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国際バスケットボール連盟(FIBA)は日本バスケットボール協会(JBA)問題解決・相互理解のためにbjリーグの理念をアピール--河内敏光氏(日本プロバスケットリーグ コミッショナー)×二宮清純氏

スポーツインサイドアウト

 2014年11月、国際バスケットボール連盟(FIBA)は日本バスケットボール協会(JBA)に対して資格停止の制裁を下した。制裁の内容は、バスケットボールの日本代表の国際試合出場を禁じる厳しいものだ。さらにFIBAはタスクフォースを立ち上げ、JBAの改革に乗り出した。制裁に至った原因の1つは、日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)とナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)という2つの国内トップリーグが存在し、統合されていないこと。騒動の渦中にあるbjリーグ コミッショナーの河内敏光氏にスポーツジャーナリストの二宮清純氏が迫った。

【河内敏光氏×二宮清純氏】〜JBAの運営能力をFIBAが疑問視〜

河内敏光氏(日本プロバスケットリーグ コミッショナー)

河内敏光氏(日本プロバスケットリーグ コミッショナー)

二宮 FIBAがJBAに対して問題視しているのは?

河内 協会のトップを含めた首脳陣のガバナンス、代表の強化、リーグの統合問題。大きく分けるとこの3つです。

二宮 この3つに道筋をつけないと制裁を解除しないと。

河内 そうですね。

二宮 これはいつぐらいから言われてきたのですか。

河内 実は、2008年くらいからですね。そういうことをJBAがFIBAから言われていたと。それはなぜかと言うと、06年に日本で初めて世界選手権を行ったんですね。その時には日本チームも、もちろん出て、予選リーグで敗退したんですけども頑張った。問題は大会が終わって収支を見たところ、13億円の赤字になっていたことです。FIBAとしては大会自体は成功したにもかかわらず、なんでこれほど赤字になったのかと。

二宮 それでJBAに対する不信感が生まれたと。

河内 そうですね。そのガバナンスと共に、世界大会でアメリカのドリームチームが来たにもかかわらず、なんで失敗してしまうんだという疑念が、最初のきっかけだったと聞いています。

二宮 そもそも、なぜ13億円の赤字が出たんでしょうか。

河内 アメリカのドリームチームに対しては移動費から何からいろんな契約があり、そのすべてを開催国が負担しなければいけなかったことが大きいですね。またチケットと放映権の管理もうまく行かなかったのかなと僕は感じています。

二宮 ドリームチームを出場させるNBAから相応の権利を要求されたということでしょうか。

河内 それもあったと思います。恐らくJBAは言いなりにならざるをえなかった。協会の幹部の中に、そこまでの権利等々のところを分かっている方がいなかったのだと思います。

二宮 どんぶり勘定で運営していたということですね。それで今回、20年の東京五輪を控えているにもかかわらず、6年たってもなかなか改善されないために、FIBAが業を煮やしたと。

河内 そうだと思います。12年にもアジアカップを大田区総合体育館でやりました。しかし、その時も1・5億円の赤字を出しました。

二宮 やはりJBAには経営のプロがいないと。

河内 そうだと思いますね。

二宮 独立した事業体にはなっていないところが、FIBAからすれば、「何をやっているんだ」ということなんでしょうね。その中で、今回、FIBAがタスクフォースを立ち上げて日本に来たというのは、進駐軍みたいなものですよね。これは日本のバスケットボールにかかわっている人からすれば、屈辱的ではないでしょうか。

河内 こういったケースは、日本のスポーツ団体では初めてだと思いますね。

二宮 勧告なら分かりますけど、乗り込んできて改革をするんだという、まるでマッカーサーがやって来るような話ですね(笑)。

【河内敏光氏×二宮清純氏】〜日本プロバスケットボールリーグ(bjリーグ)とナショナル・バスケットボール・リーグ(NBL)統合実現化できない要因〜

二宮 3つの課題の中でもフォーカスされるのは、やはりリーグ統合の問題です。統合がなかなかうまく行かない一番大きな理由は、どういうことですか。

二宮清純氏河内 われわれがbjリーグを立ち上げたのは05年です。そして、05年からJBAの中には、プロ化検討委員会を立ち上げて、常に議論をしてきたんですけども、最後の段階になると「プロ」という言葉を今は入れられないということになっていました。プロという点で、企業チームがうまく行かない。現在のNBLは協会でプロリーグをつくることを認めて会議のテーブルについたにもかかわらず、最後は5つの企業チームがネックになりました。

 それにFIBAへの返答期限が14年10月末までとなっている中、常々、われわれはまず統合問題を回避するためには、FIBAに何をどこまで回答すればいいのかとJBAの会長に投げ掛けていたんですけれども、なかなか……。

二宮 話が進まないと?

河内 問い掛けても、なかなかきちんとした答えが来ないというのが現状です。

二宮 結局、NBLは5つの企業チームの親会社にお伺いをたてないと何も動けないということですか。それで、河内さんのほうから出している条件とは。

河内 一番大きいのは、企業名を外してもらうことですね。もうひとつはできれば、早めに分社化して、バスケットボールだけで独立事業にしてほしいということです。

 あと企業チームには社員選手が入っています。これは企業によって違うのですが、例えば東芝の選手は全員社員なんですね。大学卒業生が社員として東芝に入る。だからプロリーグになった暁にはドラフトでプロ選手を入れてくださいと提案しているんです。もちろん、今いる選手はこれからプロになれというのは無理ですから、そこについては条件には含まないという話をしています。

