政治・経済

 今年、日本を訪れた外国人観光客の数が史上最速で1千万人を突破した。1~7月の訪日外国人客数は前年同期比47%増の1106万人に上り、とりわけ「爆買い」といわれる中国人観光客は前年の2倍以上と中国さまさまの状態だ。だが、好事魔多し。8月以降は中国政府による人民元の切り下げや上海株式市場の急落など中国経済の変調が際立つ。政府や観光業界は中国の訪日熱に水を差すことになるのでは、と気を揉んでいる。

 「政府一丸となった取り組みが奏功した」と訪日客が最速ペースで1千万人の大台を突破したことについて、太田昭宏国土交通相はこう胸を張った。

 訪日客が1千万人を突破するのは3年連続だが、2013年の12月、14年の10月より大幅に早まっている。政府は東京五輪イヤーの20年までに訪日客を年間2千万人にする目標を掲げるが、この前倒し達成はほぼ確実な状況。来年の達成も視野に入ってきた。

 旺盛な訪日需要を支えるのは政府の取り組み。特にビザの発給要件の緩和、消費税免税制度の拡充、LCC(格安航空会社)など航空ネットワークの拡大、継続した訪日プロモーション?などが功を奏している。

 だが、何よりも大きいのは為替動向、つまり円安だ。特に中国・人民元で見ると、1人民元=12~13円だった12年に比べ、今年6月に20円台を突破するなど6割前後の人民元高が進行した。為替レートの変化だけで中国人の日本での購買力が約6割上昇したことになり、これが積極的な訪日に結び付いていたのだ。

 だが、中国人民銀行は8月11日から3日連続で人民元を切り下げ、外為市場での「元安誘導」を進めた。さらに、世界同時株安まで招いた上海株式市場での「バブル崩壊」ともいえる株価の急落が続いた。

 8月25日の終値は6月の高値水準と比べて4割以上も下落。人民元/円のレートは一時17円台まで下落する局面もあったほどで、訪日ブームを支えてきた人民元高は大きく揺らいでいる状況だ。

 観光庁は、訪日客1千万人突破時の発表で「現時点では訪日ツアーへの特段の影響は見られない」(久保成人長官)としてきたが、人民元の切り下げに次ぐ上海株の急落という中国経済の急変に、太田国交相も「為替動向は日本観光に影響を与えるのではないかと思うが、もう少し状況を見ないと分からない」と戸惑いを隠せない。

 訪日客の急増は、日本経済にとって数少ない好材料だけに、国交省や観光庁は中国の動きを固唾を飲んで見守っている。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る