マネジメント

野島隆久氏の戦略 ワンストップサービスを独自の店舗で提供

 電気街・秋葉原で一時代を築いたPC(パソコン)専門店。その代表である「ソフマップ」はビックカメラに、「ツクモ(TSUKUMO)」もヤマダ電機に、ともに業績不振の末に大手家電量販店の傘下となった。今でも中小専門店の閉店が相次ぐ中、ピーシーデポコーポレーションは営業、経常利益ともに二期連続で過去最高益を更新した。

 「PC専門店から、プレミアム会員サービスを軸にしたSLP店(スマート・ライフ・パートナー)への業態転換を進めた結果です。SLP化によってプレミアム会員などの有料の会員サービスが増え、売り上げの三分の一まで占めるようになりました」と、野島社長は説明する。

 SLP店は、商品だけの店舗ではなく、大型のテーブルと椅子が店舗の中心を占め、カウンターではなく、このテーブルで説明や契約など接客を行う。小売店というより気軽に立ち寄れるサービス拠点という感じだ。

「SLP店は、PCやタブレット、スマートフォンなどのアフターサービスを中心に据え、相談しやすい店舗作りを心がけました。プレミアム会員の方は、来店していただければ、デバイスのWiFiの接続や機器設定から、OSのアップグレード、データのバックアップやセキュリティ対策まで多くのサービスが会費内で受けられます」

 家電量販店などのアフターサービスである出張サービスは便利なようだが、自宅待機を余儀なくされ、他人を自宅に入れたくない人も少なくない。店頭であれば自分の都合で行くだけだから、実は同社の店頭サービスの方が顧客のニーズに合っている。また、会員制であることから気兼ねなく相談できる。

 「プレミアム会員サービスは、PCに限らず、タブレット端末、スマホなど“オールデバイス”が対象です。タブレットやスマホの普及で、PC以外のサービスを求める人が増え、月額のメリットが高くなったのも増えている理由です」

 SLP化によって、他店やECサイトで購入した顧客の来店も増えている。多くの家電量販店はアフターサービスをメーカーに任せているが、コールセンターは繋がらないのが常、デバイスごとに連絡するのも手間である。困った顧客が来店、同社のワンストップサービスを知り、プレミアム会員に加入していく。秋葉原などの都心ではなく、顧客が住む住宅街に店舗がある理由もここにある。

  顧客が必要とするオールデバイスのワンストップサービスを提供し、「ストック型」の収益構造に転換した同社は、業界内外で注目されている。

 SLP04SLP05

デジタル雑誌と家庭内の「IoT」を推進したい野島隆久氏

 1999年に株式店頭登録(現:ジャスダック)した際、PC専門店でありながら「(操作が難しい)PCは、いずれ無くなる」と発言した野島社長。その言葉通り、今や操作が簡単なタブレットがPCに取って代わろうとしている。

  そこで同社は、独自の「デジタル雑誌」のサービスを開始。新聞では朝日新聞、産経新聞、雑誌では一番人気の女性誌から、生活情報誌、ファッション、ビジネス、スポーツ、趣味まで約50誌と提携し、デジタル雑誌とタブレットをセットにした月額制のサービスを提供している。「タブレットを買ったはいいが、使い道がない」と言う人が多い中、顧客がいつも読んでいる新聞、雑誌をタブレットで読めるサービスを提供することで、タブレットの使用頻度を上げ、結果的に継続率が上がる。それは同社の「ストック型」経営を高めることにつながっていく。

 「デジタル雑誌をきっかけに、写真、メール、SNSと、タブレットの使い方、楽しみ方を覚えてもらうのもSLP店の役割です」

 今年2月、同社が開発してきたプレミアム会員向けにクラウドサービスの本格的な運用を開始した。これは家庭で使われている複数のデバイス内のデータを全自動でクラウド上にバックアップを行う今までにないサービスである。

 「今や家庭ではPCに加え、タブレットやスマホも一人一台が当たり前になり、WiFiやプリンター、ハードディスクなどの周辺機器も増えています。当社のクラウドサービスは、専用のアプリを入れることで、PC内の文書や写真などのデータ、周辺機器の設定、ドライバ情報から、タブレット、スマホ内のデータや設定情報までオールデバイスの情報を全自動でバックアップを行います。これによってデバイスのトラブルによるデータ復元、買い替え時のデータ移行を店頭でスムーズに行うことができるようになりました」

