
褒めて育てる人材育成には”コツ”がある
最近、「褒めて育てる」がちょっとしたブームなようで、子どもだけではなく、会社の部下を積極的に褒める上司が増えてきました。ただし、褒め方が悪いとダメ人材が育つことが研究で実証されています。とりわけ弊害が大きいのが「才能を褒める」こと。米コロンビア大学の研究グループが、ニューヨークの小学5年生の子どもに対し「頭がいいね」と才能を褒める実験を行ったところ、子どもたちは、「努力をしなくなる」、「難しい問題に取り組もうとしなくなる」といった傾向を示し始め、結果、「問題を解く能力が伸びなくなる」という明確な悪影響が見られたのです。また、のちの研究で、同様の影響が大人にも生じることが分かっています。
才能を褒められたら、脳内で快感物質のドーパミンが分泌され、気持ちが良くなります。脳は、その快感をさらに大きくしようと思い、心の奥底で才能をもっと明確に証明したいという欲求が生じるのです。ただし、努力をして良い結果を出しても才能があることの証明にはなりません。そのため、才能を褒められた人の脳は、褒めてくれた人の期待に応えるために、わざと努力をしなくなるのです。
特に最近は自己愛が強い若者が急増しており、下手に才能を褒めると増長して、上司の言うことを聞かなくなります。また、才能がある割には待遇が悪いと不満を募らせ、最悪の場合、「現代型うつ」になることもあるのです。
人材を健全に育てるために最も効果的なのは、努力したプロセスを褒めることです。コロンビア大学の研究によれば、努力を褒められると、その期待に応えたい欲求が生じ、努力を積み重ねるようになるとのこと。また、努力する姿勢をより明確に示すため、困難な課題にも積極的にチャレンジするようになり、結果、問題解決の能力が高まるのです。ただし、努力を適切に褒めるには、褒める側にも努力が必要です。例えば、営業成績が良かった部下に対しては、「クライアントの事業計画をよく調べたね」といった具合に、プロセスに踏み込む必要があります。そのためには普段から部下をよく観察していなければなりません。口先だけの褒め言葉で部下が育つはずはないのです。
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