政治・経済

 創業から40年余で、はるやま商事は「はるやま」を軸に、日本全国に400店舗以上を擁する業界屈指の紳士服専門店チェーン企業へと成長した。アパレル業界の中でも、つねに一歩進んだ取り組みを行い、業界でも注目される存在である同社の強さを探ってみた。

 治山正史氏の理念 人がやらないことをやり自分たちが道を作る

 ほぼ大手4社に絞り込まれた感のある紳士服販売業界だが、その中では激しいシェア争いが続いている。景気は緩やかな回復基調と言われているが、価格競争の厳しさに変わりはない。また、団塊世代の大量退職やクールビズの普及によるスーツ離れなど、業界を取り巻く状況には厳しいものがある。

 しかしその中で、堅調な業績を続けるはるやま商事。同社の強みのひとつは、その商品開発力にあると言えるだろう。

 紳士服販売店で靴やレディース商品が売られているのは今では当たり前の風景だが、他社に先駆けて販売し始めたのは「はるやま」だ。また、今や主流となっているタイトなスーツを「脚長スーツ」の名称で売り出し、普及させたのも同社。最近では接触冷感の高機能ワイシャツ「アイシャツ」のヒットもある。北京オリンピックのオフィシャルウェアの開発から生まれた同商品は、現在までに約85万着の売り上げを記録している。

 その新商品開発をリードしてきたのが、治山正史社長だ。靴の仕入ルートがないとなれば、ビジネスシューズに絶対的な強みを持つリーガルコーポレーションに自ら共同開発を持ち掛ける。日本オリンピック委員会が求める高いクオリティーを達成するために、東洋紡から糸の提供を取り付け、厳しい条件をクリアする。まさに陣頭指揮を執ってきた。

 「アイシャツのように、うちでしかない商品じゃないと、他社との差別化はできません。でも、この業界は競争が激しいので、キャッチアップがすごい。何を開発しても、早ければ半年で追い付かれてしまうんですよ。アイシャツもまた追い付かれるかもしれない。その繰り返しですね」と治山社長は言う。

 「しかしそれならば、ずっと新しいものを作り続けていけばいいわけです。人がやらないことをやり、そこから道を作る。そうした想いを強く持っています」

「100年後の定番を生み出し目指すは、インフラ企業に」と語る治山正史氏

(はるやま・まさし)1964年岡山県生まれ。伊藤忠商事を経て、94年はるやま商事に入社。2002年社長就任。趣味は、読書・ゴルフ。座右の銘は「人は何とも言わばいえ、我が成すこことは我のみぞ知る」「幸せは、いつも自分の心が決める」「受け継ぎて、国の司の身となれば、忘るるまじきは民の父母」

(はるやま・まさし)1964年岡山県生まれ。伊藤忠商事を経て、94年はるやま商事に入社。2002年社長就任。趣味は、読書・ゴルフ。座右の銘は「人は何とも言わばいえ、我が成すこことは我のみぞ知る」「幸せは、いつも自分の心が決める」「受け継ぎて、国の司の身となれば、忘るるまじきは民の父母」

 創業者である先代・治山正次氏が岡山県内に、はるやま商事の前身となる洋服専門店を創業した約60年前、スーツは高級品だった。初任給が出るまでスーツが買えず学生服で通勤する人もいる、そんな時代。「彼らに安くて良いスーツを提供できないか」。正次氏がそう考えたところから、はるやま商事の歴史は始まる。そして、この創業の理念である「より良いものをより安く」は、現在も同社に確実に息づいている。その考えを基本に、目標としているのはインフラ企業に。

 「世の中になくてはならない、あったら便利な商品を市場に提供し続ける企業を目指しています。例えばジーンズ。リーバイスが100年以上前に作ったものがいまだに定番で残っている。そういう100年後の定番が、われわれが求めるインフラ商品です。どこの会社が作ったかみんなが覚えていなくても、商品が、企業が残ってくれたらそれでいい。今、そこに向けて一歩ずつ、スタッフとともに進んでいるところです」

