政治・経済

シェアハウスは、複数の入居者がそれぞれ個室を持ち、キッチンやリビング、バス、トイレなどの設備・空間を共用しながら暮らす共同住宅だ。入居者同士の適度なコミュニケーションがあるライフスタイルは若者を中心に支持されてきたが、その年齢層も年々広がるなど、シェアハウスも新しい時代に入りつつある。 文=ジャーナリスト/横山 渉

「独身の若者」以外の入居者が増える

シェアハウス利用者の年代別割合

 シェアハウスがますます増えている。シェア住居専門のウェブメディア「ひつじ不動産」を運営するひつじインキュベーション・スクエアの北川大祐代表は、シェアハウスが増えてきた理由についてこう見る。

 「晩婚化や空き屋の増加などマクロ的にはさまざまな背景はあるが、シェア住居は長年かけて成長してきた市場だ。利用者のニーズに応えられるようなソフト(運営ノウハウ)やハード、スキームなどを事業者側もトータルでやっと提供できるようになってきたからではないか」

 シェアハウスについて、年配者の中には「収入の少ない独身の若者が住む家賃の安い住居」というイメージを持っている人が少なくないだろう。しかし、実態としてそれは正しくない。

 「年齢的には現在も20代後半が最も多いものの、30~40代の入居者が増えているので、少しずつ平均年齢が上がっている。昔から女性が多く、現在でも8割弱は女性。物件の9割が関東にあり、平均賃料は6万5千円、共益費が1万円程度。シェアハウスの家賃はピンキリで、料金設定は昔から、そのエリアのワンルームの家賃相場と同じくらいか、ちょっとだけ安い程度」

 例えば、ワンルームマンションのキッチンと言えば、本格的に料理をするには狭くて設備も不十分なところが多い。しかし、家賃が同程度のシェアハウスなら、共有スペースとはいえ、かなり広くて充実した設備のキッチンがほとんどだ。キッチンやリビングルームの充実で豊かな暮らしを実感したり大勢で暮らしたほうが安全だと考える女性もいるかもしれない。

 北川氏は最近のトレンドについて次のように続ける。

 「ここ数年は、同じ趣味を持つ人だけを入居者対象にするようなコンセプト優先の流れが続いていたが、最近は本当の住みやすさを追求するという基本に戻ってきた。例えば、パーティーなどの交流イベントが充実といっても、忙しい社会人はしょっちゅう参加できるわけではない。経営的にも、入居者を絞り込み過ぎると難易度が上がる」

 シェア住居の規模は、入居者数(部屋数)20人未満の小規模なものが約7割を占めていたが、最近は50室以上の中型や100室前後の大型物件も登場している。例えば、西船橋の「シェアリーフ西船橋」は全85戸の新築大型物件。地下には3室の音楽スタジオ設備もある。エントランスやリビングはホテルような空間で、グッドデザイン賞を受賞している。家賃は6万~7万5千円とリーズナブルだ。北川氏はこうした大型物件が今後も増えるだろうと見ている。

政府の「地方創生」でシェア住居に新展開も

 少子高齢化や過疎化などの影響で空き家が増加し続けている。総務省が5年に一度まとめている「住宅・土地統計調査」の平成25年版によると、総住宅数6063万戸のうち空き家は820万戸で、空き家率は13・5%と過去最高だ。5年前と比べて空き家は62・8万戸増えたが、そのうち一戸建ての占める割合が79%になっている。不動産が遊休資産化する現象はますます進んでいる。

 空き家に入居者を呼び込むには、供給過剰状況の中で差別化しなければならないのだが、実は単身者向け物件は差別化が難しいといわれている。そこで、さまざまなアイデアを凝らしたシェアハウスに目が向いている。

 空き家のシェアハウス化を促進し、シェアハウスを拠点とした地域活性化を目指す一般社団法人日本シェアハウス協会の山本久雄代表理事はこう話す。

 「老後は便利なマンションや介護で安心な老人ホームなどに住み替えたいと考えている高齢者は大都市に多く、その際、自宅をどうするかが課題になっている。同時に、古い住宅は耐震性が問題になるが、シェアハウス化する際に収益が上がるよう耐震化もできる」

 今年6月、民間有識者でつくる日本創成会議は、東京などで将来的に介護施設が不足するため、受け入れ機能が整っている全国41地域をアクティブシニアの移住先候補地として示した。山本氏は、こうした国策の「地方創生」にもシェアハウスは寄与できるという。

 「移住後に都市に残された住宅活用だけでなく、地方に『多世代共生型シェアハウス』をつくることを提案している。高齢者だけのシェアハウスでは10年後に“介護村”になってしまう可能性がある。アクティブシニアと若者のコミュニティーを再生すれば、地域活性化にもつながる」

