テクノロジー

データを収集するセンサから、クラウドに上げるスマートデバイス、クラウドプラットフォーム、分析ツールまで、IoTの構成要素は多岐にわたる。このIoTの流れのほぼすべてのリソースを抱えるのが富士通だ。IoTの拡大に合わせて、富士通はその強みを生かしたソリューションを展開する。

富士通が目指すIoT 消費者と従業員の動向をいかに掴むか

 IoT時代を迎えた展開として、富士通では昨年からIoTの専門組織を立ち上げ、11月に「ヒューマンセントリックIoT」というコンセプトを定めた。

 富士通のビジネスはBtoBが主体だが、顧客と一緒にIoTによる新しいビジネスを共創していく。BtoBの先のBtoBtoCおよびBtoBtoEを考えた場合、サービスの最終利用者であるC(消費者)やE(従業員)の動向をいかに掴むかが重要となっている。須賀高明・富士通 ネットワーク事業本部IoTビジネス推進室長は次のように語る。

須賀高明氏

須賀高明氏

 「富士通の顧客であるBtoBtoCやBtoBtoEの真ん中のB(商品提供者)は、CやEの動向を正確に把握していない。このため、富士通自体もCやEにどういう価値を提供できるかを顧客であるBと一緒に考えていく」

 そのために人間中心(ヒューマンセントリック)の考え方で、人の活動を把握し、何が最終利用者の価値であるかを把握し、その価値を具体的な商品として提供する仕組みを顧客と一緒に創り上げる。それがヒューマンセントリックIoTだという。

 コンセプト制定以降の動きも活発で、IoTに関する個々のソリューションを強化している。

後藤博之氏

後藤博之氏

 5月に、センシングのパッケージとして「FUJITSU IoT Solution UBIQUITOUSWARE」(ユビキタスウェア)を発表した。「人の情報を検出して人の役に立つという考え方」(後藤博之・富士通 ユビキタスビジネス戦略本部IoTビジネス推進統括部 統括部長)でヒューマンセントリックIoTのコンセプトを体現。具体的には、センサおよび独自の分析アルゴリズムを搭載したコアモジュールと、そのセンサを活用するためのミドルウェアで製品が構成される。バイタルセンシングバンドやロケーションタグ、ロケーションバッジといった組み込みデバイスとしても提供する。

 使用例の1つ、バイタルセンシングバンドは工事現場で使用した場合、センサで計測した温度、湿度、運動量、パルス数などの情報から装着者の熱ストレスを推定。さらに気圧・加速度変化を把握し、装着者の転倒も検知する。これにより、作業者の安全管理に活用できる。

IoTビジネスは、アイデア勝負で「やったもの勝ち」と提唱する富士通

 IoTを活用したビジネスの事業化については、まず富士通自身がものづくりのメーカーであることから自社で実証実験を行う。IoTモデルを自社の工場で実践し、その成果をリファレンスモデルとして提供する。

 一例として、IoT専用クラウドサービス「FUJITSU Cloud IoT Platform」を活用し、通信機器の製造工場である富士通アイ・ネットワークシステムズ山梨工場で実証実験を行った。製造現場から上がってくるセンシングデータと装置の稼働状況や従業員の作業状況のデータの相関関係を取り、製造現場を高度に可視化した。これを元に生産ラインの最適化や実行プロセスの効率化などを実施。これによりライン停止時間を30%削減しているという。

 また、従来の事業化プロセスではビジネスの効果の見極めが困難だが、ここでクラウドの拡充性を活用。事業化プロセスにビジネス実証という段階を設け、まずスモールスタートで始めて軌道修正しながらビジネスが回るかの実証実験(PoB)を行い、事業化に持っていく。

 こうした取り組みを通じて、富士通は顧客と共創する形で、IoTのソリューションを強化していく。またすべてを網羅する自社のリソースにこだわらず、いろいろなパートナーと協業し、IoTのエコシステムを拡充。他社のリソースを組み合わせたソリューションも提供する。

 今後の展開で重視するのはスピードだ。「IoTは言ってみれば『やった者勝ち』。アイデア勝負で、早くやることが重要」(後藤氏)だという。

 新たな価値を実現するIoTモデルを早くつくるほど、模倣困難性が増して参入障壁が高まる。富士通としては、現在の強みを生かして、IoT先行者利益をさらに追求する構えだ。

(文=本誌/村田晋一郎 写真=佐藤元樹)

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

エネルギーフォーカス

一覧へ

緑の経済成長とエネルギー

[連載] エネルギーフォーカス

Energy Focus

[連載] エネルギーフォーカス

今後、10年後の電力業界の様相(2)

[連載] エネルギーフォーカス

発電単価から既存原発の経済性を考える

テクノロジー潮流

一覧へ

科学技術開発とチームプレー

[連載] テクノロジー潮流

テクノロジー潮流

[連載] テクノロジー潮流

エボラ出血熱と情報セキュリティー

[連載] テクノロジー潮流

21世紀の日本のかたち 農電業と漁電業

[連載] テクノロジー潮流

工学システムの安全について

[連載] テクノロジー潮流

エネルギー移行と国民の価値観の変化

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

総合事業プロデューサーとして顧客と共に成長する―中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

広告やマーケティング、ブランディングを事業プロデュースという大きな枠で捉え、事業が成功するまで顧客と並走する姿勢が支持されているグランドビジョン。経営者の思いを形にしていく力で、単なる広告代理店とは一線を画している。 中尾賢一郎・グランドビジョン社長プロフィール &nb…

中尾賢一郎(グランドビジョン社長)

人材戦略を経営の核に成長する駐車場ビジネスのプロ集団―清家政彦(セイワパーク社長)

「PCのかかりつけ医」として100年企業への基盤構築を進める―黒木英隆(メディエイター社長)

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

20歳で探検家グランドスラム達成した南谷真鈴さんの素顔

自らの手で未来をつかみ取る革新者たちは、自分の可能性をどう開花させてきたのか。今回インタビューしたのは、学生でありながら自力で資金を集め、世界最年少で探検家グランドスラムを制した南谷真鈴さんだ。文=唐島明子 Photo=山田朋和(『経済界』2020年1月号より転載)南谷真鈴さんプロフィール&nbs…

南谷真鈴

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年1月号
[特集] 新しい街は懐かしい
  • ・「街の記憶」で未来をリノベーション
  • ・日本橋が「空を取り戻す」水辺と路地がつながる街へ
  • ・水辺はエンタメの宝庫だ 大阪が目指す観光客1300万人
  • ・街の誇りを取り戻せ 名古屋・堀川復活プロジェクト
  • ・なぜ水辺に都市が栄えるのか
  • ・2020以降は海と川がさらに面白くなる
  • ・「住む」と「働く」両方できるが求められている(たまプラーザ)
  • ・「土徳」が育む一流の田舎(南砺市)
  • ・音楽ファンが集う街づくり
[Special Interview]

 辻 慎吾(森ビル社長)

 東京が世界で勝ち抜くために必要なこと

[NEWS REPORT]

◆飛びたくても飛べないスペースジェットの未来

◆エンタメが街を彩る 地方創生に挑むポニーキャニオン

◆問題噴出のコンビニをドラッグストアが抜き去る日

◆始まった自動車世界再編 日本メーカーはどう動く?

[特集2]

 経済界福岡支局開設35周年記念企画

 拓く!九州 財界トップが語る2030年のかたち

ページ上部へ戻る