国際

 最近、急に、韓国は経済的苦境に陥っている。それには、様々な理由が考えられよう。ここでは、主な5つを挙げてみたい。

 

 第1に、「ウォン高」である。輸出依存度が高い韓国(2013年、GDP 比42.9%)には痛手だろう(ちなみに、我が国は同14.6%)。大手財閥の輸出に翳りが見られる。

2014年5月~15年5月まで、ウォンの為替レートの推移を見ると、ウォンは日本円に対し「ウォン高」・「円安」となっている。おそらく、「円安」の恩恵を受けた日本製品が、世界で韓国製品に勝っているのではないか。そこで、韓国経済は緩やかな下降に転じている(ただし、同期間、ウォンは米ドルに対して「ウォン安」・「ドル高」傾向にあった)。

 

 第2に、中国経済の成長鈍化である。2013年、韓国は中国への輸出額(1830億米ドル)が、我が国の対中輸出額(1622億米ドル)を抜いて、世界一となった。

ところが、肝心の中国自体の景気は、目下のところ2008年9月の「リーマン・ショック」後の最悪期と同程度(かそれ以下)に落ち込んでいる。

いわゆる「中国版公定歩合」(2006年8月~2015年5月、中国人民銀行による「預金・貸出金利」)の推移を見れば、一目瞭然である。

「リーマン・ショック」直後の12月、中国人民銀行の貸出金利は5.4%で、この2006年8月以降、今に至るまでの最低金利である。この貸出金利5.4%は1-3年モノとなっている。けれども、3-5年モノは5.76%とやや金利が高い。

一方、今年5月の貸出金利は1-5年モノで5.5%である。つまり、1-3年モノではワースト2だが、3-5年モノではワースト1となる。したがって、中国の景気は目下「リーマン・ショック」後の最悪期と同程度(かそれ以下)とも言える。

だが、習近平政権は打つ手がきわめて限られているので、「新常態」(ニューノーマル)と称し、開き直っている感がある。

韓国は、経済的に中国へ過度に依存してきた。もし韓国が多角的な輸出戦略を採らないと、このまま中国と一緒に沈む公算が大きい。

 

第3に、無論、外需がダメならば、内需を増やせば良いが、韓国では、個人消費が増えにくい構造となっている。

『日経ヴェリタス』(2015年5月10日〜5月16日号 の「韓国経済」)によれば、①住宅ローン、②(子供の)教育ローン、③(年金が充実していないため)定年退職者の借金などで、一般の韓国人は、多額の借金を抱えている場合が多い。この状況下では、個人の可処分所得には限界がある。消費中心の内需拡大は難しい。

 

第4に、朴槿恵政権は「歴史問題」・「慰安婦問題」等で「反日」政策を展開しているが、それが韓国のエンターメント業界や観光業界に暗い影を落としている。

我が国では、かつて2度3度、「韓流ブーム」が起きている。けれども、いつの間にか、(大人による)「韓流ブーム」が終わった。また、日本人旅行客の韓国への旅行が激減している。

日本人の特質として、ちゃんと相手に理由を告げず、静かに去って行く。(大人による)「韓流ブーム」といい、韓国旅行ブームといい、徐々に去って行った。

『zakzak』(2015年4月6日付)によれば、ゴールデン・ウイーク時、韓国へ行く日本人旅行客は、13年調査では10.9%減、14年では23.7%減、15年では11.8%減と3年連続二桁減となっている。韓国の旅行業界にとっては決して楽観できない数字だろう。

 

第5に、韓国でMERS(ヒトコブ駱駝による中東呼吸症候群)が発症し、すでに14人の死者が出る事態となった。今後、その数はもっと増えるおそれがある。そのため、韓国旅行を控える外国人客が相次いでいるという。

少し古い数字だが、『グローバル・ノート』の「2013年世界の観光客数<受入数>国別ランキング統計・推移」では、韓国への観光客は1217万6000人で世界22位だった(ちなみに、同年、我が国へは1036万4000人で世界27位)。

韓国は観光業も主要産業の一つなので、朴政権のMERS抑え込み失敗は大きな打撃となるに違いない。

 

ところで、中国の習近平政権は、韓国と「反日」政策でスクラムを組むふりをしていた。しかし、自国経済にテコ入れしようとしてか、突然、我が国にすり寄ってきたふしがある。習主席に二階訪中団(3000人以上)への歓待ぶりが、それを物語っていよう。

 

朴槿恵大統領も、そろそろ「反日」政策をやめ、日本との緊密な互恵関係を築く時がやってきたのではないだろうか。

 

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

不動産の現場から生産緑地の将来活用をサポートする――ホンダ商事

ホンダ商事は商業施設や宿泊施設の売買仲介、テナントリーシングを手掛けている。本田和之社長は顧客のニーズを探り最適な有効活用を提案。不動産の現場から、生産緑地の将来活用など社会問題の解決にも取り組む。── 事業の概要について。本田 当社は商業施設やホテル、旅館の売買・賃貸仲介(テナントリーシング)を…

企業eye

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年8月号
[特集]
パナソニック新世紀

  • ・総論 家電事業でもB2Bでも根底に流れる「お役立ち」
  • ・樋口泰行(コネクティッドソリューションズ社社長)
  • ・B2Bに舵を切るパナソニック
  • ・パナソニックのDNA 家電事業の次の100年
  • ・本間哲朗(アプライアンス社社長)
  • ・パナソニックの家電を支えた“街の電気屋”の昨日・今日・明日
  • ・テスラ向け電池は量産へ 成長のカギ握る自動車事業
  • ・パナソニックとオリンピック・パラリンピック

[Special Interview]

 津賀一宏(パナソニック社長)

 変化し進化し続けることでパナソニックの未来を創る

[NEWS REPORT]

◆商品開発に続き環境対策で競い合うコンビニチェーン

◆サムスンを追撃できるか? ようやく船出する東芝メモリの前途

◆スバル・吉永泰之社長はなぜ「裸の王様」になったのか

◆「ニーハオトイレ」は遠い昔 中国を席巻するトイレ革命

[政知巡礼]

 木原誠二(衆議院議員)

 「政治が気合を持って、今のやり方を変えていく覚悟を」

ページ上部へ戻る