政治・経済

地銀の再編は時間の問題? 金融庁からの圧力

 地方銀行へのさらなる再編圧力か――。金融庁は全国106の地銀の利益見通しについて、8割超にあたる89行で2018年3月期の経常利益が14年3月期より減るとの試算を公表した。約2割の22行では半減以下か赤字になるという。地銀の現行のビジネスモデルに警鐘を鳴らし、戦略転換を強く促した格好になった。

 「機械的な試算なので必ずこうなるというわけではないが、各行とビジネスモデルを議論するにあたり、具体的な試算があった方がいい」。金融庁幹部は地銀との今後の対話のツールに試算を活用する考えを示す。

 試算は金融機関に対する検査・監督の年間報告書「金融モニタリングレポート」で示された。金利や貸出金残高が過去3年間の平均と同じペースで推移することを前提にすれば、地銀のうち増益になるのはわずか17行である一方、22行の利益が半分以下、そのうち5行は赤字という衝撃の内容だ。

 背景には、世界的な金融緩和で金利の低下が続く中、過去の高い金利の融資が順次償還され、低い融資に置き換わって利ざやが縮小していることがある。実際、地銀の貸出金利回りは11年3月期の1・88%から15年3月期には1・44%とここ5年で右肩下がりに低下している。

 金融庁は、地銀の経営改善策として「規模の利益を指向する戦略」や規模によらず「ビジネスモデルで差別化を図る戦略」を示した。再編はあくまで1つの選択肢で、「そこは経営判断」と幹部は話す。

 レポートでは収益体質の良い地銀に共通する点として、有望な融資先を発掘する「目利き力」を挙げた。

 例えば、短期的な融資先への成果追求に傾斜させるのではなく、営業店が融資先の事業への理解を深めて課題を見つけ、適切な改革策を提案していることが、結果として数値目標の達成にもつながっていると、実際の地銀の好事例を紹介する。

 だが、一方で、貸し出し資金規模が大きくなるほど効率化が進み、経費には規模の利益が強く作用していることもデータで明示。合併や経営統合を促したい狙いも浮き彫りになっている。折しも、細溝清史長官が7月7日に退任し、森信親監督局長が長官に昇格した。

 森氏は検査局長時代の13年末に地銀各行の頭取に地銀の将来の収益構造の分析などまとめたいわゆる「森ペーパー」を示し、その後の地銀の再編ドミノを主導したとされる。

 森氏のトップ就任にも地銀首脳は戦々恐々としており、今回の金融庁の試算も相まって、生き残る可能性を探る動きが加速しそうだ。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

自動車産業・産業機械の世界的サプライヤー、シェフラーグループの日本法人で2006年イナベアリングとエフ・エー・ジー・ジャパンが合併して設立。国内4拠点で自動車エンジン、トランスミッション、シャーシなど精密部品、産業機械事業を展開する。文=榎本正義四元伸三・シェフラージャパン代表取締役・マネージング…

シェフラージャパン代表取締役 マネージング・ディレクター 四元伸三氏

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

【特集】2019年注目企業30

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年6月号
[特集] 進化するリーダーシップ
  • ・あなたは北風、それとも太陽?
  • ・小路明善(アサヒグループホールディングス社長兼CEO)
  • ・鈴木貴子(エステー社長)
  • ・千葉光太郎(ジャパン マリンユナイテッド社長)
  • ・二木謙一(國學院大學名誉教授)
[Special Interview]

 中村邦晴(住友商事会長)

 「正々堂々と向き合えば、仕事は人を幸せにする」

[NEWS REPORT]

◆パイオニアに続きJDIも 中国に買われる日本企業の悲哀

◆会社はだれのものなのか サイボウズと株主がつくる“共犯関係”

◆24時間営業はどこへ行く コンビニ業界未来予想図

◆トヨタとホンダが手を組み参戦 「MaaS戦争」いよいよ勃発

[特集2]ブランド戦略 新時代

 技術やデザインだけではない ブランドとは商品の哲学だ

ページ上部へ戻る