政治・経済

太田昭宏国土交通相

太田昭宏国土交通相

 昨年11月4日号で取り上げた、整備新幹線の延伸区間の開業時期前倒しに向けた政府・与党の議論は、与党の完勝で幕を閉じた。

 年明け早々、北海道新幹線の新函館北斗-札幌間を現行予定の2035年度から5年、北陸新幹線の金沢-敦賀間を25年度から3年、九州新幹線(長崎ルート)の武雄温泉-長崎間を可能な限り、それぞれ早める方針を決定。昨年12月の衆院選圧勝の威光も効き、与党が満額回答を勝ち取った。

 開業前倒しを国土交通省などの政府側に申し入れた与党のプロジェクトチーム(PT)座長は自民党の町村信孝元官房長官だったが、町村氏が衆院議長に就き、自民党の稲田朋美政調会長が後を引き継いだ。稲田氏は開業前倒しの方針が決まった1月8日、記者団に「地方創生、経済活性化、国土強靱化という観点から、与党として(前倒しを)申し入れていた。大変ありがたい」と勝利宣言をした。

 最大の課題だった5400億円の財源の確保も、所管官庁の国土交通省が工夫したことでめどを付けた。軸になるのは、新幹線を運行するJR各社が将来支払う施設使用料(貸付料)の前倒し活用。国交省は当初の試算で、これにより確保できるのは約2千億円と見積もっていたが、JR貨物に支払う助成金の見直しや、2%を前提としていた金利を実勢に合わせて引き下げることで、財源を上積みした。それでも不足する分は、14年度に720億円を計上した国費の増額と、地方負担の増加でまかなうことにした。

 一方、与党からは満額回答の余勢を駆って、北陸新幹線の金沢-敦賀間のうち、金沢-福井間の開業時期をさらに前倒しできないかとの声も出ている。20年の東京五輪開催を踏まえ、福井県の経済界などが福井駅の先行開業を求めているためだ。福井駅のある福井市を中心とした福井県北部は、くしくも自民党の稲田政調会長(福井1区選出)のお膝元でもある。

 与党PTが検討を進め、今夏までには結論を出す方針。だがこの場合は福井駅を終着駅としなければならず、車両基地の整備が必要になるなど、財源上や技術上の課題も少なくない。太田昭宏国土交通相も記者会見で「金沢-福井間のさらなる前倒しは、政府としては技術的に難しい面もあると考えている」と慎重姿勢をにじませた。与党がもくろむ〝2匹目のドジョウ〟には曲折が予想されそうだ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

Eコマースを中心に成長を続けるBEENOS。その創業者である佐藤輝英氏は、5年前に社長を退任。4年前には取締役を辞任し、経営から退いた。それまで起業家として生きてきた佐藤氏が次に選んだのは起業家支援。BEENEXTを設立し、新しいイノベーションを起こそうとしている起業家への投資を始めた。その中でも投資の中心と…

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る