テクノロジー

0127_P062_Ph

マツウラ・リチャード 1985年生まれ。上智大学卒業後、2009年シンガポールの商事会社で貿易コンサルタント業務に従事。金属、石炭、石油、ガスの採掘から製品の在庫管理まで手掛ける。11年個人事業としてLED照明の販売を開始し、12年ステラージアLEDを設立。

今年で第4回目を迎えた、起業家を発掘・応援する「金の卵発掘プロジェクト」。満場一致でグランプリに決定したのは、優れた技術者を擁し、革新的なLED照明を開発したマツウラ・リチャード氏である。その市場優位性、そして彼のビジネスに懸ける想いに迫る。

世界最高のLED照明と評される理由

── グランプリ受賞おめでとうございます。審査会での論点のひとつに、御社のLED照明の独自性がありました。

マツウラ LEDの機器を作るのは、それほど難しいことではありません。必要な部品を購入して組み上げることができれば誰にでも可能です。しかし、本当に良いLED照明を開発するのは非常に難しいことです。

── 「本当に良いLED照明」とは。

マツウラ 当社が開発したのは「交流で駆動するLED照明」です。これまでのLED照明は使用に際して電力会社から供給される交流(AC)を直流(DC)に変換する必要がありました。
 しかし、直流で駆動するタイプのLED照明は精密機器に影響するノイズが発生し、さらに直流交換回路の寿命がLED光源よりはるかに短いという課題がありました。われわれの交流駆動回路を使ったLED照明は直流に変換する必要がないために、ノイズの発生がなくなり、LED照明の寿命をLED光源の寿命と同じ6万時間まで延長することを可能にしました。消費電力も既存のLED照明より約30%減らすことに成功しています。LED照明業界の常識を根底から覆すインパクトを持った商品です。

── この技術が日本の大手企業などによってキャッチアップされる可能性はないのでしょうか。

マツウラ 日本の大手メーカーが非常に優秀な企業であることは熟知しています。多くの企業が交流駆動のLED照明を開発しようとしてきましたが、当社以外、いまだに成功していません。非常に幅広い技術・知識・経験を持っている限られた技術者でなければ、作ることができなかったでしょう。当社で開発を担当しているのは、日本の大手メーカーで多くの最先端プロダクトの開発にかかわってきた技術者たちです。
 LED照明はまだ新しい技術です。日本の大手メーカーもLED照明業界に多数参入してきました。大手メーカーの製品と違う独自性のあるものを作り続けなければ、私たちに未来はありません。それを理解した上で、私はLED照明に参入しました。

── 技術の優位性だけがポイントなのでしょうか。

マツウラ 技術だけでは商品化はうまくいきません。マーケットを熟知し、マーケットからのニーズだけではなく、マーケットに新しい提案をする力が必要だと思います。
 ステラージアは私が立ち上げた会社ですから、私が社内の誰よりもマーケットを熟知している必要があります。そのために、これまで徹底的なリサーチをしてきました。世界中に私ほど情熱を持ってこの市場を理解しようとしてきた者はいないでしょう。

LED照明ビジネスで日本から世界へ

── なぜ、それだけの情熱を持てるのでしょうか。

マツウラ LED照明というのは、私にとってはエコビジネスなのです。私が初めて行った事業はシンガポールでの商品取引の領域でした。石炭やガスなどの天然資源を扱っていたのですが、採掘の現場を目の当たりにして、このような資源採掘を続けていくと、世界中の資源が枯渇してしまう、という危機感を抱きました。LED照明は、エネルギー危機を解決する手段のひとつとして考えています。

── 日本をビジネスのフィールドに選んだ理由は。

マツウラ ビジネスに参入する際は、拡大成長の可能性を持っているかどうかということが重要です。日本では2020年までに公的設備・施設の照明をすべてLEDに切り替えることを閣議決定しています。これは世界的に最もレベルの高い目標であり、LED産業が今後、非常に大きな市場となるのは明らかです。また、日本市場の環境基準、品質基準は、海外と比較して非常に厳しく日本で良い製品を作ることができれば、それを世界中で売るための道筋が見えます。〝LEDをやるんだったら、世界を変えるような大きいスケールでやろう〟。その出発点として、日本はあらゆる面で適した場所です。

 

 

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る