国際

 2013年11月、中国共産党は「18期3中全会」を開催した。この会議では、「国有企業改革」の一環として「混合所有制」が謳われている。
 この「混合所有制」は習近平政権の政策の目玉である。(国内の特定分野を独占している)国有企業が民間企業の参入を一部開放し、国有企業は民間企業からの投資を受け容れるという(その逆もある)。
 民間企業側のメリットとしては、今まで参入が排除されていた分野に進出できるようになる。他方、国有企業にとっては、民間企業の活力を取り入れることができるという。理論的には、両者はウィン・ウィンの関係を築けるはずである。
 だが、この試みは失敗に終わる可能性が高い。
 1990年、西ドイツと東ドイツが統一された時のことを思い出せば、結果は類推できるだろう。
 冷戦末期、東ドイツは旧ソ連陣営で最も優等生と言われていた。ところが、いざ東西ドイツが統一されてみると、一体、何が起きたか。
 東ドイツの会社とその生産物は、西ドイツのそれと比較しようもないほど劣っていたのである。資本主義社会からすれば、東ドイツ企業は、会社とは到底呼べる代物ではなかった。イノベーションがほとんど起こらない社会主義では、設備の老朽化が激しく、かつ経営も非効率的だった。
 さらに、東ドイツ出身者は、西ドイツ出身の人間と比べ働かなかった。社会主義国では、一生懸命に働く必要がなかったからである。したがって、東西ドイツ統一(正確には、西ドイツによる東ドイツ吸収合併)のコストは非常に高いモノとなった。
 確かに、中国の場合、国有企業と民間企業が完全合併するわけではない。けれども、かりに国有企業と民間企業が手を携えて「混合所有制」を採れば、必ず東西ドイツ統一と似た問題が起こるだろう。
 資本主義社会ならば、国有企業を徹底的に民営化すれば良い。元の国有企業は民営化によって輝くような活力を取り戻すに違いない。
 ところが、「仮面資本主義」(ティエリー・ウォルトン)の中国では、国有企業を潰すことができない。本来ならば、辞めなければならない”潜在的失業者”がごまんといるからである。国有企業が民営化した途端、失業者が増え、社会不安が増大するだろう。
 また、多くの国有企業幹部は、党幹部・政府幹部の2世、3世である。習政権が「混合所有制」を導入しようとしても、「太子党」の子弟が国有企業の既得権力を握っているので、その改革は難しい。
 民間企業が赤字を抱える国有企業へ投資しても、はたして利益が出るのか疑問である。恐らく民間企業は単に利用されるだけだろう。場合によっては、民間企業は、国有企業の赤字穴埋めのために使い捨てされるのがオチではないか。
 さて、われわれが危惧するのは、伊藤忠がタイの財閥CPと共に、国有企業の中国中信集団(CITIC)へ1兆2000億円投資する件である。
 CPは中国潮州系謝家(チエンワノン家)のチャロン・ポカパングループで、中国では「正大集団」と呼ばれる。鄧小平による「改革・開放」後、養鶏ビジネスで中国へ進出した。
 一方、投資先のCITIC(創設者は「赤い資本家」と呼ばれた栄毅仁)は金融・資源エネルギー・製造・エンジリアニング契約・不動産・インフラ等を扱う中国最大のコングロマリットである。栄毅仁は、江沢民政権の下、国家副主席まで務めた。
 伊藤忠は(1)生活消費関連分野、(2)不動産・設計・インフラ・技術分野、(3)金属・資源エネルギー分野、(4)製造分野、(5)金融分野、(6)その他とさまざまな領域でCITIC・CPと協力しようとしている。
 既に、伊藤忠は1回目のCITICへの支払いは今年4月に済ませている。2回目は出資を予定していた今年10月から8月に前倒した。総額約459億香港ドル(約7000億円)で引き受けるという。
 なぜCITICが問題なのか。それはCITICの中心部門が不動産や金融だからである。中国では、不動産バブルがはじけ、その価格下落は今後も止まらないだろう。
 伊藤忠は6000億円を投資するが、CITICの赤字穴埋めに使われる公算が大きい。その後、CITICが持ち直し、利益を出せば良いが、その可能性は低い。両者がウィン・ウィンといううまい具合にはいかないだろう。
 中国経済が右肩上がりの順調な時だったら、伊藤忠の挑戦も理解できる。しかし、われわれが常々強調しているように、現在、中国の景気は「リーマン・ショック」の時よりも悪いのである。伊藤忠の挑戦は、”危険な賭け”と言わざるを得ない。

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