政治・経済

ファインセレクトの女性専用シェアハウス「エシェル自由が丘」

ファインセレクトの女性専用シェアハウス「エシェル自由が丘」

 シェアハウスは10年以上前から右肩上がりで着実に成長してきた市場だが、シェアハウスを定義・規定する法令はなかった。そこに13年のいわゆる「脱法ハウス問題」が起きると、国土交通省は建築基準法で寄宿舎として取り扱う見解を出した。脱法ハウスは防災面の安全基準を明らかに満たしていない「違法貸しルーム」だったが、一律に寄宿舎扱いになると、真っ当に運営してきた事業者も廃業に追い込まれるため、国交省は今年3月に方針転換することとした。これにより、投資環境が大きく変わった。

 シェアハウスの設計・建築・運営会社などの業界団体、一般社団法人シェアハウスラボの理事を務める市川均氏はこう語る。

 「東京都建築安全条例の改正が4月1日に施行され、この規制緩和で銀行が動き始めた。これまで一部の金融機関しかシェアハウスへの投資にお金を出さなかったが、今はどこも積極的になっている」

 都市部を中心に空き家のリノベーション需要が高まっているが、シェアハウスの場合、リビングや水回りは共用なので、それぞれの部屋に水回り設備が必要なアパートやマンションと比べ、建築コストを抑えることができる。それは新築の場合でも同じだ。市川氏は投資利回りについて「アパートだとせいぜい5%くらいだが、シェアハウスなら都心で9~10%も夢ではない」と語る。

 「同じ敷地面積の建物なら、シェアハウスなら倍くらいの部屋数が取れる。例えば1Kで8部屋のアパートなら、シェアハウスにすれば15~16部屋になるが、家賃は半分にはならない。シェアハウスでは1部屋当たりの建築費はがくんと下がり、その分リビングなどの共用スペースを充実できる」(市川氏)

 シェアハウス事業の具体的手法はいくつかある。オーナーから建物(アパート、戸建てなど)を借り上げ、リフォームして貸し出すサブリース(一括借り上げ)、あるいは物件の運営だけを受託する方法もある。また、不動産を丸ごと(土地と建物)買い取ってリフォームするパターンや、土地を購入して新築のシェアハウス物件を建てるケースもある。現在は、サブリース方式が6割を占めるといわれる。

 シェアハウス事業にかかわるのは、どちらかといえば中小やベンチャーが多かった。理由は、管理・運営や入居者募集には独特なノウハウが必要で、一般賃貸物件より確実に手間がかかるからだ。

 そのニッチな市場に最近は大手も参入してきた。例えば、東急電鉄が「みんなで子育て」をコンセプトにプロデュースした「スタイリオウィズ代官山」は大きな話題となった。金融機関の姿勢が変わり、今後は大手資本のシェアハウス市場参入もますます活発化するかもしれない。

賃貸アパートとは異なるシェアハウス運営のノウハウ

 シェアハウスではソフト(運営ノウハウ)とハードをトータルで提供しなければならない。慣れていない事業者が普通の賃貸アパートと同じように管理・運営すると、入居者の間でトラブルが起きかねない。

 都内を中心に40物件以上のシェアハウスを管理・運営するファインセレクトの四宮一社長は「入居希望者はどこも女性が圧倒的に多い。当社物件のほとんどが女性専用で、年間を通じて空室率は10%未満」と話す。部屋数が何十室もある大型物件ならともかく、20室以下の小型物件だと、入居者の男女バランスは運営者側にとって繊細な問題だ。最初から女性専用にするのは1つの手である。入居者にも話を聞いた。

 「物件の決め手は清潔感。ゴミ当番とか、共用部分の私物の整理とか、細かいけどとても大切。時間が合えば、何人かで一緒に外食して帰ってきて、そのまま屋上で飲んだりすることも。スカイツリーも見えて、すごく気持ちいい」(N・Nさん、20代、島根出身、ネット関連会社勤務)

 入居者対象をさらに絞り込んで、シングルマザー向けのシェアハウスも都内にはいくつかある。昨年10月にオープンした「codona HAUS浜田山」もその1つ。管理・運営者の潟沼恵さんはこう話す。

 「週2回のシッターサービスがあり、夕飯サービスも近くの園なら送迎も可能。ママが安心して働ける環境を提供している」

 潟沼さん自身が離婚経験者で、当時高2と中2の子ども2人を抱えて働き始めた。しかし、多忙で定時に帰宅できないなどの問題を抱えることになった。以前、大手不動産会社に勤めていたため、不動産の知識もあり、このサービスでシングルマザー支援に動いたのだという。

 4LDKの戸建てを借り上げ、サブリースで運営しており、現在は3人の入居者がいる。そのうち1人は2カ月の赤ちゃんと一緒に住む30代未婚女性で、入居した時は妊婦だった。

 入居契約は1カ月ごとの更新で、この1年間、トラブルは全くなし。ただ、「すぐ入居したい」という希望者もいるそうで、そういう駆け込み寺的に申し込んでくる女性には注意が必要だという。DV(家庭内暴力)の夫から逃げているケースがあるからだ。そのときは問題を解決してくれる相談所を斡旋するなど、アドバイスをしている。

 潟沼さんの提供するきめ細かいサービスは、小規模なシェアハウスならではの持ち味と言ってよいだろう。

文=ジャーナリスト/横山 渉

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