政治・経済

「バンザイ」をしなかった小泉進次郎氏が問題提起した政権の感度の鈍さとは

 それにしても、「大義」や「争点」がいまひとつはっきりせず、有権者も迷う総選挙だった。

 確かに安倍首相にとって、今後の長期政権の足場固めに向けて今やるのが最も有効と判断したのだろう。もちろん解散は「首相の専権事項」であり、最高権力者が権力を維持するためにはいつどんなときでも「解散」していいのだ。こうしたことから、今回は「政策」ではなく「政局」解散だったと言えそうだ。

 しかし、今回の解散・総選挙では、明らかに「国民の政治意識と永田町の認識との乖離」が露呈したと思う。選挙が終わったから「それでおしまい」かというと、この乖離が、今後安倍政権が政策を実現していく際に、意識のズレ、政策の失敗、支持率の低下といった負の連鎖を生む危険性を、政権は十分認識すべきだ。

 実は、解散当日に、早くもそうした「政権の国民に対する感度の鈍さ」について、行動をもって、安倍首相や自民党全体に問題提起したのが、小泉進次郎前内閣府政務官(復興担当)だった。

 11月21日、衆議院の解散詔書読み上げ直後に行われる恒例のバンザイ。今回、民主党と維新の党は「大義なき解散に対する抗議」として「バンザイ」をしなかった。ところが、何と与党自民党の中にあってこの「バンザイ」をしなかったのが進次郎氏だった。

イラスト/のり

イラスト/のり

 議場から出てきて記者団に囲まれた進次郎氏はこう話した。

 「多くの国民は解散を『今じゃない』と冷めている。国民が解散の大義を感じていないのにシロだクロだと選挙をやることは国民の思いから離れてしまう。バンザイしている姿は、余計に国民との心の距離を生むんじゃないか」

 与党の一員として、バンザイをしなかったその行為に対して、自民党内からは批判の声が次々に上がった。

 安倍首相の出身派閥の町村派幹部は「世論調査などをすると国民の間には解散反対が多いから、それに乗ったポピュリズムでしかない。解散はいろいろ考えはあるだろうが安倍総理の決断。これは厳重注意モノじゃないか」。また、自民党中堅議員は「彼特有のパフォーマンスでしょう。野党時代なら『少々暴れても許される』ということだったが、今はもう与党なんだから、どう行動するか少し自覚してほしいと思いますね。彼もずぶの新人じゃないんだから。進次郎なら許されるという時期は過ぎたんです」と語る。

小泉進次郎氏選挙応援で実感する自民党への逆風

 だが、自民党内のこうした見方に真っ向から反論するのは、東日本大震災の被災地の東北地区自民党若手県議会議員だ。

 復興政務官を自ら希望した進次郎氏は「復興がライフワーク」と公言するほど。進次郎氏は被災地に通い詰め、地方若手議員や被災者、地元の自治体関係者らと膝詰めで話をしてきた。

 「バンザイをしなかった進次郎さんに私たちは拍手を送りました。被災地の人たちは私の知る限りほとんどが解散に疑問を持っていました。特に、今も寒くて狭い仮設住宅で過ごす人たちなどは『もう4回目の年越し』ですよ。選挙なんかやっている時間があるのか? 復興はどうした? という怒りです。被災してからこれで3回目の国政選挙ですが、1票入れても何が変わるのかという不信感が根強い。進次郎さんは被災者の本音を受け止めてくれる数少ない自民党国会議員。だからこそあの行動(バンザイをしない)をしてくれたんです」(若手県議)

 進次郎氏が代弁したのはそうした被災地の声だけではない。

 実は、常日頃から進次郎氏は国政選挙から地方選挙に至るまで応援要請が党内でもトップクラスだ。ところが、逆に彼が応援に呼ばれる選挙はどれも自民党候補が厳しい戦いを強いられている選挙なのだ。「負けているから彼が呼ばれる」(自民党選対幹部)のである。そうした選挙応援に出向くと、進次郎氏は誰よりも「自民党への批判や今の逆風」を実感するのである。

 かつて、同じように選挙応援で引っ張りだこだった故橋本龍太郎元総理が政調会長時代に私にこう言ったのを思い出す。

 「俺が呼ばれるのは厳しい選挙ばかり。だから応援に行くと、今自民党のどこが悪いのかなど批判の風が読める。だから東京に戻ったら『これやっちゃいけない、こうしたほうがいい』と幹事長や総理に必ず報告するんだ」

 被災地をどの自民党議員よりも回り、全国の自民党に厳しい声の選挙区を回っている進次郎氏。今の世論に最も身近に触れている彼が「バンザイしている場合か」と行動したのは、今回の解散総選挙や安倍政権に対して世論が抱く批判や本音を自民党自身に警告したのだ。そんな進次郎氏を「パフォーマンスだ」などと軽視していると、自民党は痛い目に遭うかもしれない。

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