政治・経済

起業家出身の異色の政治家として注目される松田公太氏だが、日本社会に多様性を求めるなど、その主張には新しい時代の到来を感じさせるものが多い。前回は、松田氏の原点がアフリカ(セネガル)とアメリカ合衆国東海岸(ボストン)という、対極にあるような2つの土地で培った国際経験だったことを明らかにした。後半では、日本に戻ってからの松田氏の奮闘ぶりと、政治家として目指す道を語ってもらった。

経営を勉強するために銀行に就職

(まつだ・こうた)1968年宮城県生まれ、東京都出身。父親の転勤で幼少期をアフリカと米国で過ごす。筑波大学卒業後三和銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。98年タリーズコーヒージャパン設立。代表取締役社長に就任。2010年参議院選挙にみんなの党公認で東京都選挙区より出馬・初当選。筆頭副幹事長、参院国会対策委員長を歴任。14年みんなの党解党後無所属に。15年政党「日本を元気にする会」を結党。代表に就任。著書に『すべては一杯のコーヒーから』(新潮社刊)など。

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德川 日本のことを知りたくて日本の大学に入ったわけですね。

松田 はい。入学したのは筑波大学で、アメリカンフットボール部に入りました。別にアメフトがやりたかったわけではないのですが、日本で大学生をやる以上、日本的な体育会に入りたいという、それだけだったんです(笑)。入部後、先輩にはしごかれました。「お前は後輩のくせになめている!」と殴られるわ蹴られるわ(笑)。そういうことを経験して、日本の文化を吸収していきました。一方で普通のアルバイトや家庭教師なども経験しました。

德川 そして大学を卒業されて、銀行員になったわけですね。

松田 もともとは大学を出て、すぐに寿司屋をやってもいいと思っていたのですが、当時アメリカでは既にお寿司がブームになっていました。それで、「寿司はもう誰かが広めてくれているな」と思い、自分がやらなくても良いのかなと、何となく情熱が冷めていきました。何をしようかといろいろ考えたのですが、その時は思いつきませんでした。それと、やはり社会人としての勉強も必要だろうという考えもあって、まずは就職しようと思ったんです。

 三和銀行に入ったのは、まずはビジネスを知ること、学ぶことから始めるべきと考えたからです。加えて、アメフト部の先輩たちの存在があったからです。「松田は将来、飲食業界の経営者になりたいんだろう。それなら商社や食品メーカーへいくよりも、銀行にいったほうが企業のことを学べるし、財務諸表も読めるようになるから勉強になる。銀行の営業マンはいろいろな社長に会えるし、経営のことが勉強できる」と、率直なアドバイスをくれた先輩もいました。

営業成績優秀でも異端児扱い

德川家広氏(政治評論家)

德川家広氏(政治経済評論家)

德川 銀行員の生活はしっくりきましたか。

松田 正直、はじめは違和感だらけでしたね。ただ、学ぼうと思っていましたので、あえてそこに没頭するというのが私の考え方なんです。父から「石の上にも3年」という言葉を教わっていましたので、最低でも3年間は黙って上司の言うことを聞いて、疑問に感じることがあっても「はい、分かりました」と、喜んでやらせていただいていました。でも、3年過ぎたあたりから、徐々に自分の思いを出すようにしました。営業をしていても自分のやりたいようにさせていただき、結果的にはそのほうが成績が良くなって、4年目からは毎年社長賞をいただけるようになりました。あとは、支店の中だけで決めるわけの分からないルールや慣例があったのですが、先輩や上司と話し合いながら少しずつ変えていきました。

德川 「掟」ですね。

松田 そうです。永田町と一緒ですよ(笑)。例えば、営業は夕方4時には銀行に戻らなくてはならないというルールがあって、それが4時半になったりすると上司に凄く怒られました。真剣に営業をしていると、どうしても戻り時間が少し遅れるのですが、上司からは「お前はなぜ4時に戻らない。お前の成績が良いのは、そうやってルールを破るからじゃないのか、出世ばかり狙っているんだろう」と言われるわけです。これには私も驚きました。自分の力を試したいし、支店のためにもなるじゃないですかと言っても、理解してもらえません。「結局、松田は帰国子女だから、日本的なルール、しきたりを守ることの大切さが分からない」と、まさに異端児扱いでした。ただ、いずれ起業しようと思っていたので、正直、自分の中ではあまり痛くはなかったです。銀行で一生やっていこうとか、出世レースに乗っていこうという思いしかなかったら、やっていられなかったと思いますけど。

