テクノロジー

2015年は予測分析の手法が本格的に導入される

 世界中の特許情報や研究論文データなどから、技術コンサルティングを顧客に提供するコVALUENEXンサルティング。同社CEOの中村達生氏によれば、ビッグデータを分析する上で「プレディクティブ・アナリティクス(予測分析)」の手法が、本格的に活用されるのが2015年だという。これまでよりさらに、一般消費者の生活に予測分析の結果が反映されるようになるとのことだ。

中村達生 購買履歴、年収、性別、居住地といった消費者のデータを元に、次の消費行動を予測する動きは、Eコマースの分野などで既に始まっている。中村氏は「予測分析はその先を行っていて、今存在しない商品を作ることにもつながります。例えば雪かきを手で行うのは重労働なので、機械が自動的にやってくれたら便利。そこで雪国に住む人で、ロボット掃除機の『ルンバ』を使って家庭内の掃除を行っているような人に、自動雪掻き機を薦めれば売れると想像できます。そこまでの想像を、人間ではなく機械が行うようになっていくでしょう」と語る。

VALUENEX中村達生が重要視する「技術の空白地帯」を見つけること

 中村氏によれば、特許情報や論文情報を収集・分析することによって、「技術の空白地帯」を見つけることが重要だという。

 空白地帯とは、(1)まだ誰も気付いていないフロンティア領域、(2)既に実行されているが、論文も特許も出されておらず意図的に秘匿されている領域、(3)物理的に実現不可能な領域、の3種類に大きく分かれる。企業が狙うべきは1つめの領域で、そこに先行的に技術を投入することで、市場をリードできる可能性が高まっていくと中村氏は指摘する。

 これらを踏まえた上で、15年の技術動向を予測してもらった。

VALUENEX中村達生が注目するキーワードその1「自動制御化」

 中村氏が注目するキーワードの1つが、自動運転車に代表される自動制御化だ。自動運転車については、ドライバーがいなくても車が自律的に走行して目的地まで行けるようにするものと、インフラとの通信などを通じて一定レベルの自動運転を実現するものの2種類の方式が開発中だ。

 グーグルなどが取り組む前者の方式に関しては、否定的な自動車メーカーが多い。ソフトウエア制御の点からアプローチするグーグルに対して、自動車メーカーは安全性を最重視するからだ。製造物責任(PL)法の問題もあり、多くの自動車メーカーは、100%の安全性が確保できない限り、市場に自動運転車を投入するのは難しいと考えている。ただ、他社に後れをとらないために、車載イメージング技術やセンシング技術等の開発競争が続いており、今後はこの動きが加速すると予想される。

 自動車以外の分野でも、自動制御化はEコマースの領域で導入がさらに進みそうだ。消費者からは認識されにくいが、Eコマースで注文から短時間で配送が可能なのは、あらかじめデータから顧客の消費動向を予測し、そのアイテムを購買しそうな層が多い地域の配送センターに、あらかじめ商品を配置しておくといったことが行われているからだ。商品のピックアップなど、人手で行われている作業についても、今後は自動化が進んでいく可能性が高いという。

 また、現在は専門家の知見に頼っている論文検索や特許の検索についても、自動化が進むことによって新たな発見の機会が増えると中村氏は指摘する。

VALUENEX中村達生が注目するキーワードその2「ITヘルスケア」

 もう1つ中村氏が着目するのがヘルスケアの分野だ。レセプトデータのIT化をはじめ、ITを活用した医療サービスも注目されている。特に、遺伝子情報の解析には、DeNAやヤフーといったIT企業が参入しており、今後も注目を集めそうだ。

 遺伝子検査が低料金で行えるようになれば、保険商品が見直しを余儀なくされたり、製薬会社の製品の作り方が変わったりする可能性もある。例えば、特定の疾病にかかりにくいという情報を得ることができれば、消費者は関連する保険に入る必要がなくなってくる。遺伝子情報を元にアドバイスを提供する専門コンサルタントなど、新たなビジネスも生まれるかもしれない。

 遺伝子検査が一般的になれば、予防医学への取り組みも本格化するとみられる。ちなみに、これについては前出のオールアバウトの江幡氏も指摘していることだが、予測分析のアプローチからも同様の見立てが出ているのが興味深いところだ。

(文=本誌編集長/吉田 浩 写真=佐藤元樹)

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