マネジメント

 日本におけるファストフードの先駆け「マクドナルド」が、米国から上陸したのは、今から44年前のこと。その裏側を日本マクドナルド創業者藤田田氏が語った。

(2001・11・6号)

藤田田氏のマクドナルド出店決断はたった20分 その中で生まれた名言

藤田田

藤田田(ふじた・でん)
日本マクドナルド社長(当時)
〈1926〜2004〉大阪府出身。東京大学法学部卒。東大在学中に輸入雑貨販売店、藤田商店を設立。マクドナルドだけでなく、「トイザらス」の日本法人を立ち上げるなど、カリスマ的な経営者であった。

── そもそも30年前に、日本マクドナルドを始められたきっかけは。

藤田 米国のシカゴに藤田商店(輸入雑貨卸などを手掛ける、藤田氏が経営する会社。日本マクドナルドを経営していた母体)の支店があったんですが、そこの支店長にマクドナルドという急成長しているハンバーガーチェーンがあるから、社長に会ってみないかと言われたことです。当時、私は、クリスチャン・ディオールのハンドバッグのエージェントをやっていたので、とても忙しかったし、口の中に物を入れる商売には全く興味がなかったものですから、「会えない」と断っていました。ところが、その支店長が「レイ・クロックという社長はとても面白い人だから、ぜひ一度会ってみてください」と、何度も手紙を書いて来るんです。

 そのころは、月に3回も米国に行くこともあり、たまたまシカゴに行ったら、また彼が「今日、レイ・クロックに会ってみないか」と誘うわけです。「そんなに言うなら」ということで会うことにしたんですが、クロック氏は会うなり、「君は何をしているんだ」と聞いてきました。私が「ハンドバックの輸入代理店をしている」と答えると、彼はこういうんです。「ハンドバックというのは、ひとりが1年でひとつかふたつしか買わないだろう。しかし、ハンバーガーは毎日売れるんだ。だから、お金を儲けるために商売をするならハンバーガーのような商売をしなければダメなんだ」と。

 そこで私は「口に物を入れる商売を知らない」と答えると、クロック氏は「知らないほうがいい。私が何でも教えてやるから」と言ってきました。そして、会って5分ほどたっていたでしょうか、「お前、やってみないか」といきなり言われたんです。

銀座三越にオープンしたマクドナルド1号店

銀座三越にオープンしたマクドナルド1号店

── 驚かれたでしょうね。

藤田 その当時、日本でマクドナルドをやろうと、クロック氏のところへ大勢の日本人が訪ねてきていました。山ほどあった日本人の名刺を見せてもらいましたが、300人ほどが「マクドナルドをやらせてくれ」と言ってきていたそうです。しかし、クロック氏は「彼らは商売を知らないからダメ。お前はできる」と言うんです。私は、「今日はあなたのサクセスストーリーを聞きに来たのであって、そんな話をしに来たのではない」とかわしたのですが、「お前がやれ」と。

 私はとっさに、「だったら、出資比率は50%対50%でいきたい」と口に出してしまいました。

 そして、次にこう付け加えたんです。「条件が1つある。米国側は命令をしないこと。アドバイスは受けるが命令は受けない。そして、日本の会社は、社長の私以下、全員日本人でやっていく。社長の私の思いどおりにやる。それが嫌なら私はやらない」と。そうしたら、クロック氏は「お前はなかなか面白い奴だ。分かった」と言ってくれました。

 その直後です。クロック氏も「ただし、私にも条件が1つある」というんです。「マクドナルドの仕事を日本で成功させてほしい」と。「成功というのはどういう意味か」と聞くと、「今から30年の契約をするが、30年で500店つくると約束してほしい。30年後に500店できていたら、成功とみなす」とクロック氏は答えました。私は、「よろしい。だったら500店と言わず、700店にしよう」と言って、それで話が決まりました。

 この間、およそ20分ほどでしたでしょうか。

(構成/本誌・古賀寛明)

 

【温故知新】の記事一覧はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る