国際

家電をスマートに使い、空き時間に何をするか

 「家電は、もっとスマートに使えて、家電と接する時間がもっと省ける」

 年明け早々にネバダ州ラスベガスで開かれた家電見本市「インターナショナルCES」は、久しぶりに大きな家電業界の変化を感じさせた。

 スマートフォンやタブレット端末などモバイル端末を「リモートコントローラー」にして、あらゆる家電がつながり、生活がもっと便利になる、その具体的な姿が見えてきたからだ。

CESのスモール・ビジネス展示を取材する記者やブロガーたち

CESのスモール・ビジネス展示を取材する記者やブロガーたち(撮影/著者)

 例えば、スマホを目覚まし時計代わりに使う人が増えているが、朝、スマホが鳴ると同時に、ブラインドが自動的に開き、キッチンではラジオとコーヒーメーカーのスイッチが入る。居間のテレビ画面には、今日のスケジュールや天気・交通情報が映るといったイメージだ。

 ネットワークにつながった家電を使っていれば、物理的にその家電のスイッチを入れたり、設定をしたりする時間が省ける。

 浮いた時間を使って何をするかというと、米国人なら「健康を維持するために運動をしたりダイエットをする」、あるいは「家族との時間を増やす」ことに時間を割きたいと思うにちがいない。

 そこで登場するのが、体調を計測するウェアラブルのウォッチやボタンだ。これもスマホのアプリとつながり、血圧、心拍、運動時間、睡眠時間などをデータとして記録していく。そのデータが、かかりつけの医者のコンピューターとつながっていれば、医者はその患者が来たとき、体調について聞く必要はなく、正確なデータが既に手元にあることになる。

 また、インターネットにつながった大画面のスマートテレビを使って、ネット上から見つけた好きなコンテンツを、好きな時間に家族と一緒に見られるというのも、スマート家電の使い方だ。

 もちろん、インターネットにつながったスマート家電は、1990年代から提案されていたが、冷蔵庫や電子レンジ、洗濯機などが個別にネットワークにつながっていたため、個別に操作する必要があった。それが今では、スマホが1台あれば、ベッドの中からでも、仕事場からでもどんな家電も操作することができて、利便性が格段に上がった。これは、スマホというモバイル端末がなければできないシステムで、スマホがいかに今後生活の中心になっていくかが予測できる。

 今回のCESが見せた流れの1つは、スマート家電の近未来だけではない。サムスン電子、LG電子、ソニー、パナソニックといった大手メーカーは確かに、その近未来を提案する主役だった。

 しかし、浮いた時間で何をするかということに密接に関係した「ウェアラブル家電」「アプリケーション」「ソフトウエア」といった、以前はCESの主役ではなかったハードやソフトが、にわかに主役級にのしあがってきた。いずれもメーカーは、ベンチャーであることが多い。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、新興企業のゾーンには前年比59%増の出展者があった。大企業メーンと思われていたCESで、スモールビジネスが存在感を示すようになってきた。

 もう1つは、やはり環境関連のテーマだ。トヨタ自動車は、日本で先行発売した水素燃料電池自動車「MIRAI」を、初めて日本外で発表し、記者会見場は興奮に包まれた。今年10月から米国でも発売する。また、ボブ・カーター・北米トヨタ上級副社長が、燃料電池と水素ステーションの普及のために、取得した特許の開放に踏み切ることも発表した。

家電が「電力」を過大消費せず、いかに発展できるか

 会見場では、シティ・カレッジ・オブ・ニューヨークの人気教授、ミチオ・カク氏が水素燃料電池自動車に対する期待を熱く語った。テレビによく登場する理論物理、科学の未来派主義者だ。

 「宇宙の77%は水素によって形成されており、最も比率の高い構成要素だ。石油と水素には大きな違いがある。水素自動車から排出されるのは、飲料水と同じ水素であり、何の汚染も引き起こさない。トヨタのハイブリッドカーは、ゲーム・チェンジャーになった。汚染がない社会を創造する一歩だった。今後は、水素が牽引する社会となる」

 さまざまな家電が、ネットワークにつながりながらも、消費電力が少ないということも喧伝されていた。地球温暖化問題が、ますます焦点になればなるほど、「電力」を使う家電がどうやって「電力」を過大に消費せずに発展できるかというのは、ますます関心事となっていくだろう。いずれにせよ、数年ぶりに方向性がはっきり見えた年明けのCESだったのは間違いない。

 

津山恵子氏の記事一覧はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る