マネジメント

 1947年に始まった共同募金の「赤い羽根」の供給に携わり、羽毛の優れた特性から寝具の可能性を見いだした横田春夫氏が創業した東洋羽毛工業。「羽毛寝具を通じて、日本の生活文化の向上を目指したい」という横田氏の使命感は創業60年の今でも息づいている。

東洋羽毛工業 創業60年は顧客からの信頼の証

 昨年、創業60周年を迎えた東洋羽毛工業。その歴史は日本の羽毛寝具の歴史でもある。

 「創業から『高品質』な羽毛ふとんへの想いは60年たった今でも変わりません」と、語る柳場弘社長。

今までにない睡眠の専門店「oluha(オルハ)上質睡眠専門店」

今までにない睡眠の専門店「oluha(オルハ)上質睡眠専門店」

 同社の羽毛寝具に使われるダウンは軽くて、冬あたたかく、夏さわやか、そして汗などの湿気を吸い発散するという優れた特質を持つことから寝具として理想の素材である。しかし、ダウンの種類、精製方法によってその特質が大きく変わってしまうことを知る人は少ない。

 「ダウンの毛足が長いとその特質は高くなり、ふっくら感を保つ復元力も高くなります。当社では寝具としての羽毛の特質を最大限に生かせる、毛足が長い成長した親鳥のダウンを使用しています。毛足が短い若鳥のダウンでは復元力が弱く、つぶれやすく保温性が低くなります。お客さまが毎日使う寝具だけにダウンの品質にはこだわっています」

 柳場社長の言葉どおり、同社は世界各地に赴き、産地や水鳥の種類、育成環境や期間、餌までも自らの目でチェックし、ダウンボールが大きく、高密度で弾力性が富むダウンを輸入している。

 同社に限らずダウンのほとんどは輸入。それであればコストの安い海外で生産し、輸入すれば価格も下がり、販売量も増えるはずである。しかし、同社はあえて除塵、洗毛、乾燥から縫製、羽毛詰め、検査の商品化まで国内の自社工場で行っている。

 「高い品質の原羽毛であっても、寝具になるまでの製造過程の管理にまで目が行き届いていなければ高品質な寝具はつくれません。特に原羽毛の除塵、洗毛、乾燥が大切で、品質管理を徹底しないと羽毛の特質が失われるだけではなく、臭いや虫などの問題がでてきます。完成品として輸入すると中の羽毛の除塵、洗毛、乾燥の程度が確認できません。あえて国内での製造にこだわる理由はここにあります」

 また、国内工場のスタッフの縫製技術の高さに加え、顧客の使い心地を考え、キルティング技術や生地などの商品開発の工夫も国内工場ならではの強みでもある。

 原羽毛から国内生産にいたるまで品質にこだわった同社の羽毛寝具、一度使うとほかは使えないと絶賛する顧客が多いのも納得できる。

東洋羽毛工業の新しいチャレンジとは

 同社は今まで各都道府県の看護協会をはじめ、地方自治体や学校、警察、医療機関などの共済会や互助会、生協の指定業者として職域販売を行ってきた。

 「職域販売は指定契約の団体さまとの信頼関係で結ばれた販売方法です。そのためにも品質の高い羽毛寝具の製造販売だけではなく、お客さまへのアフターサポートの体制も必要です。当社は全国39の営業所を展開していますが、営業拠点であると同時に購入いただいたお客さまのサポートの拠点であり、製品保証の拠点でもあります」

「お客さまの声を商品開発に生かしていきたい」と柳場社長

「お客さまの声を商品開発に生かしていきたい」と柳場社長

 同社は購入後のサービスとして羽毛寝具の補修、増減毛から、羽毛を取り出して直接洗浄する「プレミアムダウンウォッシュ」によるリフォームまでを全国の営業所で対応している。

 同社は、昨年10月、東京・銀座1丁目にオープンしたファッションビル「KIRARITO GINZA(キラリト ギンザ)」に初めての店舗となる「oluha(オルハ)上質睡眠専門店」をオープンさせた。「よく眠った人には、かなわない」がコンセプトの同店、同社の羽毛寝具だけではなく、睡眠をとおして「健康・美容・エイジングケア」をサポートする商品やサービス、情報を提供している。

 「職域販売では、看護師や医師、公務員などハードな仕事をこなす、〝働く〟お客さまへ羽毛寝具をとおして快適な睡眠を提供してきました。ここ数年、睡眠が『健康・美容・エイジングケア』という観点から注目され、一般のお客さまからの問い合わせも増えてきました。そこで60周年を機に、今までの職域販売ではカバーできなかったお客さまにもお喜びいただける店舗として『oluha上質睡眠専門店』をオープンさせました」

 確かに睡眠は美容、健康として広がりを見せている。低反発枕やアロマ、最近では睡眠計やスマートフォンの睡眠アプリ、布団クリーナーなど睡眠にかかわるヒット商品も出てきた。今後、睡眠状態をモニターできるウェアラブル端末が普及すれば、その欲求は〝快眠〟へと高まってきそうだ。

 「快眠の基本はやはり寝具にあります。今まで〝働く〟お客さまの睡眠をサポートしてきたノウハウで、オルハでは多くのお客さまに〝人生を楽しむ〟ための睡眠をサポートする商品、サービスを提供していきます」

 睡眠を十分に取ることが必要とされる現代社会の中で、睡眠に取り組んできた同社の役割はますます大きくなっていく。

(文=本誌/井上 博 写真=佐藤元樹)

 
経済界 電子雑誌版のご購入はこちら!
雑誌の紙面がそのままタブレットやスマートフォンで読める!
電子雑誌版は毎月25日発売です
Amazon Kindleストア
楽天kobo
honto
MAGASTORE
ebookjapan
 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年5月号
[特集] 巻き込む力
  • ・高岡浩三(ネスレ日本社長兼CEO)
  • ・唐池恒二(九州旅客鉄道会長)
  • ・河野 仁(防衛大学校教授)
  • ・入山章栄(早稲田大学大学院・ビジネススクール教授)
  • ・出口治明(立命館アジア太平洋大学学長)
  • ・中竹竜二(日本ラグビーフットボール協会理事)
  • ・時代も国境も超えた普遍のリーダーシップを学べるベストブックス
[Special Interview]

 小林喜光(三菱ケミカルホールディングス会長)

 イノベーションを起こすために「人間とは何か」を問う

[NEWS REPORT]

◆零細企業でも活用できるインターネットM&A最前線

◆業界再編はあるのか 日本製鉄、巻き返しへの一手

◆技術研究所を解体してホンダは何を目指すのか

◆新型コロナウイルス治療薬 なぜ日本企業は創れないのか

[特集2]

 経営者に贈る「イロとカネの危機管理」

ページ上部へ戻る