政治・経済

今年6月に中村満義氏からバトンを譲り受け、鹿島建設社長に就任した押味至一氏。2015年3月期は、労務費や資材コストの高騰、海外の大型工事の損失などが響き減益となり、大手ゼネコン4社の中では最も低利益という結果に終わった。17年度までの中期経営計画において、連結経常利益650億円以上、ROE8・0%以上を掲げる鹿島だが、果たして達成は可能なのか。押味社長に感触を語ってもらった。 聞き手=本誌編集長/吉田 浩 写真=幸田 森

押味至一氏が地方回りで感じた調達面の危機感

(おしみ・よしかず)1949年生まれ、神奈川県出身。74年東京工業大学工学部建築学科卒業後、鹿島建設入社。2005年執行役員横浜支店長、10年専務執行役員建築管理本部長、13年専務執行役員関西支店長。15年6月から現職。

(おしみ・よしかず)1949年生まれ、神奈川県出身。74年東京工業大学工学部建築学科卒業後、鹿島建設入社。2005年執行役員横浜支店長、10年専務執行役員建築管理本部長、13年専務執行役員関西支店長。15年6月から現職。

―― 社長就任後は地方回りをしていたとのことですが、何か発見はありましたか。

押味 東京や東北の案件が多い一方、それ以外の地域も建設需要は非常に堅調だということが分かりました。物価が高騰している中、仕事量は前年同期と比べて減っていません。北海道から沖縄まで、増築や企業の設備投資の話がかなり増えています。「底堅い」という印象です。

―― 中期経営計画の達成に向けて良いスタートが切れたと。

押味 感触は非常に良いと思います。2015年から16年にかけては底堅く推移するでしょう。ただ、そうなると今度は調達面で厳しい状況になるので、それをどうするか考えなければいけません。次の手をしっかり打たなければ、17年、18年は大変なことになります。社長就任後1年目は、何としても中計初年度の目標達成は果たさなければなりません。これが崩れたら厳しくなるので、今は重要な時期だと感じています。

―― 資材の高騰や人材確保の問題は今も続いているのでしょうか。

押味 首都圏の大型建設プロジェクトが本格化するのは来年度、再来年度ですから、今年の初めごろは少し一服感がありました。ただ、このままいけば、職人さんをしっかり集めるという点で大変になってくると感じています。中計で掲げた17年度にROE8・0%以上、連結経常利益650億円以上の目標は、順調にいけば達成できると思いますが、むしろ仕事をきちんとこなしていくことへの注力が必要です。

―― 人材調達の話とも関連すると思いますが、新国立競技場への再入札にはまだ鋭意検討中とのことですね(編集部注:インタビュー後の9月18日に再入札への意思表明が締め切られた)。

押味 2年先の職人不足などの状況が分からない中で、さらに新たな工事を入れて良いのかという判断は非常に難しいです。社内では締め切りぎりぎりまで、可能性を探って議論しているところです。われわれは仕事を請け負う立場ですから、本来なら仕事を頂けるのはありがたいことですが、コストが上がるときは慎重に受注判断をしなければいけないケースも出てきます。

 大型プロジェクトになると見積時点から工事着手までが2年近くかかる場合もあり、そこで仕事が重なれば、職人さんの奪い合いになり、コストが上がる要因になります。コストが見積時点と施工時点で大きく変わる可能性があるのが、一番痛いところなんです。地方から東京へ職人さんを呼ぶだけでも宿泊費や厚生費などがかさんできますから、相当なコストアップになります。

鹿島は海外では小案件も手掛けて実績づくりに努めると語る押味至一氏

20151117_KAJIMA_P02―― 国内でそれだけ繁忙期を迎える中、海外比率も上げる意向を示していますが。

押味 海外については、例えばミャンマーやバングラデシュなど、まだ当社として具体的な案件がない地域について、調査を行っているところです。本格的に社員が現地に行って大きなことをするというより、将来すぐに対応できる体制を整えられる勉強をしておくということが目的です。

―― 具体的にどんな準備を行っているのですか。

押味 まずは、小さな仕事を始めるところからと考えています。それによってお客さまや地場の協力会社との人間関係が生まれ、現地での仕事の進め方も分かってきます。そうしたことを今のうちにやっておかないと、いざ大きなプロジェクトを手掛けようとしてもうまくいきません。当社の場合、タイやベトナムなどの法人から周辺地域へもある程度支援が可能なので、多くの仕事を手掛けることによって、仕事をするための基盤をつくることができると考えます。

―― 前期は他のスーパーゼネコンに比べて利益面で下回りましたが、改善策は。

押味 その状況はもう終わると思いますよ。ある時期に大型工事を連続して受注してしまったので、近年のコストアップに耐えられなかったことが、利益率低下の理由です。

 今後はコストの見極めをしっかり行う、ということが重要だと思います。

押味至一氏が心に抱き続けた超高層への思い

20151117_KAJIMA_P03―― 押味社長はかねてから現場第一主義を強調していますが、トップの立場から、今の現場の課題はどう見えていますか。

押味 社内で言っているのは、管理部門が現場をいかに支援するかが大事だということです。現場が一生懸命やっているからこそ利益が生まれるわけですから、管理部門に携わる社員も、現場が生き生きと働けるような環境づくりをしないといけません。全員がそういう気持ちになれば、現場に対してやれることは数多くあると感じています。

―― 現場への思い入れという部分で、今まで手掛けた中で印象深い案件は。

押味 それぞれ思い入れがありますが、現場所長として初めて手掛けた三洋証券の藤沢支店は思い出に残っています。40歳になって初めて所長になってたった1人の現場でしたから、何でも自分でやらなければなりませんでした。

 また、私は超高層の建物に憧れて鹿島に入社したので、初めて超高層を手掛けさせてもらった、アクトシティ浜松も思い出に残っています。入社17年後の1991年のことでした。当時から鹿島は超高層の建設を相当やっていたのですが、私がいた横浜支店はそれまで超高層の案件がなかったのです。アクトシティは高さ約190メートルで、当時の鹿島の中では一番大きな現場でした。そういう案件に携わらせていただけただけでも、当社に入って良かったとつくづく思いましたね。

―― 超高層に憧れたのは映画を見て感動したからだと聞いていますが。

押味 「超高層のあけぼの」という映画です。60歳以上の人たちはみんな知っていると思いますよ。土木では「黒部の太陽」が有名ですが、建築では「超高層のあけぼの」が同じくらい有名で、今見ても面白いです。

―― 今の若い人たちには、そうしたロマンは抱きにくい時代かもしれませんね。

押味 そうかもしれませんが、今でもモノづくりに憧れて当社に来る人たちは確実にいます。ですから採用に関しては、建設に情熱を持っている人を集めてほしいとお願いしています。

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