政治・経済

 金融庁が2020年をめどに、大手保険会社に国際的な資本規制を適用する見通しとなった。保険会社が将来、契約者に支払う保険金額(負債)の計算方式を変え、日本の現行基準よりリスク管理が厳格に見積もられることになる。追加の資本増強が必要になったり、保険商品の開発や運用、配当などにも影響が出る可能性がある。

 保険会社には国際的な資本規制がなく、各国・地域ごとの独自基準に委ねられている。このため、保険監督者国際機構(IAIS)は、金融危機など想定外のリスクが生じても保険会社が経営危機に陥りにくくなるよう新たな規制づくりを進めてきた。IAISは19年に国際資本規制をまとめる予定。金融庁も新規制の受け入れを前提に、国内の規制や制度見直しに向けた議論を始めることになった。

 新規制の基本的な仕組みは日本の「ソルベンシー・マージン比率」と同じだ。保険会社は将来の保険金などの支払いに備えて責任準備金を積み立てているが、その積立金を上回るリスクが発生した際にも対応できる自己資本が求められる。この責任準備金の計算が変わる。

 現在は契約した年に契約者に支払う保険金額にあたる負債を決めているが、新規制では負債を時価評価する点が特徴だ。毎年の金利水準によって負債が増減するため、必要な自己資本も変動する。終身保険など長期契約商品が出しづらくなったり、資産運用でリスクをとりにくくなる可能性がある。また、金利の変動幅が大きければ、リスクに見合うよう求められる自己資本も引き上がりかねない。

 保険会社は「利益を還元する形で行っていた配当を減らさざるを得ない」(大手生保)と警戒する。金融庁のルールづくりに対し、なるべく契約者に影響が出ないよう配慮を求める声も上がっている。もっとも、新規制の対象は▽自国以外に3カ国で保険を販売▽自国以外からの収入保険料の総額がグループ全体の1割を超える▽総資産が500億ドル以上もしくは収入保険料が100億ドル以上――の保険会社。現時点では日本で該当するのは東京海上ホールディングスなど損害保険大手3社と第一生命保険の4社のみだ。

 日本生命保険などの第一生命以外の大手生保は海外の保険料収入が少なく、現時点では対象外だが、各社とも海外保険会社のM&Aを積極化しており、新規制が国内に導入される20年には国内大手に一律に導入される公算が大きい。日本生命は今後3年間で自己資本を1兆円積み増す方針。規制を見据え、前倒しで自己資本を強化する動きも活発になる見通しだ。

 

【霞が関番記者レポート】の記事一覧はこちら

【政治・経済】の記事一覧はこちら

 

経済界電子版トップへ戻る

関連記事

好評連載

深読み経済ニュース

一覧へ
一般社団法人かぎろい出版マーケティング代表 西浦孝次氏

[連載] 深読み経済ニュース解説

2015年の経済見通し

[連載] 深読み経済ニュース解説

再デフレ化に突入し始めた日本経済

[連載] 深読み経済ニュース解説

消費税率引き上げ見送りの評価と影響

[連載] 深読み経済ニュース解説

安倍政権が解散総選挙を急ぐ理由

実録! 関西の勇士たち

一覧へ

稀有のバンカー、大和銀行・寺尾威夫とは

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第20回)

実録! 関西の勇士たち

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第17回)

三和銀行の法皇・渡辺忠雄の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第14回)

住友の天皇・堀田庄三の人生

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第11回)

商売の神様2人の友情 江崎利一と松下幸之助

[連載] 実録! 関西の勇士たち(第7回)

関西財界の歴史―関経連トップに君臨した芦原義重の長期政権

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

葬儀業から脱皮しライフイベントのプラットフォーム運営企業へ―ライフアンドデザイン・グループ

古い体質が残り実体が見えにくい葬儀業界の中で、「パッケージ化された分かりやすいサービス」「家族葬など小規模葬儀に特化」「低価格だが高品質のおもてなし」「出店スピードの速さ」等を強みに事業拡大。人生の終末や死別後に備えた事前準備を行う。文=榎本正義 村元 康・ライフアンドデザイン・グループ社長…

人材領域で培ったテクノロジーを活用し社会課題を解決する―ビズリーチ

上場して分かったTOKYO PRO Marketのメリット―前田浩・ニッソウ社長に聞く

新社長登場

一覧へ

地域に根差した証券会社が迎えた創業100周年―藍澤卓弥(アイザワ証券社長)

中堅証券会社のアイザワ証券は今年7月、創業100周年を迎えた。この記念すべき年に父からバトンを受け継ぎ新社長となったのが、創業者のひ孫にあたる藍澤卓弥氏。地域密着を旗印に掲げてここまで成長してきたアイザワ証券だが、変化の激しい時代に、藍澤社長は何を引き継ぎ、何を変えていくのか。聞き手=関 慎夫 Photo:西…

メディカル事業を横串にすることでシナジーを発揮し、顧客満足度向上へ 伏見有貴(リゾートトラスト社長)

新事業の芽を伸ばすことでさらに大きな個性的な会社を目指す――日髙祥博(ヤマハ発動機社長)

イノベーターズ

一覧へ

「測量美術」が起こす道路工事のイノベーション―草木茂雄・エムアールサポート社長

経済界が主催するベンチャー企業支援企画「金の卵発掘プロジェクト2018」でグランプリを受賞した草木茂雄・エムアールサポート社長。建設・土木というガテン系の領域でイノベーションを起こすための挑戦を追った。(吉田浩)草木茂雄・エムアールサポート社長プロフィール 測量とアートが結び付く「測量美術」とは何…

IT化で変革する産業廃棄物処理の世界―福田隆(トライシクルCEO)

再エネ時代到来に向け、大石英司・みんな電力社長が目指す「顔の見える」世界

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 …

大学の挑戦

創立100周年、西南学院大学・K.J.シャフナー学長「世界に貢献しインパクトを与える人材を育てる」〜国際交流・就職支援・インターネット出願〜 

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界2019年8月号
[特集] SDGsは江戸にある
  • ・「仁義道徳」 経済人に必要な「利益」と「倫理」
  • ・「利他」 「気候変動に具体的な対策を お金の流れが意識を変える」
  • ・「善の巡環」 高邁な理想を支える創意工夫と挑戦
  • ・「才覚、算用、始末、商人倫理」 SDGsの精神宿る江戸商人
  • ・「国利民福」 国が栄えれば人々も幸福になる
  • ・「先も立ち、我も立つ」 石田梅岩と商人道徳
  • ・「気丈」 学問は「治安」「エンタメ」「立身出世」──江戸庶民の教育事情
  • ・「心田開発」 二宮尊徳の報徳思想
[Special Interview]

 里見 治(セガサミーホールディングス会長グループCEO)

 日本初のIR事業への参入はエンターテインメント事業の集大成

[NEWS REPORT]

◆メガバンクからの陥落目前 みずほ銀行の昨日・今日・明日

◆巨大ドラッグストアチェーン誕生か 業界再編はココカラ始まる

◆カリスマ・鈴木修会長に陰り? ピンチを迎えたスズキの前途

◆G20農相会合で見えてきたスマート農業の未来像

[特集2]

 AI時代に稼げる資格

 今必要な資格、将来必要な資格はこれだ!

ページ上部へ戻る