政治・経済

デフレに頭を痛めていた外食産業も大底から脱し、一息付いた感はあるが、昨年、導入された消費増税の影響もあり反転攻勢とはいかないのが現状だ。そんな中にあって“新勝ち組”として台頭した「丸亀製麺」を展開するトリドールが壮大な構想を発表した。 文=本誌/大和賢治

 

トリドール「10年後に総売り上げ5千億円」の構想とは

 「2025年度までに売上高5千億円を達成し、外食産業で世界ランクトップ10入りを目指す」

 7月30日に都内で開催されたトリドールの「グローバル戦略説明会」で同社社長の粟田貴也氏が発した第一声に出席したマスコミは一様にとまどった。

粟田貴也・トリドール社長

粟田貴也・トリドール社長

 トリドールの15年3月期の連結売上高は872億円。今後10年間で売上高5千億円に到達するには6倍近く売り上げを伸ばしていかなければならない。国内外食市場は少子高齢化の影響も手伝い既に飽和状態といっていい。上場企業がステークホルダーに対して自社の成長戦略を説明することは重要な使命ではあるが、それにしても今回、粟田氏が掲げた目標を夢物語ととらえる人がいたところでおかしくはない。

 「恐れ多いことなのは承知の上です」と粟田氏は前置きしながらも本人は本気モード。

 背景にあるのが主力業態である「丸亀製麺」の好調だ。実際「丸亀製麺」は、直近5年間で582店舗と3日に1店舗というハイペースで出店してきた。強気になるのも当然で、同業態の牽引により同社の経常利益は10年間で10倍(70億円)に跳ね上がっている。

 「丸亀製麺」という業態は最もリーズナブルな「ぶっかけうどん」が290円から、これに100円からの天ぷらなどをトッピングしてもワンコインで賄える。まさに大衆性と日常性をうまく融合させたのが大成功した要因だ。

 加えて、ここ最近は単価が500円を上回る高単価商品の販売も順調に推移していることも同社の好調を後押ししているのだ。

 「『丸亀製麺』は外食企業にとって儲けの指標となる食材原価と労働費の比率(FL比率)が低い。さらに“うどん”という食材は客の回転率が高く効率性も高いのです。同社が事業規模の拡大に成功したのは出店コストの低いロードサイドが中心だったこともあります。最近では駅ビルやフードコートなど、出店コストの高いところにも新店をオープンさせていますが、高回転率のためコストプッシュの危険性も極めて低いのです」(業界関係者)

 他の外食にとってはうらやましい話でもあり、そういう点ではトリドールに対抗できる競合は少ないだろう。

トリドールの最大のライバルとは

 最大のライバルになり得るのはコンビニだ。新規出店したコンビニを見ると容易に認識できるが、最近、コンビニはイートインコーナーを常設している。これは明らかに外食チェーンから顧客を争奪することを意図している。

 セブン-イレブンに代表されるコンビニが業績を伸ばしてきた要因のひとつは、持ち帰り用の弁当や総菜といった中食を強化した点にある。次のステップで必須なのは、持ち帰り用だけではなく、店舗で食せる場を作ることだ。コンビニ内で購入した食材をその場で食べられるのであれば、時間の短縮につながるというメリットもある。

 実際、競合として意識しているのはどこかという本誌の問いに対して、粟田氏は即座に「単品買いが可能のコンビニ」を以前挙げていた。当時に比べるとイートインコーナーを設けているコンビニの数は急増している。しかも、コンビニの出店意欲は相変わらず旺盛。絶好調の「丸亀製麺」にとって最大の競合になるのは必然だ。

 10年後に同社が目標とする売上高5千億円のポートフォリオ上では、国内売上高は「丸亀製麺」に代表される既存業態で1300億円、これに今後、開発する新規事業の800億円を足しても目標には到底達しない。しかも国内の外食市場は1998年の77・9兆円をピークに13年には68・1兆円までに減少しているなどマイナス要因も少なくない。

 勢い海外出店が目標をクリアする前提となる。現在、同社は日本を除く世界27カ国に約190出店しているが、これを10年後に4千店に拡大するというが、ハードルは決して低くない。

 粟田氏はアジアでは「丸亀製麺」を中心、アフリカなど新興国では、未開拓地に根付くブランドの構築でスタンダード目指し、北南米・欧州ではM&Aを視野に入れたグローバルブランドの開発を挙げる。

 「親日性の強いアジアでは国内店舗を上回る売り上げを記録する店舗も出てきています。また、今後3年間で10億円規模のM&Aを実施し、目標達成に向けた基礎をつくっていきたい」と粟田氏は述べる。

 実現の可否は別として、まずは国内外食の1つの壁となる売上高1千億円をどの時点で達成できるかに注目したい。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

前田浩氏

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

一般には馴染みが薄い産業廃棄物処理の世界。古い慣習が残る業界を、ITによって変えようとしているのがトライシクルの福田隆社長だ。業界の老舗企業がテクノロジー導入に舵を切った背景と今後の展望を聞いた。(吉田浩)福田隆・トライシクルCEOプロフィール 産廃処理で「B to B版メルカリ」を目指す&nbs…

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

佐藤輝英・BEENEXTファウンダーに聞く「起業家から投資家に転身した理由」

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る