政治・経済

渡辺忠雄氏 法皇と称される激動の人生

 渡辺忠雄が、三和の〝法皇〟と称されるに至る経緯をトレースすると、旧三和銀行を関西地銀のレベルから全国区の「ピープルズバンク」に育て上げたリーダーシップが鮮明に浮かび上がる。そもそも、三十四・鴻池・山口の三行合併で創られた三和銀行。渡辺は、そんな同行で「和」を強調し、内部融和を進める一方、時代の流れを敏感に読み取り、産業構造の変化に対応した大胆な融資政策を展開した。中でも、日立造船、帝人、宇部興産、髙島屋、阪急電鉄といった非財閥系の取引先と社長会「三水会」を組織し、三和グループを形成したのは大きかった。同グループはのちに、早川電機(現シャープ)などを加え、強固な結束ぶりを示し、1970年には日本万国博覧会のパビリオン〝みどり館〟出展で、その存在を天下にアピールする。

 この間、渡辺は、60年5月に頭取のポストを上枝一雄に譲り、会長に就任したが、人事権を掌握し、銀行経営の多角化・国際化に号令をかけ、赤司俊雄、村野辰雄新旧頭取誕生に際しても、一流のバランス人事を断行する〝法皇〟ぶりを発揮した。功成り名を遂げ、それでも三和に君臨し続けた渡辺の行動は、「ウチの社訓は行名通り〝人の和〟。チームワークで機動力を倍加させる」という口癖の実践編と言えた。

 渡辺は、政財界に強力な地盤を築きあげたことでもよく知られる。例えば、戦後の混乱期には経済安定本部顧問に就任し、経済復興政策立案に参画。また、税制審議会委員や金融制度調査会委員など、多方面で政府政策立案に貢献している。さらに、池田勇人元総理とも親交が深く、池田が提唱した所得倍増計画にも深く関与した。一方、金融界では日銀参与や全国銀行協会副会長・大阪銀行協会会長などを務め、財界活動では経団連・日経連・大阪商工会議所の常任理事・評議員などを歴任。77年には勲一等瑞宝章に叙せられている。もちろん、田中角栄や小佐野賢治らとの太いパイプは、ロッキード事件以降、むしろマイナス要因になったと言えるが、それでもフィクサーとの付き合いは、渡辺が〝法皇たる所以〟でもあった。そして2002年1月、渡辺は、UFJ銀行発足で名誉会長になり、2年後の4月に逝去する。106歳の大往生であった。

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