国際

 最近、中国が主導して創立するアジアインフラ投資銀行(AIIB)は世界の耳目を集めているが、そのゆくえは不透明である。日本では、AIIBの創設メンバーに入るべきだという積極的参加論と、いや、今は入るべきではないという慎重論が存在する。

 その華々しい影に隠れ、中国共産党内部で熾烈な暗闘が進行している事実をわれわれは見逃してはならない。周知のように、習近平国家主席は「トラもハエも一緒に叩く」と宣言し、「反腐敗運動」を展開している。だが、習近平は自らの出身母体である「太子党」には一切手をつけず、(江沢民元国家主席の)「上海閥」と(胡錦濤前国家主席の)「共青団」だけを狙い撃ちしている感がある。

 実は、習近平の盟友、王岐山(「太子党」出身で、党中央紀律検査委員会主任)が「反腐敗運動」の指揮をとる。実際、大量に官僚が検査・逮捕されたため、官僚不足に陥った省(例えば山西省)がある。また、検査・逮捕される前に自殺する官僚が後を絶たない。 けれども、習近平・王岐山連合は、さすがに「チャイナ・セブン」(党最高幹部、政治局常務委員)の「上海閥」、張徳江・劉雲山らや党・政府官僚たちの抵抗に遭い、現在、膠着状態が続く。今後、党内ではどのような展開をたどるのか予断を許さない。

 さて、中国高官(党・政府・国有企業で高位の人たち)や中国人大富豪は住みにくい中国大陸を捨て、移住先として、北米、特に、アメリカを目指す。 前者は、他の国・地域へ逃亡した人数を含め、計約1万8000人も及ぶという。後者は、しばしば中国高官と関係が深い。アリババ(阿里巴巴)のジャック・マー(馬雲)はその好例で、江沢民の孫、江志成、温家宝前首相の子、温雲松らに近いと言われる。

 中国では政権が交代したら、その途端、今までの政策が一挙に変わることがある。だから、中国高官らの地位・財産はもろくて危うい。また、大気・水・土壌・食品等の環境問題も深刻である。そこで、中国高官や中国人大富豪は巨額のカネを入手した暁には、真っ先にアメリカへの移住を考える。

そのやり方は、

①弟を当地へ留学させる。 ②愛人を当地の「愛人村」に住まわせる。 ③妻が妊娠したら、当地の「出産センター」(「妊婦村」ともいう)へ送り、当地で子供を産ませる、などが考えられる。将来、自分と家族・親戚一同が移住するためである。

 第1に、もし子供が米国籍を取得すれば、その両親は米国へ移住しやすい。例えば、習近平は、彭麗媛との間の娘、習明沢を米ハーバード大学へ留学させている(2012年秋、習近平が総書記になる直前、明沢は帰国したと伝えられたが、実際は、大学卒業まで米国に滞在したようである)。また、李克強首相も娘を米国へ留学させていた。このように、党最高幹部子弟の大半が米留学している。

 第2に、「愛人村」で有名なのは、米カリフォルニア州ロサンジェルス郊外のローランドハイツだろう(カナダではバンクーバー郊外にも同じような「愛人村」が存在する)。中国高官らは、米国の永住権取得目的で豪邸を購入する。そして、愛人に財産管理をさせ、いざという時には、そこへ逃亡する算段である。 近年、中国では、愛人生活を送る若い中国人女性の暮らしぶりを描いた、薛曉?監督、湯唯主演の「北京遇上西雅図(Finding Mr.Right)」(邦題「北京ロマンinシアトル」)が人気を博した。

 第3に、中国高官や中国人大富豪は、妻が妊娠して臨月間近になったら、旅行と見せかけて米国へ送り込む。そして、ロサンジェルスやニューヨークなどの大都市にある、中国人医師・看護師の待つ「出産センター」で子供を産ませる。出生地主義の米国では、その子供は必ず米国籍が取得できる。当然、その親も将来、米国籍を取得する権利が生じる。

 中国共産党は、少なくても表向きは、アメリカを“敵視”している。同時に、共産党は、西側の価値観(自由や民主主義等)を明確に否定している。だが一方では、自分や家族・親戚が米国移住するための準備を着々と整えている。日本人には、この中国人の“現実主義的な考え方”がよく理解できないかもしれない。

 ただ、習近平政権が誕生してから、「キツネ狩り」と称し、捜査官を米国へ派遣し、汚職高官を摘発、逮捕するよう努めている。しかし、現時点では、米中間に犯人引き渡し条約がない。中国共産党はオバマ政権に汚職高官の「ブラックリスト」を渡しているというが、その引き渡しに関しては、米国の高度な政治的判断がまたれる。

 

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