国際

厳しい綱紀粛清が中国経済に悪影響

 中国の経済成長率は、2007年の14・1%をピークに、15年は6%台と半分以下に低下する見通しだ。中国経済の不振は構造的であるため、中国株と人民元の不安定な動きも長期化しよう。

 景気不振の構造問題は、第一に政治だ。これは、短期的にも、長期的にも、中国経済にとって最も大きなリスクとなっている。12年に発足した習近平体制は盤石に見える。現政権の中国共産党常務委員会の委員は、7名で構成されるが、李克強首相を除く6人は、習近平に近いと言われる。

 習近平政権の最大のリスクは、汚職摘発だ。中国内陸の最大の都市である重慶市のトップだった薄熙来は、汚職で摘発され、無期懲役、政治権利の終身剥奪、個人財産全没収の判決を受けた。妻の殺人事件を含め、大きな事件に発展した。

 共産党の幹部の捜査、摘発は、一般の警察や検察ではなく、共産党中央規律検査委員会が担う。一連の綱紀粛正は政府機関ではなく共産党自身が行っており、習政権の強い意志によって行われているのだ。摘発の対象は胡錦濤や江沢民ら国家主席経験者の側近たちなので、習近平が長老たちの力を削ごうとしていると考えられる。

 厳しい綱紀粛正は、中国経済に対して大きな悪影響を与えている。日本でも、かつては建設業界で談合の慣行が見られた。それに関して政治家に金銭が渡るのも珍しくなかった。ロッキード事件、ダグラス・グラマン事件のように、政府調達に関して贈収賄があった。かつての日本同様、中国政府の仕事に絡んで金銭がやり取りされるのは、ある意味では、慣習化していたのだろう。

 それが突然、厳しく摘発されたので、経済活動が一気に冷えたのかもしれない。14年までは急成長したマカオのカジノだが、中国経済の冷え込みと不正の摘発が重なり、業界の収入が激減している。

 綱紀粛正のみならず、長期的に政治の不安定が、経済の不安定をもたらす恐れがある。習政権は、反腐敗運動で大衆の関心を集め、政権の求心力を高めてきた。今後も、綱紀粛正は続くことだろう。ただし、仮に、汚職摘発が想定以上に拡大すれば、政府、党がコントロールできないほど拡大する恐れがある。その結果、社会の不満が爆発し、社会不安が政治の混乱につながる可能性がある。

 これが、少数民族の不満と結びついて拡大する恐れもある。最近、チベットやウイグルで、少数民族による暴動や爆弾事件が起きている。辺境の地で事件が起きている間は大きな影響はないが、それが北京や上海などの大都市に拡散しないとは言い切れない。

 12年の日本政府による尖閣諸島の国有化の直後、反日暴動が起こったが、部分的ではあるものの、反日という名の下に、反政府運動が行われていた。やがては、反日暴動が反政府運動に転化することもあり得よう。

 習政権は、いったん、汚職の摘発というパンドラの箱を開けた以上、後戻りはできない。中国でも、インターネットの発達とともに、人の口には戸を立てられないようになってきた。ウクライナでも、汚職や民族対立が政権の転覆や原因になった。今後も、中国の汚職問題や民族対立に注目が必要だ。

産業競争力低下と人口問題も足枷に

 景気不振の構造問題は、第二に産業競争力の低下だ。中国で高付加価値産業やグローバルブランドが育たない最大の理由は、共産主義の影響が大きい。中国は、政治的には、依然として、共産党の一党独裁だ。主力企業のトップの多くは共産党員であり、大株主が政府や政府系機関であることも多い。そして、ビジネスのためのインフラや制度が十分に整備されておらず、その運用が不透明だ。これでは中国企業が世界で通用するマーケティング力をつけるのは難しい。

 このため、賃金の上昇と共に、製造業の国際競争力は低下し、中国経済の成長の源泉だった貿易黒字は伸び悩んでいる。経常収支黒字対GDP比は、ピークの07年の10%から、14年には2%に低下した。

 景気不振の構造問題は、第三に人口問題だ。1979年に、計画生育政策(一人っ子政策)が導入された。その影響で、中国は急速な少子高齢化が進んでいる(合計特殊出生率は1・57)。ほどなく、中国の人口はピークを迎え、日本同様、人口減少に向かう。国連によると、中国の人口は、国連中位推計によると、15年の13・8億人から2100年には10・0億人と3・7億人も減る見通しだ。

 ただし、財政状態は健全であるため、08年のリーマンショック後に実施したように公共投資主体の大型経済対策を実行することもできる。さらに、外貨準備が約430兆円(15年8月)あり、これは世界2位の日本の約3倍だ。中国人民銀行による為替相場の介入も可能であるため、当面、人民元の急落はあるまい。

 これらを総合すると、中国経済、人民元相場が急速に悪化することはないとみられるが、中国の経済、株式、通貨の不安定は長続きしそうだ。

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