し、年27万人もの住民が押し寄せる。図書館と産直がいわば最大の集客装置で、ここに来た市民が民間事業所に次々と流れる相乗効果を果たしている。

 オガールプロジェクトが地域の盛り上げに大きな効果をもたらした要因として、3点を指摘したい。

 第1は、開発手法として採用したPPP方式が的確に機能している点だ。オガールプラザの建設に民間資金(東北銀行が融資)を導入したことといい、住民が強く希望した図書館や産直を設けたことといい、民間の知恵と資金をフルに活用した。官民施設を一体的に新設することで、町の財政負担を最小にしている。

 第2は雇用の場と、地場産業が活躍する場を作った点だ。オガールプラザだけで105人もの雇用を創出した。コンビニを除き、テナント企業はすべてが域内事業所で、いずれも生き生きと活動している。

 3つ目は民間主導のイベントを連発し、賑わいの空間を作っている点だ。14年秋の「オガール祭り」では3日間で2万人近い住民が集まった。

 熊谷泉・紫波町長によると、オガールは「成長」を意味する紫波方言と、フランス語「ガール」(駅)を合わせた造語。オガール事業を始発駅に、発展するまちづくりに向かって「手綱を引き締め」ている。

 
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