国際

シェールオイル増産は原油価格下落の直接的な要因ではない

 

グラフ1  米国の原油生産量と原油先物価格の推移 歯止めがかからない原油価格の下落が世界の金融市場を揺るがしている。

 この原油価格下落の背景はなんだろうか。世界銀行の分析によると、長期トレンドに影響する需給バランス面では、米国シェールオイルの生産増という供給要因とグローバル経済の成長鈍化という需要要因が挙げられている。

 短期的な要因としては、OPECの目標変更、地政学リスクの後退による供給遮断懸念の緩和、米ドル高が指摘されている。

 どれも一見すると極めて正論のように思われるが、それらは原油安の「舞台装置」を提供するものであっても、ここまで短期間のうちに、これほど大きな価格低下をドライブしてきた「直接的な理由」としては説明力が弱いと感じる。

 例えば、シェール革命による米国の原油生産量の増加という理由にしても今に始まった話ではない。グラフ1から分かるとおり、米国の原油生産量はここ3年余り鋭角的に右肩上がりで増えきた。その間、原油価格(WTI)はほぼ90〜100ドルのレンジで横ばいだった。

 米国のシェールオイル増産で需給バランスが崩れたことが原油価格下落の要因であれば、もっと前から原油価格は下げていなければおかしい。

 無論、こうした需給バランスの歪みは原油安を招く根本的な下地ではあった。

 ただし、ここまでの下落トレンドに突入したのは需給要因というよりは価格要因、すなわち割高な状態で推移していた原油の価格調整が一気に起きたというものであり、価格に着目して売りが売りを呼ぶ状態は実需主導というよりも明らかに投機的な動きであると考えられる。

 商品先物の価格は、現物価格に金利と保管コストを加えたものである。したがって、先物のフォワードカーブは期先へ行けば行くほど高くなる(右肩上がり、順ザヤ)のが普通の状態である。

 ところが何らかの要因で現物に対する需要が強まると現物価格が跳ね上がる。一方、その需給ひっ迫の要因が一時的だと思われる場合は将来の需給に影響を与えないので期先の価格はあまり変動しない。その結果、フォワードカーブは手前が高くなる(右肩下がり、逆ザヤ)。

グラフ2  フォワード直先スプレッドと米原油在庫(2013~) グラフ2にはWTI先物の直先スプレッド(直物=スポット価格と1期先の先物との価格差)と米国の原油在庫の推移を示した。ここでスポット価格は現物価格と読み替えてもらってかまわない。

 2013年の推移に明確に見られるとおり、スプレッドが低下(つまりスポット物が買われて上昇)する局面では在庫が減り、スプレッドが拡大(スポット物が高くならずフォワードカーブが順ザヤ化)する局面では在庫が増加している。

 ところが14年前半は在庫が積み上がる過程においても直先スプレッドは拡大しなかった。これはスポット価格が割高に買われ過ぎていたことを示すものである。

 

原油価格下落の底打ちが見えた理由

 

 原油価格はそろそろ底打ちを探る水準に近づいてきたというのが筆者の見立てである。

 フォワードカーブの観点からは、ずっと逆ザヤで推移してきたが1年先の先物がスポット価格に対して2割弱高くなっている。この程度の価格差があればスポットを買って先物を売るという裁定取引が機能する水準であり、一本調子の下落に歯止めがかかるだろう。

グラフ3   米国原油リグの推移(2010~) もうひとつは、シェールオイル掘削用ドリルの数が減り始めたことである。リグカウントとは掘削機(ドリル)による掘削数。原油価格の急落で、採算割れを起こしたシェールオイル油田が増えてきていることを示す指標となる。

 米オイルのリグカウントはシェールオイルの生産が増え始めた09年ごろから急増し、12年〜13年は1400前後で安定推移していたが、14年に入ると再び増加に転じ10月には1600を超えピークを付けた(グラフ3)。

 だが、直近では1400台に低下している。原油価格が横ばいで安定していた時期の水準に戻ったわけで、目先、調整一巡感が台頭してもおかしくないと考える。

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