政治・経済

背景でシナリオを描く経産省の思惑

 市場構造調査の結果を踏まえて、経済産業省は各社に国内製油所の原油処理能力を16年度末までに、全体で1割削減するように指示した。

 同省はこれ以前にも、エネルギー供給構造高度化法に基づいて各社に設備の合理化を指示し、28施設あった製油所は23施設まで減った。それでも需要減退のペースには、まだ追い付けないとの判断だ。

 経産省の筋書きは、製油所の統廃合だけにとどまらない。前回の高度化計画では、主に各企業ごとの設備合理化に主眼を置いていたが、第2弾では企業をまたぐ製油所統合・再編、さらには元売り同士の事業統合や、業種の枠を超えた事業再編も視野に入れるように促している。企業規模や事業領域の拡大で財務基盤を立て直し、海外展開など成長性が見込める事業への投資に必要な体力を付けさせる狙いだ。

 この裏には16年度以降、小売りの全面自由化が進む電力・ガス事業や、下流の石油化学事業などにまたがる「総合エネルギー企業」への転換を促し、新興国などの成長市場をめぐる国際競争で、欧米の巨大エネルギー企業に対抗できる勢力を生み出したいとの思惑がある。

 同省幹部は「海外展開となると、投資の規模が国内事業とは比べものにならないくらい大きくなる。企業規模を拡大し、体力を付けなければならない」と指摘。国際化に向けたエネルギー業界再編の結集軸として、石油産業に対する期待をにじませる。出光と昭和シェルの統合は、このような筋書きとも軌を一にする。

 こうなるとコスモ石油や東燃ゼネラル石油も、うかうかしていられない。コスモ石油の幹部は「うちも(統合・再編に向けて)門戸を開いており、地域ごとや事業ごとにいろいろと話はある。メリットがあるなら前向きに検討したい」と明かす。同社は16年1月に石油・ガス開発、製油所運営、石油製品販売の3事業会社を傘下に置く持ち株会社になる。業界内には「他社との合併・統合へのお膳立てができる」との指摘がある。

 石油業界の歩みは新日本石油と新日鉱ホールディングスの統合によるJXホールディングスの誕生など、まさしく再編の歴史だった。

 これまで外部資本との合併・統合を経験せず、「純血主義」と言われてきた出光が他社との統合に動くことで、さらにもう一段の業界再編や業種をまたぐ事業再編への導火線に火がつくかもしれない。

ページ:
1

2

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩)福田隆・トライシクルCEOプロフィール 産廃処理で「B to B版メルカリ」を目指す&nbs…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る