政治・経済

雇用の流動化を推し進めないと民間企業の活力が削がれる理由とは

 今回は解雇規制緩和の話をします。雇用の流動化を推し進めないと民間企業の活力が削がれていきます。

 民主党政権下で、解雇に対する規制が強まり、それから非正規社員を正規社員にする圧力が強まって、正社員を増やし、なおかつ解雇をなかなかできないような方向に世の中が一瞬流れました。これはそもそも市場経済主義、資本主義の社会においては、実はあってはならないことを政府がやっていたのです。

 民間企業は、できるだけ経済原則に従って、利益を出して利益を出した中から税金を払うというのが最大のミッションです。

 企業の効率を上げるために不必要な人員は切り、最適資本と最適人員構成で最大の利益を上げていくことに邁進し、その利益の中から税金が生まれるという構造です。

 それに対して、不安定な生活を強いられる従業員がいる場合には、政府側がセーフティーネットを用意する。この役割分担をして初めて社会が効率的に動くはずなのに、本来きちんと税金を納めるべく利益を出そうとする企業の行動に、「そこまで利益を出さなくてもいいよ」という言い訳を与えてしまうのが解雇規制なのです。

 つまり「従業員を切れないから利益が出ない」とか「企業内失業を抱えていることが会社のCSRです」というようなことを経営者が言いだしたら、これは最適経営をしない言い訳なのです。

雇用流動化を阻害する日本の企業社会の前提

 実際、多くの大企業では人員整理ができない、あるいは人員整理をすると社会の反発が非常に強いということを理由にして、本来継続すべきでない事業もなかなかリストラの判断をしない、あるいは売却の判断をしないケースが多い。現在の家電業界などが力を失った最大の理由はこのあたりにあります。

 ですから、これからの日本は解雇規制をきちんと見直すべきです。見直すと同時に社会として用意すべきセーフティーネットを議論して、きちんとしたセーフティーネットを設けていくべきだと思います。

 例えば、失業保険の給付は現在6カ月ですが、これを2年くらいまで伸ばすべきです。それから他にも雇用の流動化を促進することをしなければいけません。企業年金を廃止して国民年金に全面的に切り替えるとか、企業単位の健康保険組合も個人単位にすべきでしょう。

 日本の制度の中には、人が一生一企業で働くことを前提にした仕組みが多過ぎて、こういった権利を修正する必要性があります。

雇用流動化が進めば経営者は高いレベルの判断が求められる

 こういう解雇規制の緩和の話をすると、一見、経営者にとって非常に耳あたりが良い話に聞こえます。

 実際に僕がツイッターで、こういう案をつぶやくと、雇用が不安定になっている若い世代、あるいは上の世代でも、年功序列の終身雇用で企業に安穏としている中年の人たちから、ものすごく大きな反発があります。つまり従業員はなるべく解雇すべきでないし、人の首を切ってまで利益を出そうとするのは、経営者としては最悪だというような声も聞こえます。

 解雇規制の緩和の話をすると、経営者にとって優しくて、従業員にとって厳しいことを言っているかのように聞こえるようです。

 しかし実際には、解雇規制が緩和されると、経営者に厳しい判断を求めることになります。つまり経営者は、従業員を自由に解雇できるようになればなるほど、最適な人員はどのくらいの人員なのかということを常に判断しなければいけなくなる。それから将来の成長と目先の利益のどちらを取るのかということのバランスを常に自分で考えないといけません。

 今までは解雇がなかなかできないことを前提に、言わば経営判断の半分くらいはしなくて済んでいたものを、これからはすべてを判断しなければいけなくなる。これは経営者にとって、実はすごく大きな判断を常に強いることになります。

 従業員は、解雇されたら次の職がないということが最大の不安材料です。しかしこれは社会全体として雇用の流動性を高め、常に社会のどこかに求人があって人が出てくるという、ある一定の比率の人員が流動している環境をつくれば、時間の経過とともに必ず解消されていく話です。

 むしろ経営者の経営判断は常に求められていくものなので、時間がたっても厳しさは変わりません。

 解雇規制の緩和が実現したら、短期的かつ直接的に影響が出るのは従業員の側ですが、中長期的に見た場合に経営者への影響が大きい。よ

 り高いレベルの経営判断を常に求められるという意味で、経営者こそが、立ち振る舞いを一から見直して、自分の経営者としての資質が本当にふさわしいかどうかを本当に問い直さなければいけません。

 

夏野剛氏の記事はこちら

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