政治・経済

 髙橋興三社長就任以降、着実に経営再建を進めているシャープだが、ここに来て外部環境の激しい変化にさらされている。2014年度通期業績の下方修正を発表するなど、状況は厳しくなっている。インタビューに応じた髙橋社長に今年にかける意気込みを聞いた。

「燃える心」をスローガンに掲げたシャープ経営陣の意図

 髙橋興三氏が社長となってから2回目の新年を迎えたシャープでは、昨年に続いて社員一人ひとりの変革を促す「行動変革宣言」が行われた。

 髙橋社長は13年5月の社長就任会見で「けったいな文化を変える」と語ったように、組織の風土を変えることを実践、その定着を進めている。髙橋社長自身の昨年の行動変革宣言は「文化を変えるから良い文化を創る」というものだった。そして、今年は「燃える心と瞬発力」を掲げた。

髙橋興三・シャープ社長

髙橋興三・シャープ社長

 15年度はシャープにとって、3カ年の中期経営計画の最終年度に当たる。髙橋社長の就任時の展望は、13年度を「構造改革ステージ」、14年度と15年度を「再成長ステージ」と位置付け、16年度以降にさらなる飛躍を期すというものだった。

 そしてその飛躍の鍵を握るものとして、「ヘルスケア・医療」「ロボティクス」「スマートホーム/モビリティ/オフィス」「食/水/空気の安心安全」「教育」の5つの新規事業を打ち出した。新規事業の研究開発は着々と進められており、一部で製品化されたものもある。

 しかし、基本的にシャープの既存商品と異なる分野となるため、まだビジネスに結び付いているとは言えない。昨年、市場開発本部を設け、販路の確立に努めているが、ビジネスの立ち上げとしては、16年度以降を想定している。

 その意味で15年度は、16年度以降に新規事業を開花させるための助走体勢を固める重要な年と位置付ける。新規事業の基盤を整える決意を示したものが、「燃える心」だという。

 「新しい事業を創っていくのはすごいパワーが要ります。普通に業務をこなしているのでは、とてもできません。そういう意味で、まず私を含めた社員みんなが、強い心を持たなければいけない」と、その決意を語った。

厳しいシャープの経営環境、業績への影響は?

 一方で業績について、14年度上期は回復基調にはあるものの、期初の公表値に未達で終わった。このため、下期に挽回する方向で計画を発表していたが、その雲行きが怪しくなっている。

 その要因は、ここに来て、外部環境が厳しくなってきていること。その1つが急激に進む円安だ。下期の為替レートは1ドル=106円で想定していたが、現状は10円以上の円安が進んでいる。

 シャープでは液晶などのデバイスを輸出し、白物家電など海外生産のプロダクツを輸入する形になるため、これまで為替の影響は基本的にはニュートラル(中立)という見方をしてきた。しかし、これが少し厳しい方向に向かいつつあるという。

 「デバイスは単純に円安分を全部は享受できないです。お客さまからはその分の値下げの依頼が来ます。また、プロダクツは円安の部分を全部価格転嫁することはなかなか難しいです」

 円安が進む中で、マイナスの影響を受ける白物家電は上期は持ちこたえて、業績にも寄与していたという。

 しかし、ここに来て状況がかなり厳しくなり、円安の影響はほとんどが白物家電に来ているようだ。取材時には「業績にマイナスに効いてくる」と下方修正を匂わせるに留まったが、1月下旬、一部報道を受ける形で、14年度通期の連結業績が予想を下回る見通しであることを公表した。

 厳しい外部環境・競争環境の変化に対応するためにも、髙橋社長は「瞬発力」を掲げる。

 「外部環境や競争環境が変わるということを前提にどれだけ早く動ける企業の体質を作っていけるかが、わたしたちの仕事だと思っています」

シャープの業績をけん引する中小型液晶頼みも限界

 では、厳しい状況の中でシャープはどうするのか。

 現在のシャープの復調を牽引しているのは、中小型液晶であり、上期の営業利益の大半を叩き出している。大型液晶から中小型液晶へのシフトを着々と進め、中小型液晶の好調が大型液晶のマイナスを補ってあまりある状況だ。

 その中小型液晶の成長要因は、中国の携帯電話メーカーへの外販で、中国メーカーの事業拡大の波をうまくとらえている。ビジネスの形態としてはBtoBであり、昨今の日本の電機メーカーの業績回復のセオリーを踏んでいる。ただし、自社製テレビ用の大型液晶の供給を考えると、今以上に中小型液晶へのシフトを進めることは現実的ではない。そして現在、工場の生産はフル稼働に近い状況にある。

 液晶事業について髙橋社長は次のように語る。

 「ほぼ生産がいっぱいになっていますので、さほど大きく売り上げが伸びる状況にはないと思っています。(増産となると)投資が伴ってきますが、今はまだ財務状態がそんなに健全ではなく、大型投資をできる状態ではありません」

 液晶だけには頼れない状況にある。一方で、シャープは既に全事業の約6割がBtoBのビジネスとなっており、BtoBシフトが喫緊の課題ではない。今はBtoBのビジネスを確実にキープし、各事業の収益力向上を地道にやっていくしかないのではないか。

 髙橋社長も今年の方針の1つに「収益構造の筋肉質化」を掲げ、バリューチェーン全体の見直しを図る構えだ。次の成長に向けて、今は我慢の時だろう。

(文=本誌/村田晋一郎)

 
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