[連載] 温故知新(第18回)
経営者の名言「私の思いどおりにやる、それが嫌なら私はやらない」--藤田田(日本マクドナルド社長)
2015年2月3日

日本におけるファストフードの先駆け「マクドナルド」が、米国から上陸したのは、今から44年前のこと。その裏側を日本マクドナルド創業者藤田田氏が語った。
(2001・11・6号)
藤田田氏のマクドナルド出店決断はたった20分 その中で生まれた名言

藤田田(ふじた・でん)
日本マクドナルド社長(当時)
〈1926〜2004〉大阪府出身。東京大学法学部卒。東大在学中に輸入雑貨販売店、藤田商店を設立。マクドナルドだけでなく、「トイザらス」の日本法人を立ち上げるなど、カリスマ的な経営者であった。
── そもそも30年前に、日本マクドナルドを始められたきっかけは。
藤田 米国のシカゴに藤田商店(輸入雑貨卸などを手掛ける、藤田氏が経営する会社。日本マクドナルドを経営していた母体)の支店があったんですが、そこの支店長にマクドナルドという急成長しているハンバーガーチェーンがあるから、社長に会ってみないかと言われたことです。当時、私は、クリスチャン・ディオールのハンドバッグのエージェントをやっていたので、とても忙しかったし、口の中に物を入れる商売には全く興味がなかったものですから、「会えない」と断っていました。ところが、その支店長が「レイ・クロックという社長はとても面白い人だから、ぜひ一度会ってみてください」と、何度も手紙を書いて来るんです。
そのころは、月に3回も米国に行くこともあり、たまたまシカゴに行ったら、また彼が「今日、レイ・クロックに会ってみないか」と誘うわけです。「そんなに言うなら」ということで会うことにしたんですが、クロック氏は会うなり、「君は何をしているんだ」と聞いてきました。私が「ハンドバックの輸入代理店をしている」と答えると、彼はこういうんです。「ハンドバックというのは、ひとりが1年でひとつかふたつしか買わないだろう。しかし、ハンバーガーは毎日売れるんだ。だから、お金を儲けるために商売をするならハンバーガーのような商売をしなければダメなんだ」と。
そこで私は「口に物を入れる商売を知らない」と答えると、クロック氏は「知らないほうがいい。私が何でも教えてやるから」と言ってきました。そして、会って5分ほどたっていたでしょうか、「お前、やってみないか」といきなり言われたんです。

銀座三越にオープンしたマクドナルド1号店
── 驚かれたでしょうね。
藤田 その当時、日本でマクドナルドをやろうと、クロック氏のところへ大勢の日本人が訪ねてきていました。山ほどあった日本人の名刺を見せてもらいましたが、300人ほどが「マクドナルドをやらせてくれ」と言ってきていたそうです。しかし、クロック氏は「彼らは商売を知らないからダメ。お前はできる」と言うんです。私は、「今日はあなたのサクセスストーリーを聞きに来たのであって、そんな話をしに来たのではない」とかわしたのですが、「お前がやれ」と。
私はとっさに、「だったら、出資比率は50%対50%でいきたい」と口に出してしまいました。
そして、次にこう付け加えたんです。「条件が1つある。米国側は命令をしないこと。アドバイスは受けるが命令は受けない。そして、日本の会社は、社長の私以下、全員日本人でやっていく。社長の私の思いどおりにやる。それが嫌なら私はやらない」と。そうしたら、クロック氏は「お前はなかなか面白い奴だ。分かった」と言ってくれました。
その直後です。クロック氏も「ただし、私にも条件が1つある」というんです。「マクドナルドの仕事を日本で成功させてほしい」と。「成功というのはどういう意味か」と聞くと、「今から30年の契約をするが、30年で500店つくると約束してほしい。30年後に500店できていたら、成功とみなす」とクロック氏は答えました。私は、「よろしい。だったら500店と言わず、700店にしよう」と言って、それで話が決まりました。
この間、およそ20分ほどでしたでしょうか。
(構成/本誌・古賀寛明)
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