国際

香港の「雨傘革命」を引き起こした一国二制度

 よく知られているように、台湾海峡を挟んで、中国・台湾・香港の動きは密接に連動している。

 中国とは別の国である台湾は、「1国2制度」下にある香港と同じ価値観を持つ。台湾・香港では民意を重視する「近代化」した社会システムが作動している。だが、中国は依然、民意を軽視する「前近代化」的社会システムにとどまる。

 2014年3月~4月、台湾の「ひまわり学生運動」(学生が「両岸サービス・貿易協定」の批准を阻止するため、立法院を占拠)は、同年9月開始の香港の「雨傘革命」を引き起こした。さらに、その「雨傘革命」こそが、同年11月に行われた台湾「統一地方選挙」での野党・民進党圧勝を演出している。

 実は、2014年8月末、中国の全国人民代表大会は、2017年の香港行政長官普通選挙で、候補者は「指名委員会」(「親中派」が大半を占める1200名の「選挙委員会」からの横滑り)の過半数の推薦が必要と決定した。この選挙制度下では、候補者は「親中派」2~3名に絞られる。

 仮に、香港の「民主派」から行政長官候補者が出馬したら、「民主派」候補が勝利する可能性がある。そうなると、中国共産党は香港を“間接統治”することが困難になるだろう。そこで、北京は候補者を原則「親中派」しか出馬できない方針に変更したのである。

 以前の国際公約では「選挙委員会」(=「指名委員会」)中150名(全体の8分の1)以上の推薦があれば、行政長官候補となることができた。だが、新制度の下では、「民主派」候補の出馬は絶望的である。

中国共産党と香港政府に切り崩された「雨傘革命」

 さて、香港の若者には、中国共産党こそ(コミック・アニメ・実写版の)「進撃の巨人」(諫山創)のイメージかもしれない。人類は3重のウォールに囲まれ、平和に暮らしていた。しかし、突如、巨人が現れ、1番外側のウォール・マリアは破壊され、人類は狭い2つのウォール(「ウォール・ローゼ」と「ウォール・シーナ」)に閉じ込められることになる。

 2047年(今から32年後)、鄧小平が約束した「1国2制度」が終わり、香港と中国が一体化する。30年以上経てば、大半の中高年の死んでしまうだろう。だが、現在、20歳前後の学生にとっては、まだ50歳あまりである。

 現在、香港は「近代化」された「法治」社会である。だが、「1国2制度」が終了し、中国共産党が香港を直接統治したら、「前近代」的な「人治」社会へ逆戻りしてしまうかもしれない。香港の若者はそれを恐れている。

 そこで、学生らは黄色い雨傘を持って立ち上がった(傘は主に警察の放水や催涙スプレーを避けるため)。多くの若者たちが共鳴し、参加したのである。

 香港では世代間で対中認識のギャップが著しい。多くの中高年は、香港経済が中国大陸に依存しているので、あえて共産党に逆らいたくないだろう。他方、若者はここで民主主義を守らないと、自分たちの未来は明るくない、と判断したのではないか。

 ただ、長期化する「雨傘革命」には、しっかりしたリーダーがいないため、運動がバラバラで、中国共産党や香港政府に切り崩された。運動を指導した黄之鋒は香港警察に一時拘束されるし、「運動の女神」と称された周庭(アグネス・チョウ)は運動期間中、その役割を降りた。

 結局、香港の学生は、巨人を倒すべくエレン(ヒーロー)やミカサ(ヒロイン)にはなれなかったのである。そして、昨年12月15日、香港治安当局によって、「雨傘革命」はいったん終息した。

 ところが、今年6月18日、香港立法会(定数70議席)は政府の選挙制度改革案(「指名委員会」の過半数の推薦者のみが行政長官候補となる)を否決したのである。

 法案成立には、立法会の3分の2以上(47人)の賛成が必要である。実際、「親中派」議員は、3分の2議席を確保していない。「民主派」議員が3分の1 以上の議席を持つので、法案を通すことはできなかった。

 そこで、多くの「親中派」議員は採決をボイコットしたのである。そのため、政府案に対し「賛成8、反対28」という反対多数で法案は否決された。

 2017年には、現行の選挙制度、すなわち「選挙委員会」が行政長官を選出する間接選挙を実施するかもしれない。それとも、全人代は再び代案を香港に突き付けるのだろうか。

 今後、北京がどのような動きに出るのか予断を許さない。

 

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