政治・経済

 故・後藤田正晴氏が代表的だが、警察出身の政治家にはハト派を通り越して「反軍隊」とも言うべき資質の人物が多いように思われる。だが亀井氏の場合は、戦争を知り、兵士の気持ちになった上での平和主義だ。それは氏が警察幹部として壮絶な「戦場」を経験しているから、ということになる。具体的には、浅間山荘事件だ。後半は、そこから話が始まった。 文=德川家広 写真=幸田 森

浅間山荘の事件担当として現場を駆け回る

德川 亀井先生は、戦後の日本で実際の戦闘を指揮した数少ない1人だと思います。

亀井 あの時の私は、奴らを取り逃がした立場なんですよ。連合赤軍の連中が銀行強盗をやったりして、その後逃げ回って行方不明になっていた。それで私は警察庁で、奴らを全国追跡する総括責任者になった。連合赤軍が隠れていた山小屋を見つけて、これは近くにおるなということで、私も東京からすぐに現場に行って、機動隊を総動員して山狩りをした。機動隊と一緒に妙義山を駆け上ったら、狭い洞穴にビニールシートが張ってあったけれど、もぬけの空。それで緊急配備をして、一部は軽井沢駅前で捕えたけれど、残りは浅間山荘へ向かって、人質を取って立て篭っちゃった。私が取り逃がした連中だったんですよ。

 最初は「適正に拳銃を使用しよう」と言っていたからなかなか制圧できないでいると、相手がふとんをかぶって、ドンドン撃ってきた。そこで指示を「拳銃を使用しろ」と変えたら、こっちもバンバン撃って、あっという間に制圧できました。

德川 極左のテロリストと言っても、ピストル射撃でそんなに当たるものなのですか。

亀井 妙義山の上のほうには、蜂の巣になった空き缶がたくさん木からぶら下がっていた。連合赤軍の連中はやることがないから射撃の訓練ばっかりやっていたんだ。うまくなるはずですよ。とにかく、私が指揮していたのは浅間山荘事件の現場ではなく、事件捜査のほうでした。

德川 次々テロ事件が起きる1960年代、70年代というのは、オウム真理教事件を経た今日でも想像しにくいものがあります。

亀井 現役の警察幹部には「お前たちが今からやることは責任を取ることだけだ」と言っています。選挙で政治家を選んでも、みんなで「バンザイ、バンザイ」とやっただけで何も変わらない。じゃあ労働組合に入っても、国会前にデモをかけてみても動かない。そうしたら、どうなるか。テロですよ。かつての血盟団の井上日召とか浅沼稲次郎暗殺事件の山口二矢とか、右も左も関係なしの憂国の士が出て来る。これは絶対に防げない。警察としては責任を取るだけというのは、そういう意味です。

德川 日本の警察は優秀で、ほとんどの潜在的テロ勢力を監視しているという印象があります。

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亀井静香(衆議院議員)
(かめい・しずか)1936年広島県生まれ。東京大学経済学部卒業後、サラリーマンを経て警察庁入庁。連合赤軍あさま山荘事件などを担当。79年自民党公認で旧広島3区(現・広島6区)で衆議院初当選。現在13期。運輸大臣、建設大臣、自民党政務調査会長を歴任。2005年自民党離党後、国民新党結党。代表代行に就任。09年鳩山内閣で金融・郵政改革担当大臣に就任。国民新党離党後、日本未来の党、緑の風を経て現在無所属。著書に『晋三よ!国滅ぼしたもうことなかれ〜傘張り浪人決起する〜』エディスタ刊)など。

亀井 私は極左事件の総括責任者をやった後5年間、公安の闇の部分の総責任者をやったんです。あらゆることをやって追いかけ回しても、怪しい組織に民間の若者のふりをして潜入させても、なかなか少人数でやっている組織は捕捉できないんだ。中核とか革マルとか大きな組織は分かりやすいけれどね。

德川 世界的にはイスラム国など「テロの時代」という印象です。

亀井 日本も今までと違って、アメリカと一緒にイスラム国の「敵」になったでしょう。今まで敵性国家じゃなかったんだよ。それが、イスラム国との戦いに2億ドルも出すということを言っちゃったから。それまでは後藤健二さんの家族がイスラム国と折衝していたのが、日本国政府が相手になっちゃって、それでイスラム国が「こっちにも2億ドル寄越せ」となって、人質が殺された。あの時にイスラム国は声明を出したでしょう。これは、とても怖いことなんです。シリアにわざわざ行く日本人は少なくても、誰かをこの東京で捕まえて、グサッとやって、声明だけ出せば効果は十分なんです。警察は官房副長官など3人も内閣府に出しているんだから、総理を羽交い締めにしてでも中東に行かせるべきじゃなかった。

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