 インフラを作るまでの過程として現在、力を入れているのが、新商品の開発と、販売チャネルの拡大。

 「世の中が驚くような商品をどんどん作りたい。そして、PSFAという都心型のスーツショップやビッグサイズ専門のフォーエル、ビジネス・カジュアル・レディス・ビッグサイズまで幅広い商品を提案するモリワンなど、今までもさまざまなブランドを展開してきましたが、今後もメンズウェアを中心にチャネルを広げていきたいと思っています」

 治山社長は、岡山の県民性を「ポジティブ」と言う。「私の場合は性格もあるのでしょうが、何か困難があっても、きっと乗り越えられると思っています」。そのポジティブさと堅実な経営戦略を両輪として、今後も成長が期待されるはるやま商事だ。

 

雑誌「経済界」定期購読のご案内はこちら

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

売上実績トップ企業に聞く「住宅リフォームの最新トレンドと課題」―榎戸欽治・ニッカホーム会長

素人にはなかなか分かりにくい住宅リフォームの世界。最近の業界動向と事業戦略について、売り上げ規模で全国ナンバーワンを誇るニッカホーム創業者の榎戸欽治会長に聞いた。(聞き手=吉田浩)榎戸欽治氏プロフィールリフォーム業界におけるニッカホームの競争力水廻りと木工事を絡めた中型リフ…

榎戸欽治・ニッカホーム会長

家族葬のファミーユが目指す「生活者目線で故人に寄り添う」葬儀の形

不動産のノウハウや技術を生かしサステナブルインフラへ―いちご

新社長登場

一覧へ

カリスマ創業者の後任として描く「新しいマネックス証券像」― マネックス証券社長 清明祐子

2019年4月、国内インターネット専業証券で初の女性社長が誕生した。創業者であり、カリスマ社長と呼ばれた松本大前社長から後任を託されたのが清明祐子氏。清明氏は09年にマネックスグループに入社し、子会社社長やグループ役員を経て、マネックス証券の社長に就任した。清明社長はカリスマの後任としてどんな会社をつくってい…

マネックス証券社長 清明祐子

「若者需要の開拓でビール市場を盛り上げていく」塩澤賢一(アサヒビール社長)

「事業部門の連携を活性化させ営業利益100億円を目指す」 内藤宏治(ウシオ電機社長 )

イノベーターズ

一覧へ

シリコンバレーへの挑戦が生んだ「起業家と投資家が待ち望んだサービス」― 戸村光・ハックジャパンCEO

起業家のスタンスとして、画期的な技術やビジネスモデルを社会で活かすことを目的としたイノベーション先行型もあれば、社会課題解決を最優先とし、そこに必要な技術やノウハウを当てはめていくやり方もある。ハックジャパンCEOの戸村光氏の場合は後者。対象となる課題は「身の周りの気付いたことすべて」だ。(取材・文=吉田浩)…

戸村光・ハックジャパンCEO

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年11月号
[特集] AIが知りたい!
  • ・IT未開の地に挑戦 産業構造をAIが変える!
  • ・AIは物理世界がまだ苦手 汎用ロボットの作り方
  • ・データ分析の起点は「何があれば経営に役立つか」
  • ・AI活用事例
  • ・ワトソン君は業務システムと連携する
  • ・米国で加熱する人工知能ブーム AIは21世紀最大のゲームチェンジャーか
[Special Interview]

 小川啓之(コマツ社長)

 「“経験知”に勝るものはない」コマツ新社長が語る未来

[NEWS REPORT]

◆SBIが島根銀行への出資の先に見据える「第4メガバンク構想」

◆家電同士がデータを共有 クックパッドが描くキッチンの未来

◆新薬の薬価がたった60万円! 日の丸創薬ベンチャーは意気消沈

◆1で久々の優勝を果たすもホンダの4輪部門は五里霧中

[総力特集]

 人材育成企業21

 SBIホールディングス/サイボウズ/メルカリ/ティーケーピー/シニアライフクリエイト/イセ食品/センチュリオン/タカミヤ/中央建設/アドバンテック/合格の天使/明泉学園/オカフーズ

ページ上部へ戻る