国際

中国では株バブル崩壊より不動産バブル崩壊が深刻

 

 中国の「株バブル」「不動産バブル」は既に弾けた。だが、同国の場合、普通の資本主義国家とは違って、政府がマーケットに介入するので、バブルが弾けても、それがなかなかはっきりしない。

 一般に、中国の株式市場総額は不動産市場に比べ、3%程度の規模と言われる。したがって、「株バブル」の崩壊よりも「不動産バブル」のそれの方が深刻だろう。ただ、「株バブル」崩壊は毎日の株価ではっきりと分かるが、「不動産バブル」崩壊の方は徐々に顕在化する。気づいた時には、処置の施しようがないかもしれない。

 よく知られているように、中国には「鬼城」と言われるゴーストタウンが全国各地に散在する。

 郭仁忠(中国工程院院士。シンセン市企画・国土資源委員会巡視員)の調査によれば、ゴーストタウンに住むことのできる人数は、34億人だと推定されている(また、郭仁忠は12の省都、144の県レベル都市を調査したところ、1省都市には、平均4.6ヵ所所の新都市・新区建設計画、県レベル都市では、平均1.5の新都市・新区建設計画がいまだに練られていると指摘)。

 これが事実だとすれば、中国の人口を14億とした場合、既に人口の2.4倍以上の空室が存在する。それでも、なお地方政府は不動産投資を行うつもりなのか。

 

中国政府の財政出動は困難

 

 さて、今年10月中に、中国共産党は18期5中全会を開催し、第13次5カ年計画(2016-2020年)を策定する運びとなっている。

 一部エコノミストは、習近平政権が財政出動すれば、景気は良くなるとの“楽観論”を振りまく。確かに、今の中国経済を浮揚させるには、財政支出するのが一番手っ取り早く、かつ効果が大きい。

 けれども、中央政府の財政赤字は膨大で、財政出動できる状態にはない。

 今年8月に発表された中国社会科学院の調査では、中国政府の債務残高は、2013年末、56.5兆元(約1073.5兆円)にのぼり、前年比で約20%増である。

 仮に、このペースで債務が増えているとすれば、昨14年末で67.8兆元(約1288兆円)となり、15年末には81.4兆元(約1547兆円)まで膨らむ。

 一方、今年2月に発表されたマッキンゼー・アンド・カンパニーのレポートでは、2007年、中国の負債は7兆米ドル(約840兆円)だった。だが、不動産バブルの崩壊やシャドー・バンキングの破綻によって、2014年半ばには28兆米ドル(約3360兆円)にも達しているという。

 では、習政権はどうすれば良いのか。内需(輸出が振るわない今、消費と国内での公共投資)と外需を増やす必要があるだろう。と言っても、内需には限界がある。

 周知の如く、現在、中国の景気は悪い。社会保障(年金・失業保険・疾病保険等)の欠如している同国では、いくら関税を引き下げても、簡単に消費が伸びるとも思えない。また、中国には、おびただしい数の貧困層が存在する(1日150円以上~600円以下で生活する人々が約7億~8億人)。彼らの消費が今すぐ伸びることはあり得ないだろう。

 

中国共産党は「土地私有制」に踏み切れるか?

 

 一方、習近平政権は、2022年、(成功した北京冬季五輪招致だけでなく)杭州アジア競技会の招致成功を目指している。だが、少し先の話なので、即効性のある内需拡大とは言えない。

  外需に関して、習政権は、海外での高速鉄道をはじめ、各国の大事業を受注したいところだろう。最近、米国やインドネシアで、中国は高速鉄道受注で日本と競っていた。だが、中国はどちらも受注に成功した。中国側が採算を度外視し、“丸抱え”で両国から受注したと思われる。

 その他、例えば、中国はマレー半島のタイの一部を突っ切る「クラ運河」建設を行うと良いかもしれない。

 タイランド湾とアンダマン海に挟まれたクラ地峡(東部はタイ、西部はミャンマー)が運河になれば、インド洋から南シナ海に抜ける船舶は、わざわざマレー半島突端(シンガポール)を廻って行く必要はなくなる。

 わが国をはじめ各国の運輸コストは軽減されるだろう。したがって、中国共産党は、この運河建設を推進したいところである。ただし、相手国があるので、上手く行くとは限らない。

 中国共産党がいよいよ追い詰められれば、不動産を払い下げて「土地私有制」にすれば良いのではないだろうか。この「土地私有制」こそが、共産党に残された唯一の切り札かもしれない(恐らく富裕層は、それでもなお海外移住に固執するだろう)。

 けれども、この大改革は、国是である「土地公有制」という大原則を根底から覆す。さすがの共産党も「土地公有制」を破棄して、「土地私有制」へ移行するのはかなり難しいかもしれない。

 

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

習近平政権下の中国経済と新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

格差問題が深刻化する米国―教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

刺激を浴びて徹底的に考え抜くことで自らを変革する―― 鎌田英治 グロービス 知命社中代表

「創造と変革」を掲げリーダー教育事業を展開しているグロービス。未来が予見しづらい混迷の時代を迎え、まさに新たな時代を切り拓いていくリーダーが求められている。そのような状況を受けて、グロービスは昨年、新たに執行役員以上に限定したエグゼクティブ向けのプログラム「知命社中」を開設した。[PR]次世代を担う経営リーダ…

ワンストップで手厚くサイトの売却をサポートするサイトマ――中島優太(エベレディア社長)

「支持政党なし」をつくった男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。100年弱の歴史を持つ高砂香料工業── まず御社の特徴をお聞かせください。桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える香料の専門メーカーです。基本…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

コエンザイムQ10のCMで知名度向上、売上高1兆円を目指すカネカ--カネカ社長 角倉 護

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

リグナ社長 小澤良介 家具のEC販売から様々な展開へ

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2018年9月号
[特集]
65歳からのハローワーク

  • ・総論 働く上で「年齢」は意味を持たなくなる
  • ・50歳からの15年間の準備が豊かなセカンドライフを保証する
  • ・エグゼクティブのセカンドキャリア最前線
  • ・企業のシニア活用(富士通、ネスレ日本、鹿島)
  • ・副業のすすめ 現役時代の副業は定年以降のパスポート
  • ・島耕作に見るシニアの今後の生き方 弘兼憲史

[Special Interview]

 赤坂祐二(日本航空社長)

 「中長距離LCC事業には挑戦する価値がある」

[NEWS REPORT]

◆社員の3分の1を異動したWOWOWの危機感

◆迷走か、それとも覚醒か B2Cの奇策に出るJDI

◆外国人労働者受け入れ解禁で どうなる日本の労働市場

[特集2]

 開幕まで1年!

 ラグビーワールドカップ2019

ページ上部へ戻る