マネジメント

進研ゼミに依存しては生き残っていけない

201510020_HARADA_P03―― 信頼回復も含めて、本格的な成長軌道に乗るには時間がかかりそうですか。

原田 教育ビジネスは最低1年サイクルなんです。多くのお子さまは新学期が始まる4月に塾や習い事を大体決めます。ですから、1年間できちんと信頼回復して、それから本格的な事業の回復ということになります。

―― 少子化で事業環境が変わり、進研ゼミへの依存度が下がるとすると、将来的にどんな会社を目指すのでしょうか。

原田 良い意味で進研ゼミから脱却しないといけません。進研ゼミ以外の事業の伸び、海外事業、介護事業の伸び、それから教育面で文部科学省の教育改革に伴う新事業も展開していくので、そちらも忙しくなるでしょう。

 1人のお子さまに進研ゼミだけを提供するというビジネスモデルでは、ベネッセの将来はありません。1人のお子さまの可処分時間に、どれだけベネッセのサービスを提供できるかが日本における成長ドライブとなります。次のドライブは、当社の事業ポートフォリオからすっぽり抜けている、社会人向けの学びと生活の支援になるでしょう。そこで、大学生に対するキャリア教育や、社会人を対象としたオンライン教育プラットフォーム「Udemy(ユーデミー)」などをスタートさせました。

 また、今や英語が不可欠な時代になっていますが、傘下のベルリッツには、異文化をしっかりと理解した上で、英語のコミュニケーションが学べる商品があります。そうした社会人の領域で成長の伸びしろはまだまだあるので、どんどん展開していきたい。そのためにベルリッツの組織や人事をどうするか、講師をどう育てるかについて、戦略を練っているところです。英語を教える外国人がいても、ビジネス経験がなければビジネスマンに役立つ英語は教えられません。ベネッセはいろんな事業をやっているので、例えばそこで講師にインターンシップを経験させれば、ビジネスの現場の経験ができます。そういうことを考えていけば、サービスの価値を上げられることはたくさんある。創造的成長戦略とは、つまりそういう意味です。

―― なぜそうしたことが今まで実現できなかったのでしょうか。

原田 グループレベルで考えていなかったということでしょう。この1年は部長級以上でグループ幹部会を定期的に行い、自分の事業以外のことを学べるようにしています。他の事業のことが分からなければ、シナジーの機会も生まれませんから。

直島や犬島には「教育の原点」がある

201510020_HARADA_P04―― 岡山の話に戻りますが、地方活性化おいて何がポイントだと考えますか。

原田 いよいよ文科省が大学改革に着手し、人材の多様化、人間力育成、グローバル人材などさまざまなキーワードが出ています。ただ、これまで日本では、多くが画一的な教育で画一的な人を育て、企業も画一的な人事で横並びをやってきました。これではグローバルで勝てません。同じく、地方の活性化には、多様な人材を育成すると同時に、それを生かす経営者マインドが必要です。そのためにも東京一極型ではあってはいけない。1カ所に固まること自体が、多様化を阻むからです。やはりITインフラを使った事業モデルや働き方を進めていくことで、地方の若者がもっと活性化すると思います。本格的な過疎化の地域は別として、6大都市とそれに次ぐ都市では、そうした若者を育てる環境をつくるべきだと思います。そこで主役になるのは大企業ではなく中小企業です。就職活動で学生は1人で100社エントリーしますが、それは大企業に集中しています。結果、多くの学生が振り落され失望してしまう。素晴らしい人材を、日本の成長を本当に支える中小企業にマッチングさせるということにも真剣に取り組むべきです。

―― 岡山県には農業や繊維など伝統ある産業があって、元気のある若者も増えています。原田流の岡山活性化のアイデアがあれば教えてください。

原田 正直申し上げて、岡山を語れるほどよく勉強しているわけではないですが、農業に関していうと、岡山の桃やマスカットなどは世界に誇れるレベルだと思います。岡山産品の飛びぬけた品質をさらに進化させるIT技術や管理技術といった分野で、若者の力が生かせるかも知れません。ただITベンチャーをつくるということではなく、岡山の特産を進化させるようなIT技術の使い方を若者にブレーンストーミングしてもらえば、アイデアが出てくるんじゃないでしょうか。

―― 企業として、岡山へはどんな貢献を考えていますか。

原田 地元に貢献するというよりも、岡山が日本全体に貢献しないといけないと思いますし、当社としてはそれを支援するのがミッションだと思います。そういう意味では、情報漏えい事件の際に設立したベネッセこども基金に35億円の拠出をしましたので、これも大きな機会になります。さらに、瀬戸内で展開する文化芸術活動もしっかり継続していきたいと思います。直島はベネッセの「よく生きる」という理念を、アートと地元の方々のコミュニティを通じて実現している理想的なモデルの1つです。直島はある意味、非日常的空間ですが、本来の日本の素晴らしさが残っていて、それを思い出す1つのキッカケになるのではないでしょうか。木材を焼いて耐性を高める伝統的な焼き板塀など、町並み1つ取っても今の時代に見たら感動します。こうした素晴らしい、伝統的な生きる知恵が日本にはあるのです。同じくアート活動を展開している犬島には、約100年前につくられた銅の製錬所の工場や煙突の跡が今も残っています。精錬所は、銅価格の大暴落でたった10年間で歴史を閉じたそうですが、このような瀬戸内の島々の歴史を知ることも、非常に興味深いです。

―― 子どもの教育環境にもよさそうですね。

原田 子どもを連れていくだけで感動するはずです。そういうところが、日本人の教育の原点だと思いますよ。

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