マネジメント

 信用保証協会による保証が付いていない融資(プロパー融資)の金利は、基本的に変動金利です。

 また、保証付き融資であっても、固定の金利が決まっていない保証制度の融資は変動金利となります。

 ご承知のとおり、銀行は、融資のための資金を、預金や市場から調達しており、その際の金利(つまり、資金調達時の金利)は固定ではなく、変動です。

 要するに、銀行は、融資の原資を変動金利で預金者や市場から借りているわけです。ですから、融資の金利も変動にしておかないと、調達金利が融資金利を上回る「逆ザヤ」が起きる可能性があります。そのリスクを回避するために、銀行は、融資の金利を、基本的に変動金利にしているのです。

金利スワップによる融資の金利の固定化

 このように、変動金利は、銀行が融資リスクを抑えるための一手であり、銀行の融資は変動金利が基本を成しています。とはいえ、借り手側の企業としては、「(多少金利が上がっても)固定金利で融資を受けたい」と考える場合があるでしょう。また銀行側も、そうした企業の要望に応えていかなければなりません。

 そのため銀行には、変動金利を固定化するための特別な仕組みが用意されています。それが「金利スワップ」です。

 金利スワップとは、異なる種類の金利を交換する取引を指す言葉です。金利スワップ市場で、金利交換の取引が成立すると、銀行は、「固定金利で計算された利息」を支払う代わりに、「変動金利で計算された利息」を受け取ることが可能になります。結果、融資先の企業に対しては固定金利で融資をしながら、実際に受け取る利息を変動金利ベースにすることができるのです。

 例えば、銀行が、ある企業・A社に対して、5年返済・1億円の融資を行うとしましょう。そして、その融資の通常金利が、「変動金利1・5%」であったとします。

 このとき、銀行が、金利スワップ市場で「変動金利1・5%」と「5年固定金利1・8%」とを交換することができれば、A社は5年固定金利1・8%で5年返済・1億円の融資を受けることができるのです。またこの場合、銀行がA社から受け取る利息は(融資の途中返済がないと想定した場合)年間180万円になります。銀行はその利息を金利スワップ市場で支払い、代わりに変動金利ベースの利息(金利1・5%の場合で150万円)を市場から受け取ります。

 こうして銀行は、A社に対して5年固定金利1・8%で融資しながらも、変動金利ベースで利息を受けることができ、金利固定化による逆ザヤのリスクを回避することができるのです。

固定金利融資(金利スワップ)の留意点

 金利スワップによる金利の固定化は、少し柔軟性に欠ける面もあります。例えば、先の例で言うと、銀行は、「1億円の1・8%を利息として5年間を支払うこと」を条件に、変動金利利息との交換を成立させています。言い換えれば、変動金利ベースの利息を得るために、180万円の利息を5年間、金利スワップ市場で払い続けなければならないわけです。したがってもし、1億円の融資先に、想定外・契約外の繰り上げ返済をされてしまうと、金利スワップ市場に支払う利息の原資を失うことになります。

 そのような事態の回避策として銀行は、企業の返済ペースを契約で縛り、契約違反があった場合には違約金を請求するのが一般的です。

 要するに、固定金利で融資を受けた場合、契約上の返済ペースを超えたかたちで繰り上げ返済や一括返済を行うと、銀行から違約金の支払いを要求されるケースが多々あるということです。

商品としての金利スワップを利用した融資の金利の固定化

 銀行は、金利スワップを商品としても販売しており、企業はそれを用いて、融資の金利を固定化させられます。

 例えば、前出のA社が、変動金利1・5%で、1億円・5年返済の融資を受けているとしましょう。

 それを、5年間の固定金利1・8%の融資に切り換えるならば、銀行と金利スワップを行い、(途中の定期返済がない場合で)年間180万円の利息を支払い、変動金利ベースの利息を受け取れるようにすればいいのです。

 より端的に言えば、変動金利に基づく利息(金利1・5%なら150万円)を銀行に支払いつつ、「固定金利の利息(180万円)」と「変動金利の利息」との差額(変動金利が1・5%なら30万円)も併せて支払うようにすれば、融資の金利を1・8%で実質的に固定化できるのです。

 こう言うと、銀行に支払う利息が高くなるだけのように聞こえるかもしれませんが変動金利が仮に2・0%に上がった場合、固定金利と変動金利の利息差である20万円が企業に戻されます。そうなれば、融資の金利を固定化した効果が実感できるはずです。

筆者の記事一覧はこちら

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次世代の医療現場を支える病院経営の効率化を推進――保木潤一(ホギメディカル社長)

1964年にメッキンバッグを販売して以来、医療用不織布などの、医療現場の安全性を向上する製品の普及を担ってきた。国は医療費を抑える診断群分類別包括評価(DPC制度)の導入や、効率的な医療を行うため病院のさらなる機能分化を実施する方針を掲げており、病院経営も難しい時代に入っている。ホギメディカルは手術室の改善か…

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

バーチャル空間で開催される会議や音楽ライブなどに、3Dアバターで参加できる画期的サービス「cluster」を生み出したのは、元引きこもりのオタク青年だった。エンタメの世界を大きく変える可能性を秘めたビジネスで注目を浴びる経営者、加藤直人氏の人物像と「cluster」の展望を探る。(取材・文=吉田浩)加藤直人・…

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年1月号
[特集]
平成の事件簿

  • ・[イトマン事件]闇勢力に銀行が食い荒らされた戦後最大の経済事件
  • ・[ダイエー、産業再生機構入り]一代で栄枯盛衰を体現した日本の流通王・中内 功の信念
  • ・[ライブドアショック]一大社会現象を起こしたホリエモンの功罪
  • ・[日本航空経営破綻]親方日の丸航空会社の破綻と再生の物語

[Special Interview]

 高橋和夫(東京急行電鉄社長)

 「100周年に向けて、オンリーワン企業の強みを磨き続ける」

[NEWS REPORT]

◆かつてのライバル対決 明暗分けたパナとソニー

◆経営陣に強い危機感 富士通が異例の構造改革断行

◆売上高1兆円が見えた ミネベアミツミがユーシンを統合

◆前門の貿易戦争、後門の技術革新 好決算でも喜べない自動車各社

[特集2]経営に生かすAI

 「人工知能は『お弟子さん』
日常生活が作品になるということ」
落合陽一(筑波大学准教授)

ページ上部へ戻る