テクノロジー

 ソフトバンクの感情認識パーソナルロボット「Pepper(ペッパー)」がいよいよ2月に発売される。Pepperはクラウドを活用することで、従来のスタンドアローンのロボットとは異なり、新たなプラットフォームビジネスを展開する。同事業を手掛けるソフトバンクロボティクスの冨澤文秀社長に発売に向けた意気込みを聞いた。

冨澤文秀氏が語る「Pepper」 多くの関心を集め、発売への準備が進展

冨澤文秀

冨澤文秀(とみざわ・ふみひで)
1972年生まれ。97年日本電信電話入社。2000年ソフトバンク・コマース入社。ソフトバンクモバイル プロジェクト推進部長、ソフトバンク事業推進統括部 統括部長などを歴任。11年10月よりロボット事業責任者を務め、14年8月ソフトバンク ロボティクス代表取締役社長に就任。

── 昨年6月の製品発表以降の展開は。

冨澤 今は3つに分かれて事業を推進しています。ひとつは9月にイベントを開催しましたが、デベロッパー向けのアクション。2つめは2月に発売予定のBtoC向けのアクション。そして3つめが、ネスレがコーヒーマシンの売り場に導入したような、BtoBにおけるPepperという位置付けでのアクションです。

 最初に動いたのはデベロッパー向けです。と言うのは、Pepperはスマートフォンに近いプラットフォームのビジネスで、いろんなアプリケーションがあって、いろんなことができるというものです。そのため、デベロッパーにいろんなアプリを作っていただく素地を作ることを先行してやっています。

 意外だったのは、BtoBの法人向けで、数百社から、作りたい、買いたい、売りたい、という話が来ています。もしかしたら1つのウェーブになる可能性があると思っています。

 BtoCに関しては、2月の発売予定にターゲットを合わせて、いろんなアプリを開発しています。家庭に馴染めるように、サポートするアプリの開発を進めています。

── 意外に多かったというBtoBの引き合いとは。

冨澤 本当にいろいろありますが、ネスレさんのような店舗での集客、もしくはその先のCRM(顧客管理)にまでロボットを活用したいというのが1つ。あとは企業の受付や、介護、教育のシーンなど、多岐にわたる引き合いが来ています。

── 既にソフトバンクモバイルではPepperが接客をしている店舗がありますが。

冨澤 いろんなテストでやっているところもあります。例えば、Pepperにこういうアプリを入れたらお客さんはどんな反応になるのか、どれだけ人が増えるのか、それがビジネスにつながるのか。一方、故障は起きるのか。起きるとしたら、どういった類のものなのか。もし起きたら、それを製品化までに潰しています。結果として、集客と売り上げにつながることに関しては成果が出ています。

場面に応じたキャラクター設定が重要と語る冨澤文秀氏

pepper── 引き合いの1つに教育がありますが。

冨澤 教育は、実はPepperが家庭に入る上で力を入れたい分野で、最初は低年齢層にマッチする教育コンテンツを出していきたいと思っています。ロボットと一緒に子どもが成長するようにしたいです。

── 家庭においては、パートナーであると同時に家庭教師の役割をしてもらうと。

冨澤 そういうこともできます。ただし気を付けているのは、Pepperが先生になるのではありません。Pepperが先生になると、家庭内での存在がよく分からなくなってしまいます。家庭内では「ドラえもん」的な、本当にパートナーでありたいと思っていますし、教育者ではないです。ですから教育アプリのときは、第3のキャラクターとして別の先生が画面上に出てきて、Pepperも子どもと一緒に学ぶ形になります。

 一方、教育でもBtoBは全く別の展開で、例えば塾や幼稚園に置いたらどうなるのかという提案があります。この場合は「Pepper先生」のような感じになります。

── Pepperの位置付けも家庭とBtoBとでは違うと。

冨澤 まさに先生にならなければいけない場合もあります。ですから、そこが非常に難しいです。例えば今、ソフトバンクモバイルにいるPepperはよくしゃべるし、ユーモアがあってちょっと小生意気なキャラクターです。しかし、それを家庭用に持って行くと、結構うざかったりもするので、もう少し大人しく、柔らかいキャラにしようとしています。

 家庭へ入るには、大前提として安全性や情報のセキュリティーの問題を考えた上で、深く考えなければいけないのはキャラの問題だと思っています。どういう存在であるべきか。うざい、うざくないの境目は何か。そして感情を認識し、感情を持たせることをいかにアウトプットしていくかがポイントだと思っています。ここをクリアできれば、本当に家族の新しいパートナーとして受け入れられるのではないかと思っています。

── Pepperのキャラは購入したユーザーがそれぞれ変えることができるのですか。

冨澤 2月の時点では、まだそこまで仕上がらないかもしれないですが、ゆくゆくは、それぞれの家庭のPepperが違うキャラになることは、われわれが思い描いていることです。Pepperは発売された後も、クラウドで毎月アップデートしていきますので、どんどん成長していくPepperが分かると思います。そこが今までのロボットと違います。

── ハードウエア的にはそれほど変わらず、ソフトウエアで進化していくと。

冨澤 ハードは変わるかもしれないですが、基本はソフトです。例えば、何年か後に新しいPepperが出た時にはハードはそこでチェンジしますけど、それまでのデータのやりとりはクラウドに上がっていますので、機種変更のイメージに近いです。だから、Pepperの自我も継続していきますし、愛着が湧いてくると思います。

冨澤文秀氏の思い パソコンと同じストーリーでロボットは拡大する

冨澤文秀── 収益化をどのように考えていますか。

冨澤 当然いきなり初月から黒字になるビジネスではないですが、世界中から引き合いがあり、日本だけではない状況がある程度見えていますし、何とかしなければいけないと思っています。

 Pepperは今までのロボットビジネスと違うアプローチです。大資本があり、製品は安価でなおかつクラウドベースのプラットフォームという最高の結果が出せるキーワードを詰め込んでいます。このスキームで駄目なら、ロボットビジネスはしばらく駄目かなと思います。だから日本のためにも世界のためにも成功させなければいけないという想いでやっています。

── 実際にそれなりの条件は揃っていて、あとは何が必要だとお考えですか。

冨澤 やはり一番必要になるのはデベロッパーのような仲間です。何でもそうですけど、最初は誰かが無茶してスタートしても、その人だけではどうにもならなくて、それに賛同する人たちが一緒に盛り上げていくことで成り立つビジネスだと思います。例えばパソコンも、もともとはただの箱でソフトもない状況でした。しかしパソコンを元に可能性があると思った人たちがいろいろなソフトを作って参入してモノになって一気に広がっていきました。ロボットもパソコンに近いストーリーになると思っています。パソコンと違うのは、ロボットの時代は必ずやってきます。みんなで盛り上げていけば、世界レベルのムーブメントになると思っています。

 足元で言うと、日本では2020年に東京五輪がありますから、それまでには力を見せたいですよね、日本のロボットはすごいぞと。

(文=本誌・村田晋一郎 写真=佐々木 伸)

 

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