国際

ロシアが分析する原油価格下落の要因は?

 1月7日、原油価格の国際指標となる米国産標準油種(WTI)が、一時、1バレル=46ドル台と約5年8カ月ぶりの安値をつけた。2014年7月までつけていた1バレル=100ドル台に比べると半値以下になっている。このような原油価格の急速な下落を産油国であるロシアはどう見ているのだろうか。1月9日、露国営ラジオ「ロシアの声」が国際原油価格に関する興味深い論評を放送した。

<2014年、原油価格の下落は重要なテーマに挙げられた。原油価格下落の原因として、専門家は需要の構造が弱体化したこと、米国のシェール・ブームによって米国内の石油ガス採掘量が急激に増し、それによって供給不足(引用者註*需要不足の間違い)が引き起こされたことを挙げている。2014年の最後には中国から届いたニュースが原油価格に一層の圧力を加えることとなった。/それは中国で12月、7ヶ月ぶりに工場セクターの生産量が縮小したというしらせだった。中国の工場生産量が下がったということは、世界第2の石油ガス消費国である中国のエネルギー需要がこの先下がるということを意味する。>

 興味深いのは、ロシアが米国のシェールオイルとともに中国の景気後退を原油価格下落の重要な要因と考えていることだ。

それでは、ロシアはどのような基準で原油価格を予測しているのだろうか。

<原油価格によって受ける悪影響の度合いはその国の予算問題(予算がエネルギー資源輸出による収入にどの程度頼っているか)、および石油採掘問題(開発、採掘、輸送にどれくらい費用がかかるか)による。原油価格が低い場合、予算は赤字傾向になり、大陸棚、シェールなど、アクセルが困難な場所にある油田開発プロジェクトは採算が取れなくなる。ロシア経済はこうした基礎的なパラメーターに直接的に依拠している。石油ガス価格の予測はそんなに簡単なものではないことは分かりきったことではあるが、それでも専門家らは、予測を立てざるを得ない。2015年の価格の動きは一体どうなるのだろうか?/これについてロシア貯蓄銀行「ズベルバンク」のゲルマン・グレフ会長は2015年半ばには原油価格は安定してくるとの確信を次のように語っている。/「たしかに原油価格の動きは否定的なものだが、それもいつかは動きを止めるものだ。おそらく2015年半ばには原油価格は安定してくるだろう。」/国際エネルギー機関では、原油価格下落の傾向はまだ終わっていないとの見方が示されている。この予測によると、2015年初頭、原油価格は今の最低価格よりももっと下がる。>

 「ロシアの声」は国営放送なので、ロシア政府の立場に反する内容の放送はしない。ロシアとしては、今年前半は原油価格低下が継続するという以下のような見通しを示している。

<ロシア石油ガス産業家連盟の上級専門家、ルスラン・タンカエフ氏は、原油価格に影響を与えうる要因として、次のようなものを挙げている。/「要因のなかでも非常に重要で、ある面では全く操作不可能なものがある。その筆頭がイスラム国だ。これが世界の石油市場に放る石油価格はあまりにも低く、事実上ダンピング価格となっている。なぜなら彼らが石油を売るのは武器弾薬を買うためだからだ。しかもサウジアラビアはまだ、米国のシェールオイルに対抗した闘いを続けている。このプロセスがまさに価格の低いレベルを決めているのだ。だが、近い将来価格は上がってくる。それは原油価格が低ければ消費も増えてくるからであり、それにしたがって需要と供給の関係も変わってくるからだ。」/原油価格下落で市場からプレーヤーの何人かは消えざるをえず、採掘量も落とさざるをえないことは除外できない。アナリストらは石油輸出国機構(OPEC)はニッチを米国のシェールオイルが奪うことを恐れて価格を下げないとにらんでいる。>

原油価格は中長期的に安定へ向かう

 ロシアは、シリアとイラクの一部地域を実効支配するイスラム教スンニ派武装組織「イスラム国」が、原油を盗掘し、ダンピング販売していることが、国際原油価格下落の重要な要因という見方を示している。筆者も同じ意見だ。それでは最終的に原油市場はどうなるのか。

<エネルギー金融研究所経済学科のマルセール・サリホフ学科長は、この決戦で誰が生き残るかについて、次のように語っている。/「世界地図のように決まったひとつのシナリオを出すのは難しいことだ。様々な採掘のプロジェクトのポートフェリオはある。そのうちいくつかは原価が高くなり、今のような価格ではプロジェクトはうまみが無くなる。おそらく、こうした採掘では作業を停止する企業が出てくるだろう。だが、全体を見渡すと原油採掘は増加ではなく多少の減少傾向になると思う。それでも長期的傾向では、いずれにせよ、価格はたとえば北極や深海の大陸棚などの新たな産地での原価から考えて上がってくるはずだ。原油価格が低ければ、こうしたプロジェクトは進行しようがない。」/エネルギー市場の発展の採掘から考えると、可視的将来には最低でも価格は安定してくると判断することができる。>

 サリホフの言うとおり、原油採掘は若干減少しつつも原油価格は中長期的に安定してくると思う。

 

筆者の記事一覧はこちら

【グローバルニュースの深層】記事一覧はこちら

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

社員17人で41億円を売り上げた社長が語る「中国で越境ECを成功させる秘訣」―栖原徹(ピルボックスジャパン社長)

今や米国と並び、世界最大級の消費市場となった中国。その中国で爆発的なヒットを飛ばしているのが健康食品・サプリメントなどの越境ECで展開するピルボックスジャパンだ。同社を率いる栖原徹社長に、中国市場で成功するための秘訣を聞いた。(取材・文=吉田浩) 栖原徹・ピルボックスジャパン社長プロフィール…

栖原徹・ピルボックスジャパン社長

意思決定の効率化を実現しデータ活用に革命を起こす―インティメート・マージャー

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

入学試験や資格取得のための勉強法については、さまざまなハウツーコンテンツが世にあふれている。そんな中、独自の学習理論で注目されているのが、サイトビジット社長の鬼頭政人氏。勉強法という個人的な問題を解決するためのサービスを、「働き方改革」を推進する法人向けにも展開している。(取材・文=吉田浩) …

鬼頭政人(サイトビジット社長)

アスリートのセカンドキャリア問題に真正面から取り組む―中田仁之(一般社団法人S.E.A代表理事)

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年2月号
[第45回経済界大賞]
  • ・[大賞]新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・[特別賞]小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)
  • ・[優秀経営者賞]水田正道(パーソルホールディングス社長CEO)
  • ・[優秀経営者賞]青野慶久(サイボウズ社長)
  • ・[ベンチャー経営者賞]及川智正(農業総合研究所会長CEO)
  • ・[ベンチャー経営者賞]山本正喜(ChatworkCEO兼CTO)
  • ・[グローバル賞]ハロルド・ジョージ・メイ(新日本プロレスリング社長兼CEO)
  • ・[100年企業賞]高松建設(高松孝年社長)
[Special Interview]

 新浪剛史(サントリーホールディングス社長)

 創業精神の共有から始めた米ビーム社との統合作業

[NEWS REPORT]

◆海外メーカーを次々と買収 キリンがクラフトにこだわる理由

◆売上高は前期比3割増 止まらぬワークマンの快進撃

◆第3の都市はどこに? 「スタートアップ拠点」争奪戦

◆寿司屋の大将は3Dプリンター? 電通が画策する未来の飲食

[特集]

 もっと眠りたい

 明日のパフォーマンスを劇的に高める

 一流の睡眠術

ページ上部へ戻る