政治・経済

 「需給ギャップ、7〜9月マイナス2・7%に拡大」

 内閣府は4日、日本経済の需要と潜在的な供給力との差を示す「需給ギャップ」が、7〜9月期にマイナス2・7%になったとの試算を発表した。名目では年率換算で14兆円の需要不足になる。前期(マイナス2・2%、11兆円)から需要不足が拡大した。増税後の個人消費の低迷が長引き、実際の経済成長率が1・6%減となったことが響いた。(後略)(日本経済新聞2014年12月4日)

日本経済の「再デフレ化」を示唆する、不吉なニュースとは

 日本の「再デフレ化」を示唆する、不吉なニュースが立て続けに報じられている。

 2014年10月の消費者物価指数は「総合(以下、CPI)」で対前年比2・9%増、生鮮食品を除く総合(以下、コアCPI)も2・9%増。そして、食料およびエネルギーを除く総合(以下、コアコアCPI)では、わずか2・2%の増加だった。消費税増税の影響を除くと、CPI、コアCPIが0・9%増、コアコアCPIでは0・2%の増加にすぎないということになる。しかも、原油安が「エネルギー」価格を引き下げるため、今後はCPIやコアCPIの上昇率も0%に近づくことになるだろう。

 12月18日、日本円建て国債の市場において、2年利付国債利回りが、一時的に▲(マイナス)0・015%と、12月16日に付けた最低値(▲0・005%)を下回った。マイナス金利の利幅が(マイナス方向に)拡大したという話だ。さらに、残存4年弱の5年物国債の利回りまで、▲0・005%に低下してしまった。5年債でマイナス金利になったのは、史上初である。ちなみに、長期金利の指標である10年債は、何と0・36%。驚異的な低金利としか表現のしようがない。

 金融市場は完全に「国債不足」に陥っており、国債市場のプレーヤー(銀行など)は日銀の買い取りという出口もあるため、「民間に5年満期でお金を貸し出すよりも、国債をマイナス金利で購入する方が得」という、異常極まりない判断をしていることになる。人類史上空前の「カネ余り」が、究極的な水準に達しようとしているのだ。

 日本政府を除くと、まともなお金の借り手がいないという話だが、当の政府は「国債発行減額」の方向に動き始めている。日本政府は緊急経済対策を含む14年度補正予算において、新規の国債発行額を当初予算の41・3兆円から「減額する」方向で検討に入った。一応、政府は「企業業績の改善で、法人税や所得税など税収が伸びているため」と説明しているが、消費増税の悪影響はこれからが本番だ。

日本経済の再デフレ化を明確に示す極め付けの指標

 いずれにせよ、新規国債発行額の抑制とは、橋本政権、小泉政権同様に、緊縮財政を実施する政権が「象徴的に」採用する政策なのだ。安倍政権は、完全に「緊縮財政」の方向に舵を切ったと判断して構わないだろう。

日本の需給ギャップの推移(対GDP比%) そして、日本経済の再デフレ化を明確に示す極め付けの指標が「需給ギャップ」である。12月16日、内閣府は14年7〜9月期の需給ギャップのマイナス(=デフレギャップ)が、速報値段階の対GDP比2・7%から、2・8%に拡大したと発表した。需給ギャップ▲2・8%が1年間継続すると、わが国はおよそ14兆円の需要が不足する。しかも、内閣府は「平均概念の潜在GDP」で需給ギャップを計算しているため、デフレギャップの大きさが現実の値よりも小さくなってしまう。対GDP比で2・8%というデフレギャップですら、現実の日本の需要不足を「控え目」に表しているのだ。

 名目GDPという「仕事の総額」が不足すると、民間企業は設備投資を減らす。仕事不足に悩む企業が、設備投資を拡大するなどということはあり得ない。仕事が不足すれば、賃金は伸び悩む。特に、安倍政権が金融政策の拡大を継続しているため、輸入物価の高止まりは続く(原油は除くが)。輸入物価上昇で消費者物価が高止まりする中、賃金が伸び悩む。当たり前の話として、わが国の「実質賃金」は低下傾向を継続するだろう。その環境下で、国民が消費を増やすことはあり得ない。何しろ、実質賃金低下とは「貧困化」なのだ。

 日本政府は12月17日に、景気下支えに向けた経済対策を柱とする、14年度補正予算案を発表したのだが、金額は「わずか」3兆円強である。

 政府の緊縮財政(消費増税、補正予算削減)により、内閣府方式の「小さめのデフレギャップ」で14兆円強の需要不足(=名目GDPの不足)を抱えている日本国が、補正予算わずか3兆円、さらに、新規発行国債を減額。安倍政権が緊縮財政路線を継続する限り、わが国のデフレ再突入は、避けられないと考える。

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

Eコマースを中心に成長を続けるBEENOS。その創業者である佐藤輝英氏は、5年前に社長を退任。4年前には取締役を辞任し、経営から退いた。それまで起業家として生きてきた佐藤氏が次に選んだのは起業家支援。BEENEXTを設立し、新しいイノベーションを起こそうとしている起業家への投資を始めた。その中でも投資の中心と…

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る