  このサービスは、店頭で顧客の家庭内の通信環境を再現できるという独自開発の技術と万全なセキュリティ対策によって実現しており、同業他社の追随は難しい。また、ネットに繋がっているデバイスの情報を全自動でバックアップできる技術は、近い将来、家庭内の「IoT(Internet of Things)」のプラットホームとなる可能性も秘めている。

  店頭でのワンストップサービス、独自のコンテンツと技術で「ストック型」を進めていくピーシーデポに小売業の新しい形が垣間見えた。

関連記事

好評連載

銀行交渉術の裏ワザ

一覧へ

融資における金利固定化(金利スワップ)の方法

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第20回)

銀行交渉術の裏ワザ

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第19回)

定期的に銀行と接触を持つ方法 ~円滑な融資のために~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第18回)

メインバンクとの付き合い方

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第17回)

銀行融資の裏側 ~金利引き上げの口実とその対処法~

[連載] 銀行交渉術の裏ワザ(第16回)

融資は決算書と日常取引に大きく影響を受ける

元榮太一郎の企業法務教室

一覧へ

社内メールの管理方法

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第20回)

企業法務教室

[連載]元榮太一郎の企業法務教室(第19回)

タカタ事件とダスキン事件に学ぶ 不祥事対応の原則

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第18回)

ブラック企業と労災認定

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第17回)

電話等のコミュニケーション・ツールを使った取締役会の適法性

[連載] 元榮太一郎の企業法務教室(第16回)

女性の出産と雇用の問題

本郷孔洋の税務・会計心得帳

一覧へ

税務は人生のごとく「結ばれたり、離れたり」

[連載] 税務・会計心得帳(最終回)

税務・会計心得帳

[連載] 税務・会計心得帳(第18回)

グループ法人税制の勘どころ

[連載] 税務・会計心得帳(第17回)

自己信託のススメ

[連載] 税務・会計心得帳(第16回)

税務の心得 ~所得税の節税ポイント~

[連載] 税務・会計心得帳(第15回)

税務の心得 ~固定資産税の取り戻し方~

子育てに学ぶ人材育成

一覧へ

意欲不足が気になる社員の指導法

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第20回)

子どもに学ぶ人材マネジメント

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第19回)

子育てで重要な「言葉」とは?

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第18回)

女性社員を上手く育成することで企業を強くする

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第17回)

人材育成のコツ ~部下の感情とどうつきあうか~

[連載] 子どもに学ぶ人材マネジメント(第16回)

人材育成 ~“将来有望”な社員の育て方~

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

家族のように接していたペットを亡くし、飼い主が大きな喪失感に襲われる「ペットロス」。このペットロスとなってしまった人々が交流し、お互いを癒し合うカフェが、東京都渋谷区にオープンした。「ディアペット」を運営するインラビングメモリー社の仁部武士社長に、ペット仏具の世界とペットロスカフェをつくった目的について聞いた…

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

日本人の英語学習の課題解決に向け、学習者目線のアプリを開発―― 山口隼也(ポリグロッツ社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年5月号
[特集]
進化するチーム

  • ・総論 姿を変える日本の組織 個人とチームが互いに磨き合う時代へ
  • ・小笹芳央(リンクアンドモチベーション会長)
  • ・稲垣裕介(ユーザベース社長)
  • ・山田 理(サイボウズ副社長)
  • ・鈴木 良(オズビジョン社長)

[Special Interview]

 南場智子(ディー・エヌ・エー会長)

 「社会変革の今こそ、組織を開き、挑戦を加速する」

[NEWS REPORT]

◆社長になれなかった松下家3代目がパナソニック取締役を去る日

◆DeNAとSOMPOが提案する新たなクルマの使い方

◆ここまできたがん治療 日の丸製薬かく戦えり

◆ブレグジット目前!自動車各社は英国とどう向き合うか

[特集2]九州から未来へ

 九州一丸の取り組みで生まれる新しい産業

ページ上部へ戻る