テクノロジー

ライフイズテック 国内最大級のIT教育プログラムに成長

 2011年にスタートした中学生・高校生向けのITプログラミングキャンプ「Life is Tech!(ライフイズテック)」。水野雄介氏が『経済界』主催の金の卵発掘プロジェクトの初回グランプリを獲得したのは、まさにこの取り組みを始めた直後で、当時のキャンプ参加者はわずか数十人程度だった。それが今や、通学して学ぶ「スクール」と、インターネットで学ぶ「オンライン」を合わせて、延べ8千人以上が参加する国内最大級のプログラムへと成長している。

水野雄介

水野雄介(みずの・ゆうすけ)
1982年生まれ。慶応義塾大学理工学部物理情報工学科、同大学院卒業。大学院在学中に開成高等学校で物理非常勤講師として2年間勤務。その後人材系コンサルティング会社、早稲田高等学校講師などを経て、2010年ピスチャー(現ライフイズテック)を設立。プログラミングキャンプをはじめとする中高生向けのIT教育事業に従事する。11年、経済界が主催する「金の卵発掘グランプリ」の初代グランプリを受賞。

 東京都港区のライフイズテック本社には毎週約200人の中高生が通い、名古屋、大阪にもスクールを構える。創業時、水野氏を含めて3人だった従業員は15人に増えた。子どもたちを指導するメンターと呼ばれる大学生のアルバイトの数も、今や300人に達している。

 もともとは米国で始まったテックキャンプをモデルに、ITプログラミングキャンプを始めたという水野氏。類似のワークショップは世界中で開かれているが、ライフイズテックの場合はそれだけに留まらないのが大きな特徴だ。同氏は言う。

 「われわれは、教育を変えるという大きなテーマを持っています。それを実現するには、IT教育の入口、中身、出口のすべてを変える必要性があります」

 入口にあたるキャンプでは、まず、子どもたちにアプリ開発に興味を持ってもらうことから始める。そこで何より重視しているのが「場の愉しさ」を提供することだ。水野氏によれば、最初の段階では子どもたちの好きなことや興味のあることを聞き出すなど、積極的なコミュニケーションが非常に重要だという。

 そこから、実際にアプリを作るスキルを子どもたちに身に着けてもらい、自ら作ったアプリが実際に動き、ダウンロードされるという成功体験を段階的に積み重ねることで、さらなるモチベーションアップに繋げていく。

 これまで、実際にアプリをリリースした生徒は40人以上、中には数万件単位のダウンロードを獲得した生徒もいる。さらに、ライフイズテックではアプリストアへのリリースや、AO(アドミッションズ・オフィス)入試、さらには中高生の起業を支援する「Life is Tech! STARS★」と呼ばれるプロジェクトも用意している。

 「プロジェクトの目的は、IT界の石川遼や浅田真央が生まれる仕組みを作ること。既にスタートして1年たちますが、これからは、実際に起業した子どもたちを、企業とのオープンイノベーションや地域の創生にどう繋げていくかが鍵となります」と、水野氏は語る。

水野雄介氏の戦略 有力企業の協力を得てメンターを養成

 数年前は、まさに生まれたての〝金の卵〟だったライフイズテックが、ここまで順調に事業を拡大してこられたのは、複数の有力企業と提携できたことが大きい。

 プログラムを運営する上で大きなカギを握るのが、子どもたちを指導するメンターの質。メンターは事前にITスキルやコミュニケーション能力向上のために、60時間におよぶ研修を受けることになっているが、ここではグーグル、リクルート、ヤフー、サイバーエージェント、ディー・エヌ・エーといった企業から、メンターの募集や事前研修などで協力を得ている。優秀なメンターには、就職に際してこれらの企業から声が掛かるチャンスがある一方、企業にとっても優秀な学生の発掘やマーケティングといった意味でメリットがある。

 「これからは、IT教育からアントレプレナーシップ教育やグローバルに一緒に学び合える土壌も作っていきます」という水野氏。14年にはシンガポール国立大学でキャンプを実施。今後は海外展開にも力を入れていく考えだ。

 企業としてのロールモデルを尋ねると、こんな答えが返ってきた。

 「われわれが目指すのは、教育界のディズニーランド。これからの〝学び〟には、絶対にエンターテインメントが融合していくと考えています。ディズニーランドより楽しい場所を作るために、いろんなイベントやワークショップを取り入れていきます」

 20年までに、20万人のプログラム参加を実現したいと語る水野氏。新しい教育の形を創造すべく、走り続ける。

(文=本誌編集長/吉田 浩 写真=佐藤元樹)

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

電力業界のイノベーション

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

[連載] エネルギーフォーカス

日本は再生エネルギーで世界トップとなる決断を

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

会員制ホテルなどを展開するリゾートトラストは4月1日付でトップが交代し、創業者の1人である伊藤與朗会長は代表取締役ファウンダーグループCEOに就いた。共同創業者の伊藤勝康社長は代表取締役会長CEOとなった。伏見有貴副社長は代表取締役社長COOとなり、創業45年で初めて代表取締役3人体制となった。聞き手=榎本正…

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年12月号
[特集]
平成 ランキングで振り返る“時代”の経営者

  • ・バブル破裂で顔ぶれ一新 平成人気経営者の系譜
  • ・次の時代を創るリーダーとは?

[Special Interview]

 榊原定征(2025日本万国博覧会誘致委員会会長)

 「誘致決定まで1カ月 大阪万博を日本経済の起爆剤に」

[NEWS REPORT]

◆コンビニ軽減税率適用で激化する「外食VS中食」の戦い

◆「液晶のシャープ」が有機ELスマホを発売 初の国産パネルで攻勢をかける

◆「世界一高い」と認定された日本の携帯料金のこれから

◆チャネル政策を見直すトヨタ自動車の危機感

[特集2]

 北海道・新時代の幕開け

ページ上部へ戻る