政治・経済

 居酒屋チェーン「和民」を展開するワタミが102店の大量閉鎖を発表した。これまで不況に強いと言われてきた居酒屋業態にも時代の荒波は待ったなしに訪れた。さらには同社の労務管理の不備も巷間指摘されるなど難題も山積する。

飲食サイトで〝安心〟は担保される時代

 2014年度中に102店の大量閉鎖を発表した居酒屋チェーン大手のワタミの業績がさえない。同社が12月10日に発表した11月の外食業績は、「和民」、「坐・和民」合計と「わたみん家」、「炭の鳥子」合計の対前年比既存店売上高が、それぞれ93・6%、95・3%と厳しい状況を露呈することになった。

桑原豊

桑原豊・ワタミ社長

 1990年代中盤から00年初頭にかけて、業容を急拡大、外食の寵児ともてはやされた同社の面影はそこにはない。同社の苦戦についてはさまざまな指摘があるが、本質的に言えるのは時代性なのかもしれない。

 ワタミの主力業態は言うまでもなく、居酒屋チェーンの「和民」。群雄割拠する居酒屋チェーンの中で、存在感を示せたのは、品質に見合った適正価格を実現したことに尽きるだろう。過去にも居酒屋チェーンは多数存在していたが、店舗によってフードメニューの品質にばらつきがあったように記憶する。

 また、居酒屋の大多数は個人経営店であり、実際に店舗に足を運んでみたところ〝ハズレ〟だったという苦い経験は誰にでもある。

 しかし、「和民」に関して言えば、これらのリスクがなく、最低限の満足感は担保できることが周知されたのが、躍進の背景にあった。だが、集客の要になる〝安心感〟も、近年では、ネットの飲食サイトでの〝口コミ〟の評判を見ることで、店に行かなくともそのイメージや価格帯が把握できるようになり、店選びの失敗は極端に減った。そうなるとチェーン店である優位性の多くは失われ客足が遠のく要因ともなった。

 もうひとつ言えるのが若年層のアルコール離れだ。アルコールは人間関係の潤滑油と言われたのは過去の話。今や、アルコールを嗜まない層が増えている。国内アルコール総市場が年を追うごとに漸減しているのは、そんな背景もあるだろう。

 追い打ちをかけたのが東日本大震災でいわゆる〝家飲み〟が急増したことだ。安い店で軽く飲むなら家に帰って飲んだほうが落ち着くし安上がりという構図だ。「たまに、じっくりと飲みたいなら、多少、価格は張っても中・高級店に行く」という声も最近多く聞かれる。そういう意味では、日常使いの居酒屋チェーンも岐路に立っているとも言える。

 さらには、ここへきて、国内アルコールメーカーも缶チューハイ等、蓋を開ければすぐに飲めるRTDカテゴリーを強化している。この狙いは、まさに若年層と〝家飲み〟需要の取り込みだ。

ワタミ再浮上の鍵はブランディング再構築

 それでは「和民」に再浮上のチャンスはあるのだろうか。

 「まずはブランディングの再構築ではないですか。ワタミには『和民』を冠した店舗名が複数存在します。同社ではそれぞれの差別性があると言うのでしょうが、顧客目線で言えば全く認識できない。そもそも『和民』に行く消費者はバージョンなんて期待していないのです」(業界関係者)

 この言葉を自分に置き換えてみれば、納得する人も多いのではないか。ただ、仮に店名を統一したところで、顧客離れに待ったがかかるわけでもない。そこで選択肢になるのは、新業態へのシフト。飲食業は流行に左右される要素が多い。一過性のブームで消滅した店舗は数知れない。居酒屋業態に陰りが見え始めている以上、新業態への参入もしくは業態転換もはや避けられないのではあるまいか。

 際コーポレーションやダイヤモンドダインングがいまだに安定した収益を確保しているのは、他業態戦略をとってきたことが理由と見ることもできる。画一チェーンで数百もの店舗を有していると、規模のメリットは享受できるが、経営が悪化した時には、一気に方向転換の舵は切り難い。1兆円を超える売り上げを誇る外食企業が生まれないのは、チェーン化には限界があるからにほかならない。

 ワタミは、ほかに「フライデー」や「GOHAN」「銀政」といった専門店業態を保有するが、これらは比較的順調に推移しているという。閉鎖店から完全撤退するのか業態転換を目論むのかは現段階で発表していないが、前述の既存業態でも立地によっては成立するものもなくはないだろう。

 また、今回の大量閉鎖により生じることになった余剰スタッフも既存店へ振り分けたい意向から、外食産業で必要不可欠なホスピタリティーの向上にはプラス要因。元社員の「過労自殺」から同社には「ブラック企業」というイメージが依然として強い。今回の大量閉店を機に汚名返上を成し遂げるのか注目したいところだ。

(文=本誌/大和賢治)

 

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