 政府は2016年度に地方創生の柱として1千億円規模の新型交付金創設を決めている。地方自治体の先駆的な事業に交付金を配布するが、首都圏の元気な高齢者の地方移住を促す拠点や観光・ブランド戦略を官民で練る組織整備などを支援するとしている。

あわせて読みたい
20151117SHARING_CATCH規制緩和で金融機関の融資も本格化 シェアハウスなら利回り9~10%も可能か
「提供するのは宿泊ではなく“体験”」――田邉泰之(Airbnb代表取締役)
インバウンド増加で加速する「民泊」 宿泊施設との線引きはどこに
「新しいビジネスを否定する気はない。個人ホストとの協力も考えている」――北原茂樹(全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会会長)
議論白熱の「白タク」問題 利用者とドライバーにとって最適な形とは
「日本全国どこでもUberが使えるようにしたい」――髙橋正巳(Uber Japan執行役員社長)

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

永濱利廣

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

[連載] 深読み経済ニュース解説

日銀による追加緩和決定の影響は!?

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

ワンマンシリーズ(7)稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第19回)

ワンマンシリーズ(6)三和の法皇・渡辺忠雄〈3〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第18回)

ワンマンシリーズ(5) 三和の法皇・渡辺忠雄〈2〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

ワンマンシリーズ(4) 三和の法皇・渡辺忠雄〈1〉

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第16回)

ワンマンシリーズ(3)住友銀行に残る堀田の魂魄

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

「日本初」にこだわる男のユニークな発想とビジネス――佐野秀光(情報通信ネットワークグループ社長)

「損して得を取る」事業モデル  不動産登記情報を扱う「登記簿図書館」をご存じだろうか。 かつては法務局でしか取得できなかった登記簿情報がオンラインで簡単に取得でき、かつ、法務局では対応できないさまざまなサービスを提供するというものだ。保有登記情報は全国2450万件、会員数9500社を誇る。 この登記簿図書館を…

支持政党なし

外国人を中心に需要が高まるソーシャルレジデンスで快走―オークハウス

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

フランスの大手高級酒グループ、レミー・コアントロー社の日本法人。18世紀から愛飲されてきた名門コニャックの「レミーマルタン」や世界有数のリキュール「コアントロー」をはじめ、スピリッツやウイスキーなど戦略的なラインアップを日本市場で展開している。同社の宮﨑俊治代表取締役に事業展開について聞いた。 &nbs…

20150609_INNOV_P02

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

内装空間の総合プロデュースで想いをカタチに創り上げる――ユニオンテック社長 大川祐介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

社員の人間力を武器に5期連続増収を果たす投資用不動産会社――パートナーズ

パートナーズは全国の中古投資用不動産の売買仲介を手掛けている。2011年の創業以来、5期連続増収を達成。吉村社長は業績好調の原動力を「社員の人間力を養い、顧客満足度の向上に取り組む姿勢にある」と語る。── 数ある投資用不動産会社の中、独自の強みについて。吉村 当社では、社員の人間力を徹底的に磨きな…

企業eye

クラウドソーシングを活用した動画制作やオンライン動画制作プラットフォームを提供――Crevo

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界6月号 [月刊記念特別号]
[特集]
トップ企業の経営哲学

  • ・永守重信(日本電産会長兼社長)
  • ・新浪剛史(サントリーホールディングス社長)
  • ・北尾吉孝(SBIホールディングス社長)
  • ・林野 宏(クレディセゾン社長)
  • ・茂木友三郎(キッコーマン取締役名誉会長 取締役会議長)
  • ・樋口武男(大和ハウス工業会長)
  • ・北島義俊(大日本印刷社長)
  • ・澤田秀雄(エイチ・アイ・エス会長兼社長)
  • ・似鳥昭雄(ニトリホールディングス会長)
  • ・押味至一(鹿島社長)

[Interview]

 貝沼由久(ミネベアミツミ社長)

 経営統合で技術の受け皿を広げ新たなIoT時代に備える

[NEWS REPORT]

◆三井住友銀行、脱・たすき掛けの深層

◆一人負け、ソフトバンクに何が起きている

◆大塚家具、ロッテ……親子・兄弟相続の相克

◆ドキュメント シャープ鴻海入り1年のドラマ

◆長者番付で分かった日の丸ベンチャーの弱点

[政知巡礼]

 石破 茂(衆議院議員)

 「地方創生こそがポストオリンピックの鍵だ」

ページ上部へ戻る