政治・経済

 「アース ミュージック&エコロジー」をはじめ、10以上のブランドを展開するアパレルメーカー、クロスカンパニー。グループ全体の店舗数は国内外で1千以上、グループ売上高は1千億円を超える。アパレルメーカーの枠を超えた企業への脱皮を目指す同社の、次の一手は?

 石川康晴社長が岡山に私財を投入して創設

 国内企業のみならず、外資系ファストファッションブランドの出店攻勢も激しさを増すアパレル業界。少子化の影響もあり、特に若年層をメインターゲットとしたブランドでは、苦境に立たされているところも多い。

 そのような市場環境の中、クロスカンパニーは堅調だ。店舗網は日本全国から海外にまで広がり、また、主力ブランドである「アース ミュージック&エコロジー」のテレビCMが数多く流されていることもあり、知名度はまさに全国区。今や「岡山の企業」というイメージは薄い。しかし、クロスカンパニーの本社は今でも岡山市内にあり、石川康晴社長は「岡山から本社を動かそうと思ったことはない」と言い切る。

 「1つは単純に郷土愛ですね。生まれ育ったところですから。そして、起業した土地であり、恩を受けたという想いも強い」

 1994年の創業時は、輸入衣料を扱うセレクトショップだった。「当時は輸入品の扱いが雑で、穴があいていたり、シミがある製品も混ざっていたんですよ。1日の売り上げが2万円程度の店で、そうした商品を捨てるのはすごく辛い。その時に『5千円の定価で買うよ』とおっしゃってくださるお客さまが何人もいて。とても感謝しています。その恩を忘れて、岡山を捨てることはできません」

 岡山への恩返しの気持ちを込めて石川社長が私財を投入して創設したのが「オカヤマアワード」だ。年に1度、ビジネス、文化、スポーツなどの分野で活躍した人物を表彰するこの賞も、今年で6回目を迎える。

 「私は岡山を大切に思っていますが、一方で、本部やラボ的な機能を東京に置くことも非常に大切だと思っています。東京は情報が集まる場所ですから、わが社も東京に本部を置いています。だから、オカヤマアワードを受賞した若手経営者が東京に進出して売り上げを飛躍的に伸ばした、というような話を聞くと、うれしいですね。最初の一歩を踏み出すお手伝いができた、ということですから」

岡山から生まれたクロスカンパニーの展開とは

(いしかわ・やすはる)1970年岡山県岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。現在、京都大学大学院に在学中。幼少期より洋服が好きで、94年、23歳の時にレディスセレクトショップ「CROSS」オープン。95年、有限会社クロスカンパニー設立。公益財団法人 石川文化振興財団理事長。

(いしかわ・やすはる)1970年岡山県岡山市生まれ。岡山大学経済学部卒。現在、京都大学大学院に在学中。幼少期より洋服が好きで、94年、23歳の時にレディスセレクトショップ「CROSS」オープン。95年、有限会社クロスカンパニー設立。公益財団法人 石川文化振興財団理事長。

 同社の海外展開は、香港から始まった。2011年には、中国に現地法人を設立し、現在は今期中に100店舗を達成する見込み。今では、世界28カ国で200以上の店舗を展開している。「アース ミュージック&エコロジー」はアジアで強みを発揮するが、14年にはより広い地域を視野に入れたグローバル戦略新ブランド「KOE」も立ち上げた。

 「日本は少子化ですが、世界規模で見ると人口は伸びています。だから国境を越え、若い人たちのいる場所に引っ越していく、ヤンググローバル展開を進めています。同時に国内では生産性をアップし、売り上げより利益を重視した戦略をとっています」

 岡山から生まれたクロスカンパニーは、まさにグローバル企業へと成長を遂げた。その次は? という問いに対する石川社長の答えは「ライフスタイル&テクノロジーカンパニー」

 「洋服を売っておしまいではなく、アフターサービスも提供して、ライフスタイルを提案できる企業になりたいと思っています。洋服を買えば、その後にはクリーニングも必要だし、クローゼットが狭くなったら保管場所も必要。インターネットやテクノロジーを駆使して、顧客に便利で快適な暮らしに必要なサービスを提供していきたい」

 その1歩目が、15年5月に行われた、インターネットを通じた宅配クリーニング事業を行う「バスケット株式会社」の買収だ。アパレル事業との高いシナジーと、社内でのIT技術の蓄積が期待される。アパレルの枠を超え、生活周辺サービスへの参入を始めた同社から、いよいよ目が離せない。

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

多くの経営者が目標とする株式上場。しかし、上場に掛かるコストや時間、その他諸々の条件を考慮して、「上場は到底無理」と諦めてしまうケースも少なくない。そんな経営者にとって有力な選択肢となるのが東京証券取引所の運営する第五の市場TOKYO PRO Marketへの上場だ。2018年に同市場に上場を果たした、株式会…

未来のモビリティ社会実現に向け日本と欧州の懸け橋に―シェフラージャパン

日本一歴史の長い女性用化粧品会社が挑む「革新と独創」―伊勢半

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

チェ・ゲバラに憧れた10代起業家が目指す「働き方革命」― 谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長

高校中退、ITスキルなしの17歳の青年が立ち上げた会社が、わずか2年で利用企業約500社、ユーザー約6万人のアプリを運営するまでに成長している。「世の中を変えたい」という思いを原動力に突っ走る谷口怜央・Wakrak(ワクラク)社長に話を聞いた。(取材・文=吉田浩)谷口怜央氏プロフィール…

Wakrak(ワクラク)社長 谷口怜央氏

ペット仏具の先駆企業が「ペットロスカフェ」で目指す癒しの空間づくり

元引きこもり青年が「cluster」で創造する新たなVRビジネスとエンターテインメント(加藤直人・クラスターCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸教育部…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年7月号
[特集] 素材の底力〜世界をリードする素材産業〜
  • ・素材のイノベーションが日本経済をリードする
  • ・化学工場 企業ごとの特色も鮮明に存在感増す化学素材
  • ・電気自動車普及が始まる車載バッテリーの覇権戦争
  • ・炭素繊維 市場を開拓してきた日本が技術的優位を保ち続ける法
  • ・「鉄は国家なり」の時代を経て問われる「日の丸製鉄」の競争力
  • ・経産省 日本の素材産業が世界をリードするための3つの課題
  • ・就職人気は下位に低迷でも焦らない素材メーカー
[Special Interview]

 日覺昭廣(東レ社長)

 「長期的視点で開発するのが素材企業のDNA」

[NEWS REPORT]

◆営業利益率10%突破 ソニーならではの「儲けの構造」

◆日本初の民間ロケットが宇宙空間に到達

◆携帯参入まであと4カ月 国内4番手「楽天」の勝算

◆日産・ルノーが直面する「経営統合問題」長期化の落とし穴

[Interview]

 「君は生き延びることができるか」──ガンダム世代が歩んだ40年

 常見陽平(評論家・労働社会学者)

ページ上部へ戻る