文化・ライフ

“本命”のプラティニ氏は自らの潔白を証明すべき

 誰がトップに就いても、この組織を改革するのは容易ではあるまい。それほどまでに汚職の闇は深い。

 来年2月に実施される国際サッカー連盟(FIFA)会長選に7人が立候補した。有力視されているのがFIFA副会長でヨーロッパサッカー連盟(UEFA)会長のミシェル・プラティニ氏だ。

 プラティニ氏は現役時代、「将軍」と称されたフランスの名選手。知名度は他の追随を許さない。残念ながらこのプラティニ氏も汚職疑惑と無縁ではない。

 現会長のゼップ・ブラッター氏から、2011年2月、FIFA会長選前に200万スイスフラン(約2億5千万円)もの大金が渡ったことが明らかになったのだ。

 プラティニ氏は同年6月に行われるFIFA会長選に立候補する意向を固めていたが、この直後に出場を取りやめ、ブラッター氏支持に回った。この事実は、何を意味するのか。

 この大金はFIFAの金庫から支出されていたため、プラティニ氏はFIFA倫理委員会から90日間の暫定的資格停止処分を受けている。

 それでもサッカーの本場・ヨーロッパの理事を中心にプラティニ氏待望論は今でも根強いものがある。現会長のブラッター氏が途上国重視の運営を行っていたからだ。プラティニ氏なら、ヨーロッパに軸足を移してくれるだろうとの期待が根底にある。

 1998年にFIFA会長に就任したブラッター氏は99年、「ゴールプログラム」という助成制度をスタートさせた。

 1件当たり>40万ドルを上限に支援するこの制度は、途上国の協会には慈雨となった。その多くはスタジアムの改修やトレーニング施設の整備などに充てられた。

 FIFA版ODAとも言えるこの制度を、ブラッター氏は最大限活用した。ヨーロッパの理事たちは「アジア、アフリカ、南米などからカネで票を買ってきた」との疑いを持っている。

 かつては対立関係にあったプラティニ氏が疑獄の中心人物と目されるブラッター氏から大金をもらっていたとあっては具合が悪い。

 会長選に出る以上、プラティニ氏は自らの潔白を証明する必要がある。そもそも汚れた手で改革はできまい。

 もっとも、サッカー版ODAのすべてが悪とは言えない。途上国に対する支援は必要だからだ。

 問題なのは資金の流れが不透明なことである。

まずは会長の任期制導入から手を付けるべきでは

 FIFAの構造改革を訴える市民団体「ニューFIFAナウ」の共同創設者ジェイミー・フラー氏は、朝日新聞(9月10日付)のインタビューに「例えば、25万ドルでできる施設に100万ドルを配り、その使い道をチェックしていない」と語っている。

 残りの75万ドルはどこに消えたのか。倫理委員会には、その点にこそメスを入れてもらいたい。

 同時に反ブラッター派が多数を占めるヨーロッパ出身の理事たちの途上国に対する無策も責められていい。

 途上国援助に関する具体的な施策を打ち出せなかったことが、結果としてブラッター氏の長期政権に手を貸す一因となってしまったのだ。

 仮にプラティニ氏が次期会長となりヨーロッパ重視政策を打ち出せば、非ヨーロッパとの溝は、さらに深まる可能性が高い。

 では、新会長はどこから手を付けるべきなのか。私見を述べれば、最低でも任期制は設けるべきだと思う。

 ブラッター氏は17年、彼の後見役だったジョアン・アベランジェ氏は24年にわたってFIFAに君臨した。これだけ長期間にわたって権力がひとりの人物に集中すれば、組織が腐敗するのは必然。

 ブラッター氏はアベランジェ政権下での事務総長時代も含めると計34年にわたってFIFAを最もよく知る立場にあった。サカナを見れば分かるように、組織は末端からではなく頭から腐るのである。

 FIFAの中でも改革派と目される理事からは「任期を3期12年に」との声が出ている。その程度あたりが落とし所か。

 FIFAと並ぶ巨大スポーツ組織の国際オリンピック委員会(IOC)を見てみよう。会長の任期は原則的に2期12年、定年70歳である。FIFAも、これにならうべきではないか。

 IOCのトーマス・バッハ会長は「(FIFAには)構造的な問題がある。単に新会長を選ぶだけでは解決されない」と語っている。

 一連の迷走を受け、コカ・コーラ、VISA、マクドナルドといった大スポンサーのFIFAに向けられる視線は徐々に厳しくなりつつある。

 巨大組織は自浄能力を示せるのか。幹部一人ひとりの危機意識が問われている。

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