国際

 今年(2015年)、中国の第1四半期(1-3月)GDP伸び率は7.0%にとどまり、その景気後退が明らかになっている。実際、昨年(2014年)、中国では、工業用電力消費量が前年比0.2%減少した。 また、昨年、同国では、輸出が前年比4.9%増だったが、輸入は前年比0.5%減とマイナスに転じた。2008年、中国は「リーマン・ショック」の影響を受け、2009年には、前年比で輸出入ともに大幅に減少した。それ以来、初めての輸入減である。

 一方、2014年5月、中国主要70都市の不動産価格が急落して以降、すでに11ヶ月連続で下降している。今年3月に限り、北京をはじめ、いくつかの大都市では前月比で若干上昇した。けれども、それらの都市でさえ、昨年同月比ではマイナスが続いている。

 「新常態」でデフォルトの嵐か

 中国では、昨年3月、民間企業の太陽光パネルメーカー、上海超日太陽能科技股份有限公司が8980万人民元(約17億円)の社債の利払いができずにデフォルト(債務不履行)し、6月には倒産手続きに入った。だが、最終的に、中国当局が同社を救済している。

  同月、建材・不動産・物流等を手掛ける民間企業、徐州中森通浩集団公司が発行した高利回り債券のうち、1800万人民元(約3億4200万円)の利払いが一時困難となった。しかし、中国当局は同社も救済した。  同様に、昨年7月、山西省の建設民間企業、華通路橋集団公司は1年物社債4億人民元(約76億円)が償還できず、同社のデフォルトがささやかれていた。だが、土壇場で中国当局が救済し、同社はデフォルトを免れた。

 ところが、今年になると、潮目ががらりと変わる。3月の全人代で李克強首相が「経済状況が新常態に入った」とし、痛みを伴う経済改革を容認する姿勢を示した。  そのため、まず、4月7日、投資運用民間企業、中科雲網科技集団(孟凱・董事長)は、2.406億人民元(約45億7140万円)の資金不足で社債の利払いができずにデフォルトした。 次に、同月20日、香港に上場している深圳の民間不動産デベロッパー、佳兆業集団(郭英成・董事長)がドル建て社債の2563万米ドル(約30億7560万円)の利払いが困難で、デフォルトに追い込まれていた。

 昨年来、同業の融創中国(孫宏斌・董事長)が同社に対し資金援助を申し出ていた。だが、結局、両者は合意に至らず、佳兆業はデフォルトした。 さらに、翌21日、変電器で有名な“国有企業”、保定天威集団(丁強・董事長)が8550万人民元(約16億2450万円)の利払いでデフォルトに陥った。保定天威は中国武器装備集団公司(対外的には、中国南方工業集団を名乗る)の完全子会社で、中国武器装備は保定天威の株式の23%を所有する。

 けれども、習近平政権はついに国有企業をも見放した。今後、民間企業はもとより、国有企業さえ救済されない事態が次々と起こるだろう。

 アジアインフラ投資銀行(AIIB)創設

 このような国内状況を見ると、習近平政権が目玉とするアジアインフラ投資銀行(AIIB)は、主導的立場の中国が海外諸国から資金を集め、自国の経済発展に資するための組織(装置)ではないかという疑念が生じる。

 また、資金の流れに関して、透明性が確保されない以上、中国が恣意的に資金を流用する可能性を捨てきれない。さらに、中国は国内の過剰生産物(特に、鋼材やセメントなど)を海外事業展開で消化しようとしている感がある。

 我が国の一部大手マスメディアは、日本も創設時からAIIBに加盟しなければ、不利益を被ると喧伝した。

 けれども、中国の出資比率に関して、全体の25%・40%・50%と様々な数字が浮上している。どれが本当であるのか未だ不明である。目安として、ヨーロッパ諸国が全体で25%程度、それ以外で約75%と言われる。加盟国はGDPに比例して出資するので、日本は中国と同程度か、少なくてもその半分ぐらいの出資を余儀なくされるだろう。全体の資金は、AIIB設立当初は、500億ドル、将来的には1000 億米ドルへ拡大する予定である。かりに、中国が全体の40%出資だとすれば、我が国は最低でも20%、場合によっては30%程度の出資を覚悟しなければならない。

 日本は200億米ドル~300億米ドル(約2兆4000億円~3兆6000億円)を出資することになるが、はたして、それに比例する見返りがあるのだろうか。

 NNN(日本テレビ)が今年4月17日~19日に行った世論調査によれば、中国主導のAIIBに日本が創設メンバーとして参加しなかったことについて「良い」と思うが45.6%、「良くない」は17.3%だった(ちなみに、「わからない、答えない」が37.1%である)。多くの日本人は、AIIBに懐疑的であることがわかる。

 

筆者の記事一覧はこちら

【国際】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ
無農薬野菜

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

現存の不動産に新しい価値を創造する「心築(しんちく)事業」とJ‐REIT運用、太陽光などのクリーンエネルギー事業が主力。社名の「いちご」は一期一会に由来しており、サステナブルインフラを通じて日本の社会を豊かにすることを目指している。文=榎本正義(『経済界』2019年9月号より転載) 長谷川拓…

次世代車向け先進技術を応用する日本発プラットフォーマー ―イーソル

社員に奨学金を提供―ミツバファクトリーが実践する中小企業が勝つための福利厚生とは

新社長登場

一覧へ

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

アサヒグループ食品の副社長から、この3月にアサヒビールの社長に就任した塩澤賢一氏。長年、ビール営業畑を歩み、マーケティングを兼ねた繁華街歩きを趣味にしている。街の変化から世の中の流れを読む塩澤新社長が挑むのは低迷するビール市場の活性化。若者需要を伸ばしつつ、スポーツイベントを商機として攻勢をかけていく。聞き手…

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年9月号
[特集] 東京五輪以降──ニッポンの未来
  • ・2度目の東京五輪 今度はどんなレガシーが生まれるのか
  • ・高岡浩三 ネスレ日本社長兼CEO
  • ・脱CO2の切り札となる水素活用のスマートシティ
  • ・五輪契機にテレワーク普及へ「柔軟な働き方でハッピーに」
  • ・ワーケーション=仕事×余暇 地域とつながる新しい働き方
  • ・「ピッ」と一瞬で決済完了! QRしのぐタッチ決済の潜在力
  • ・東京五輪で懸念される調達リスク
  • ・フェアウッド100%使用にこだわる佐藤岳利(ワイス・ワイス社長)の挑戦
[Special Interview]

 原田義昭(環境大臣・内閣府特命担当大臣)

 世界の脱炭素化、SDGs「環境」が社会を牽引する

[NEWS REPORT]

◆フェイスブックの「リブラ」で仮想通貨も「GAFA」が支配

◆脱炭素社会へ 鉄リサイクルという光明

◆PBの扱いを巡り業界二分 ビール商戦「夏の陣」に異変あり

◆中国の次は日本に矛先? トランプに脅える自動車業界の前途

[特集2]

 北の大地の幕開け 北海道新時代

・ 鈴木直道(北海道知事)

・ 岩田圭剛(北海道商工会議所連合会会頭)

・ 安田光春(北洋銀行頭取)

・ 笹原晶博(北海道銀行頭取)

・ 佐々木康行(北海道コカ・コーラボトリング社長)

・ 會澤祥弘(會澤高圧コンクリート社長)

・ 佐藤仁志(北海道共伸特機社長)

・ 内間木義勝(ムラタ社長)

ページ上部へ戻る