国際

中国の実態経済以上に跳ね上がった株価

 昨年5月以降、中国の不動産価格が再び下落し始めた。不動産バブルがはじけたと言っても過言ではない。

 その後、不動産価格は下落の一途をたどる。先月6月、北京、上海、深圳等の一部大都市だけ多少価格を戻したが、あとの地方都市は依然、価格上昇は見られない。そこで、行き場を失ったチャイナ・マネーが株式市場へ流れ込んだ(高利回りの「理財商品」に手を出した人々はすでに痛い目に遭っている)。

 周知のように、株価というのは景気の先行指標である。半年先、1年先の景気動向を示す。ところが、後述するように、中国の実態経済が悪いのにもかかわらず、昨秋から株価だけが独歩高で推移した。

 昨年夏過ぎ、上海総合指数は、2000ポイントから徐々に上昇していく。そして、今年6月には、ついに5000ポイントの大台に乗せたのである。中国共産党が、業績の悪い企業を救うためか、株は上がると庶民を煽ったせいかもしれない。

 しかし、誰が見ても、これは「株バブル」以外に考えられないだろう。いつ騰落してもおかしくなかった。

 結局、翌7月には、株価は一時3500ポイントを割り込んだ。そのため、日本を含む世界中のマーケットは大騒ぎしている。

中国政府は株バブル崩壊批判が北京に向かわぬよう通達

 さて、中国の場合、株式市場全体に占める個人投資家の割合が80%と言われる。その民族性から言えば、中国人は“投資”よりも一獲千金を狙う“投機”が大好きである。上海総合指数(および深圳総合指数)が急落すると、個人投資家はパニックに陥り、株価の下落が止まらない。

 奇妙なことに、中国では上場企業が自社株の取引停止申請ができる。7月8日までに、約1400社(上海1071社、深圳1731社。全部で2802社)の企業が取引を中止したのである(ちなみに、上場国有企業は人民解放軍と関係が深い)。

 一方、中国政府は、新規株式公開を延期した上に、大株主の株式売却を半年間禁止した。さらに、今回の株暴落は一部(悪意を持つ?)投資家による「空売り」が原因だとして、厳しく取り締まる方針を打ち出したのである。言うまでもなく、「空売り」は正常な市場行為である。中国ならではの前代未聞のでき事だろう。

 中国の証券会社21社は、株式市場の安定基金として、総額1200億元(約2.4兆円)を出資し、下支えをしている。だが、市場には少なくとも4.2兆元(約82兆円)が流れ込んでいる。あまりにも額が少なすぎはしないだろうか。他方、北京は株価暴落の批判が政府に向かわないよう通達したという。

中国の景気はリーマンショック後より悪い

 ところで、しばしば日本のエコノミストは、中国政府の発表するGDPを信用している。けれども、この数字はまったくあてにならない。

 われわれがかねてより主張しているように、「中国版公定歩合」(預金・貸出金利。特に貸出金利)こそが、中国経済の実態を示す最も信頼すべき数字だろう。

 まず、1997年の「アジア金融危機」の際、江沢民政権は同年10月から2002年2月まで、1~3年モノ貸出金利を9.36→9.00→7.11→6.66→5.94→5.49%と6回緩やかに下げている。その後、金利が上昇するまで2年8ヶ月もかかった。

 次に、2008年の「リーマン・ショック」直後、胡錦濤政権は、同年9月中旬から12月下旬にかけて、1~3年モノ貸出金利を7.29→7.02→6.75→5.67→5.40%と5回も急激に引き下げている。そして、胡政権は、総額4兆元(一説には40兆元)の財政出動をして、この難局を何とか乗り切ったのである。

 習近平政権は、昨年11月から今年6月まで、すでに4回の利下げを行なった。1~5年モノ貸出金利を6.00→5.75→5.50→5.25%と引き下げている。

 現在の貸出金利2.25%は、約20年間で最低である。つまり、「アジア金融危機」、「リーマン・ショック」直後よりも、現在の方が景気は悪い。

 それにもかかわらず、習近平政権は何の施策も打っていない。「新常態」(ニュー・ノーマル」と称して、手をこまねいている(「新常態」とは、換言すれば、市場の働きにまかせる“レッセフェール”とも言えるだろう)。もしかすると、すでに中国政府の財政赤字が大きいので、習近平政権は、財政出動できないのかもしれない。

 昨年、北京はデフォルト間近の民間企業さえ救済した。ところが、今年に入ると、一転、国有企業や中央企業(中央政府の管理・監督下にある)さえも救済していない。

 ところが、今回、習政権は、露骨に株式市場に介入した。おそらくこれが共産党の“最後の砦”だからに違いない。株式市場が崩壊すれば、たちまち社会不安が増大するだろう。

 北京は「ギリシャ危機」に乗じて、同国へ支援を申し出た。だが、習政権にその余力があるのか、はなはだ疑問である。

 

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