国際

今年の春節期間中(2月18~24日)、中国人観光客が大挙して訪日し、“爆買い”ぶりが話題になった。その数45万人、消費額は約1140億円にものぼったという。日本政府が中国人観光客へのビザをさらに緩和したためである。

中国では、3月5日から始まった全国人民代表会議が15日(人民政治協商会議は13日)に閉幕した。全人代で、李克強首相は「新常態」を強調し、経済成長率を7%前後とした。

なぜ中国共産党は、今まで7~8%以上の成長を維持しようしてきたのだろうか。それは、毎年、1000万人以上の新規労働参入者の雇用を確保しなければ、社会不安が起こるという理由からであった。

現在、中国経済の失速は、誰の目にも明らかになっている。7%成長を切った場合、懸念されるのは、集団的騒乱事件の爆発的増大だろう。その数は1日550~800件、年間20万~30万件にも及ぶと言われる。今までは経済成長のお陰で、民衆の不満は抑制されてきたが、経済の低迷で、その不満が一気に噴出してもおかしくない。

近年、中国は貧富の差を示すジニ係数が2010年では0.61(西南財経大学)、2012年では、0.73(北京大学)いう異常な数字まで上昇している。いつ“革命”が起きても不思議ではない。

 

 さて、日本のマスメディアは、“爆買い”に象徴される中国人富裕層ばかりを喧伝するが、その貧困層に焦点を当てることはめったにない。

現在、手元にある資料(“Poverty and Inequality Statistics, July 2014,”“Poverty and Inequality Statistics, January 2015”)から中国の貧困層について述べてみたい。少し古い数字(2008年~2010年)ではあるが、同国の貧困の実態が垣間見える。

 

まず、国連が定める「絶対的貧困」層(1日1.25米ドル以下=150円以下=年収5万4650円以下。購買力平価<PPP>使用)は、08年、中国総人口の12.3%で約1億6300万人、09年、同11.8%で約1億5700万人、10年、同9.2%で約1億2300万人だった。これらの数字を見る限り、同国の「絶対的貧困」層は減少しているので、喜ばしい状況と言える。

 次に、「準絶対的貧困」層(1日1.25米ドル~2.5米ドル以下=150円~300円以下=年収5万4650円~10万9500円以下)に属する人々は、08年、総人口の25.8%で3億4200万人、09年、同24.7%で3億2900万人、10年、同22.8%で3億0500万人だった。

この層の絶対数が減少しているということは、「絶対的貧困」層から「準絶対的貧困」層、あいるは「相対的貧困」層へ移行していると見るべきだろうか。もしそうならば、中国の貧困問題が改善に向かっている証である。

 「相対的貧困」層(1日2.5米ドル~5米ドル以下=300円~600円以下=年収10万9500円~21万9000円以下)は、08年、総人口の32.1%で4億2500万人、09年、同31.3%で4億1600万人、10年、同22.2%で4億2100万人とあまり増減が見られない。

これが、はたして良い兆候なのか否か、判断しかねる。

 

 ところで、「中進国」の中国の貧困層と先進国の我が国のそれと比較することが必ずしも適当だとは思えない。だが、あえて08年の数字で比べてみよう。

中国では、当年、「絶対的貧困」層(1日1.25米ドル以下で生活している人)は全人口の12.3%、1億6300万人だった。また、「準絶対貧困」層(1日1.25米ドル~2.5米ドルで生活している人)は、人口の25.8%、3億4200万人いた。そして、「相対的貧困」層(1日2.5米ドル~5米ドルで生活している人)は、人口の32.1%、4億2500万人だった。

つまり、1日2.5米ドル以下で暮らす「絶対的貧困」層・「準絶対的貧困」層を併せると、全人口の44.4%、5億8800万人である。また、1日5米ドル以下で暮らす「絶対的貧困」層・「準絶対的貧困」層・「相対的貧困」層の合計は総人口の70.2%で、約9億3000万人存在した。

一方、同年、日本の場合、1日2.5米ドル以下で生活する「絶対的貧困」層・「準絶対的貧困」層の合計が、全人口の0.35%で45万人に過ぎない。さらに、これらに「相対的貧困」層を加えても、人口の1.0%で128万人である。中国の人口は我が国と比べ、約10倍(あるいは11倍)だとしても、その広範な貧困層の存在は特筆できよう。

 

中国は、「一人っ子政策」で、大半が(ある程度)裕福になる前に、すでに「少子高齢化」が始まった。若年層が多いインドとは異なり、中国で貧困層の底上げは、至難だろう。繰り返しになるが、2010年現在、中国では人口の63.4%、約8億4900万人が5米ドル以下で暮らしている。その人々が10年先、20年先、(今の右肩上がりの成長で)豊かになるという事態はきわめて想像し難い。

 

 

 

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