 それで最後に「辞めます」と言った時には、支店長や本部の人事部から呼び出されて「辞めるな」と説得されました。人事部長には、「支店の中でいろいろと大変なことがあったようだが、全部変えさせる。だから残れ」とまで言われました。例えば私が提案した結果、それまで人事査定は次長や課長だけが判子を捺して本部に送っていたのを、本人も必ずチェックするようになりました。それまでは、自分の成績が本当にきちんと報告されているのかを見ることができなかったんです。それでも辞めたわけですが、今でも三菱東京UFJ銀行ではその仕組みが続いているとのことです。

党議拘束を外し議員に自由と責任を

20150623_KOU_03德川 銀行を辞めて、いよいよタリーズコーヒーの創業ですね。

松田 そうです。きっかけは、たまたま友だちの結婚式でアメリカへ行った時に、スペシャルティコーヒー(消費者がおいしいと評価して満足するコーヒー)と出会ったことです。それまで日本の物をアメリカに持ち込んでビジネスしたいという目線だったのですが、その逆です。タリーズは当時アメリカで4店舗しかない、シアトルのとても小さなチェーンだったんですが、「日本で私にやらせてください」と何度もお願いして、1年間かけて交渉しました。実は日本のタリーズとアメリカのタリーズは別物なんです。ロゴマークを借りて、あとは良いコーヒー豆をローストしていたので、それを輸入することにしました。その後、シアトルのタリーズは潰れてしまうのですが、日本では全く別のイメージで育てることができました。お陰さまで320店舗まで拡大して、その後、伊藤園さんに譲渡したという経緯です。

德川 政治にかかわるようになったのは、タリーズを売却した直後ですか。

松田 タリーズの後もさまざまなビジネスをしていましたが、みんなの党の政調会長だった浅尾慶一郎さんに政界へと声を掛けられた時には、ちょうどハワイで約40年続くレストラン“エッグスンシングス”の(米国を除く)世界での展開権を取得し、日本1号店をオープンしたばかりでした。コンセプトはオールデイブレックファースト(朝食を一日中!)です。

 最近、政府も企業は朝型にして、もっと健全なワークライフバランスにしようと言い出していますが、私の思いもそこにありました。日本人は商談にしても何にしても夜に行うし、食事の後も必ず2次会、3次会になってしまうんです。アメリカでは商談は朝に行うのですが、日本だとものすごく安いチェーン店か、あとは高級ホテルしか朝食を出しませんでした。そこで、「日本にも朝食で商談をする文化」を定着させたいという思いも始めた理由の1つです。メニューの中でもパンケーキが人気で、その後来るパンケーキ・ブームの火付け役となったのですが、私は単なるブームではなくて朝食文化をつくりたかったんです。

德川 みんなの党が解党して、松田さんはその後「日本を元気にする会」の代表となりました。今後どういう政治を目指されるのでしょうか。

松田 今、私が取り組んでいるのは直接民主型政治というもので、実はみんなの党でもやろうとしたことだったんです。以前、私がみんなの党の広報委員長だった時に「みんなの候補」という仕組みを作りました。インターネットで候補者を公募して、面接から街頭演説の様子、また、討論をしているところまで全部「可視化」したんです。それをネットのニコニコ生放送などで流して、ビューアーに選んでいただき、トップになった人を公認候補にするというものです。首相公選制の法案も出しましたし、原発国民投票法案も中心メンバーとして作成し、提出の運びとなりました。衆愚政治だという批判もありましたが、そうではなく、国論を二分しているような問題に関しては、広く議論するべきだというのが私の考えです。現在、われわれの政党は5人、会派は7人ですが、面白いことにみんな意見が違います。これが健全な姿だと思いますし、特に参議院は「良識の府」ですから、本気で国民のことを考えるためには、党議拘束を全部外すべきだと考えています。議員が自由に決められるようにすることで、責任を持って、ちゃんと考えていただくことが目的です。

文=德川家広 写真=幸田 森

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