河内敏光氏二宮 これらの提案に対するNBL側の解答は。

河内 NBL側も企業に再三足を運んでいったけれども、企業によってはすべて条件を飲めないところがあるという話です。ただ、初めはチーム名の問題については、あまり議論に乗っていなかったんです。それが委員会をやっていくうちに、企業名をチーム名から外すのが一番難しいという話が急に出てきました。

二宮 企業チームにとってスポーツはまだ福利厚生、社威発掲の一環なんでしょうか。

河内 そうだと思いますね。

二宮 だから、チーム名にトヨタや東芝を出してもらわないと困ると。

河内 われわれが言ったのは、企業名がなくても見ているお客さんからすれば、ユニフォームにはトヨタと入っている。コートにも、トヨタの文字がたくさん入っている。みんながトヨタの応援をしてくれているのは分かりますね、と。なおかつ仮にリーグが統合されたとして、新聞報道等々に試合結果が出た時、例えば、新潟対埼玉の試合結果がある中に、沖縄対トヨタの試合結果が混ざっているのは、違和感がありますよね、とも言いました。

二宮 これはもう世界のスタンダードで、メジャーリーグでも世界のサッカーでもチームに都市名を入れるのは常識です。その意味で河内さんの言っていることはよく分かります。しかし、事態が改善しないのなら、Jリーグ初期の「読売ヴェルディ川崎」のように折衷案で1年とか2年の移行期間を設けて、その間に片付けましょうという議論にはならないのですか。

河内 委員会で、JBAに対して、企業のトップがどういうふうにすれば本当に条件を受け入れてくれるのか結論を出してほしいと要望しました。もう一度、企業のトップに折衝を行ってみてくれませんかと。それによって、われわれは、猶予期間を設けたり、妥協するところは妥協するというような話をしたのですが……。

二宮 それでも駄目だったと。

河内 その企業のバスケットボール部長にしか会えないとかね。

二宮 私には既視感がありまして、今のバスケットボール界の状況はJリーグができる前と似ていますね。Jリーグが20年前に解決した問題をまだ解決してない。例えばトヨタ自動車工業サッカー部はプロ化に伴って「名古屋グランパスエイト」になりました。東芝やトヨタのような世界に冠たる企業がこういうことで揉めていたら、逆に会社のイメージが悪くなると思うんです。本当のグローバル企業だったら、常識的に考えて分かりますよ。つまり経営のトップはこの問題の詳細を知らされていないのではないでしょうか。

河内 その可能性はありますね。

【河内敏光氏×二宮清純氏】〜関心が高まっている今がbjリーグにとってチャンス〜

二宮 統合への一歩としてこれは良いと思ったのは、河内さんがチャンピオンシップをやろうと提案していることです。取りあえず、お互いのチャンピオン同士が戦う。意地を張り合ってもしょうがない。まずはできることからやってみるというのはいいなと。選手も嫌とは言わないでしょう。

河内 だいたいシーズンがスタートする時期も一緒ですし、終わる時期もそんなに変わりません。そういう意味では、実現できると僕は思っています。

 でも、これをずっと続けてはいけないということは、FIBAから言われています。だから1〜2年やってみて、1つになれるという判断をする。プロで地域密着型のわれわれbjリーグとNBLとでは、お客さんの熱狂の仕方や、会場の雰囲気づくりとかが全然違うんですね。その1〜2年の間に、われわれと試合をすると、違いが分かり、企業チームの部長をはじめ、チーム間同士のコミュニケーションが出てくると思うんですよ。そうなると、リーグ統合に向けて、「お互いにこことここは妥協して次に行こう」という話にもっていける。

河内敏光氏二宮 bjリーグは地域密着、エンターテインメントを重視し、お客さんが第一の考えです。翻って、NBLは企業活動の一環のように映ります。取りあえずイデオロギーが違っても、できることから始めてみる。そこからお互いが「ここはやっぱりこうしたほうがいい」とブラッシュアップさせていく。チャンピオンシップは問題解決の突破口になると思うのですが……。

河内 JBA側によれば、統合しなきゃいけないとFIBAが言っているから、(チャンピオンシップは)認められないということらしいです。

二宮 私はJBAの資格停止問題がクローズアップされていることは逆にチャンスだと思います。今回の一件で一般の人は日本バスケットボール界の現状が分かったわけです。災い転じて福と為すで、bjリーグは自らの理念や地方都市での実績をもっとアピールしてもいいのでは……。

河内 僕がいろんな会場に足を運ばせてもらって、小さい子どもやおじいちゃん、おばあちゃんから、「河内さん、うちの街にね、よくこのチームを作ってくれた」という言葉を聞くと、本当にやっていて良かったと思います。特に、東北地方は冬の間、今までプロスポーツは何にもありませんでした。みんなが一同に集まるお祭りが、年に26回、ホームゲームの数だけ増えたイメージですね。

左から二宮清純氏、河内敏光氏二宮 今は国も地方創生に力を入れています。本当に地方を活性化させる意味で、スポーツはなくてはならないものであることを、Jリーグやbjリーグは示しています。特にbjリーグは大規模ではない市町村でも試合を開催しています。その意味で、地方活性化に貢献できるという将来の見取図を示してもらいたい。

河内 それぞれの地域から、bjリーグに入りたいという意見が出てくるときには必ず、立ち上げたい地元の人とともに県庁へ行ったり、市長に会ったりして、行政に働きかけをしています。例えば、インターハイや国体のためにつくられた立派な体育館を有効活用するためだということも言います。そういうところも含めて僕は参入の条件にしています。10年たったbjリーグの次のステップはそこだと思います。リーグを挙げて、各チームの代表と一緒にもっとbjリーグの理念をPRしていきたいと思っています。

 
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