政治・経済

日本郵政の西室泰三社長(79歳)が苦悩を深めている。相談役を務める古巣東芝の不正経理問題また、日本郵政とともに今年10月上場予定のゆうちょ銀行の経営方針をめぐっては自民党との間で温度差が広がっている。傘寿を前に問題は山積している。 文=ジャーナリスト/東野卓也

 

上場目前で降りかかった東芝問題

 東芝は経営トップを含めた組織的な関与によって、利益をかさ上げする会計処理を行っていた問題の責任を取る形で、西田厚聰相談役、佐々木則夫副会長、田中久雄社長の歴代3社長が7月21日付で辞任した。東芝の元社長で日本郵政の西室社長は7月22日の記者会見で、「第三者委員会の調査結果に非常に大きなショックを受けた。社長経験者として極めて残念だ」と苦渋の表情を浮かべた。

 室町正志会長が暫定的に社長を兼任することについては、「実は本人が辞めると言っていたが、私が絶対に辞めないでくれと頼んだ。1人はリーダーシップを取る人が必要なので残ってもらった」と室町新体制を支えていくとした。

 西室氏は1996年から2000年まで4年間東芝の社長を務め、経団連会長の座を狙って05年まで会長に君臨。相談役に退いた後も「トップ人事にかかわった」(関係者)とされる。

 東芝は日本の企業としていち早く指名委員会、報酬委員会などを設置。西室氏が会長時代の03年6月には現在の「指名委員会等設置会社」(当時は「委員会等設置会社」、06年5月に新会社法で「委員会設置会社」に変更)に移行。経営に透明性がある企業とされていた。

 西室氏は、「(東芝を)他山の石としたい」と述べたが、自身が社長を務める日本郵政、子会社のゆうちょ銀行、かんぽ生命保険が東芝を見習って07年10月の民営化を機に当時の委員会設置会社制度を導入しているから人ごとではない。現に、西室氏が日本郵政の社外取締役に招へいしかけていた東芝常任顧問の村岡富美雄氏が、東芝の第三者委員会の調査を受けたことから総務省に認可申請を取り下げた。

 西室氏は今秋をめどに日本郵政とゆうちょ銀、かんぽ生命保険グループ3社の同時上場を目指しており、6月30日に東京証券取引所に上場の本申請を行った。西室氏は「(東芝の経営には)長い間タッチしていない」としたが、市場関係者からは「(目論見書など経営計画の)不信感は免れない」という声も聞かれる。

 西室氏は東証会長として06年4月にライブドアを有価証券報告書虚偽記載を理由に上場廃止に追い込んだ。不正会計企業の元トップ、元東証社長・会長経験者が異例の3社同時上場を申請するというのも皮肉な話だ。

ページ:

1

2

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[特集 新しい街は懐かしい]

水辺に都市が栄える理由と開発の事例を探る

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

次なるステージを駆け上がる日本電子「70年目の転進」–日本電子

 最先端の分析機器・理科学機器の製造・販売・開発研究等を手掛ける日本電子(JEOL)は、ノーベル賞受賞者を含むトップサイエンティストや研究機関を顧客に、世界の科学技術振興を支えてきた。足元の業績は2019年3月期で連結営業利益、同経常利益、同最終利益がいずれも過去最高を更新。かつては技術偏重による「儲からない…

独自開発のホテル基幹システムで業務効率化と顧客満足度を向上–ネットシスジャパン

逆転の発想で歴史に残る食パンを 生活に新しい食文化をもたらす–乃が美ホールディングス

新社長登場

一覧へ

森島寛晃・セレッソ大阪社長が目指すクラブ経営とは

前身のヤンマーディーゼルサッカー部を経て1993年に創設されたセレッソ大阪。その25周年にあたる2018年12月に社長に就任した森島寛晃氏は、ヤンマー時代も含めて通算28年間セレッソ一筋、「ミスターセレッソ」の愛称を持つ。今も多くのファンに愛される新社長が目指すクラブ経営とは。聞き手=島本哲平 Photo=藤…

森島寛晃・セレッソ大阪社長

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

イノベーターズ

一覧へ

非大卒就職マーケットの変革に挑む元教師の挑戦―永田謙介(スパーク社長)

日本企業の年功序列と終身雇用が崩壊に向かう中、制度を支えてきた大学生の新卒一括採用の是非もようやく議論されるようになってきた。一方、高校卒業後に就職する学生のための制度は旧態依然とし、変化の兆しがほとんど見えない。こうした現状を打ち破るべく、非大卒就職マーケットの改革に挑戦しているのがSpark(スパーク)社…

起業家にとって「志」が綺麗ごとではなく重要な理由―坂本憲彦(一般財団法人立志財団理事長)

勉強ノウハウと法律知識で企業の「働き方改革」を促進する―鬼頭政人(サイトビジット社長)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2020年6月号
[特集] 人材輩出の「新御三家」
  • ・[サイバーエージェント]経営人材を育てる方法 研修より緊張感ある現場経験
  • ・中山亮太郎(マクアケ社長)
  • ・大竹慎太郎(トライフォート社長)
  • ・塚原文奈(ストアーズ・ドット・ジェーピーCEO)
  • ・[楽天]ベンチャー精神は創業者が体現する
  • ・体育会的ノリと目標必達の企業風土が育てた起業家群
  • ・[DeNA]意志と情熱を後押しする人材育成術
  • ・橋本 舜(ベースフードCEO)
  • ・鈴鹿竜吾(ライトマップ社長)
[Special Interview]

 飯島彰己(三井物産会長)

 人が成長するために必要なこと

[NEWS REPORT]コロナ禍後の経済地図を読む

◆避けられない合従連衡 日の丸電機の進むべき道

◆自動車業界は大再編必至 生き残れるのはどこだ!

◆存続の危機を迎えた百貨店 小売り業界のEC加速が止まらない

◆“会わずに診る”コロナで広がるオンライン診療

[特集2]

 社長のセルフブランディング

 第一印象/SNS・ネットツール活用/言葉の力/プレゼン技術

 [特別インタビュー]友近(お笑い芸人)

 最強のセルフブランディング術「憑依芸」を語る 

ページ上部へ戻る