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中国経済を見る場合は縦と横の視点が必要に

(しん・さいひん)1944年中国江蘇省海門市生まれ。81年中国社会科学院大学院修士課程(日本経済史)修了。同大学院准教授、東京大学客員研究員、早稲田大学客員研究員、御茶ノ水女子大学客員研究員、一橋大学客員研究員を歴任、三井物産戦略研究所中国経済センター長、多摩大学教授を経て2012年より現職。 写真=佐藤元樹

(しん・さいひん)1944年中国江蘇省海門市生まれ。81年中国社会科学院大学院修士課程(日本経済史)修了。同大学院准教授、東京大学客員研究員、早稲田大学客員研究員、御茶ノ水女子大学客員研究員、一橋大学客員研究員を歴任、三井物産戦略研究所中国経済センター長、多摩大学教授を経て2012年より現職。 写真=佐藤元樹

 先日発表された中国の2015年第3四半期GDPは前年同期比6・9%増。09年第1四半期以来の低成長だ。中国経済が減速しているのは確かである。しかし、中国経済を見る場合、縦の視点と横の視点が必要になる。

 縦の視点で言うと、2桁成長をしてきた過去の中国経済の成長はもう終了した。ただし、横の視点、つまり世界の主要国と比較すれば、まだ高い成長率を維持している。今、主要国の経済は、米国以外はどこも減速している。昨年の世界経済の増加分のうち、中国の貢献によるものは3割と巨大だ。中国経済を見る場合、この縦の視点と横の視点で見る必要がある。

 とはいえ、中国経済の現状は決して明るくない。私は2カ月に1回の割合で、中国の現地調査を行っている。そこから得た実感では、リーマンショック時を超える経済減速が起きていると思う。ひとつは、中国政府当局が実行している金融緩和の頻度から、それは裏付けられる。リーマンショック時、中国の経済は減速し、刺激策として金融緩和が行われた。具体的には金利の引き下げと、商業銀行が中央銀行に預ける預金準備率の引き下げを行った。リーマンショック時には、利下げが4回、預金準備率引き下げが3回行われた。ところが昨年11月以降、利下げがこの10月までに既に5回、預金準備率引き下げが4回行われている。恐らく利下げと預金準備率引き下げは、年内に少なくとも1回は行われるだろう。

 私が主催している中国経済フォーラムでは、10月に上海、杭州、無錫の3カ所を視察してきた。この3カ所はいずれも景気の下振れ圧力が強まっている。上海など中国東南部の沿海都市では、黒竜江省、吉林省、遼寧省など東北3省から仕事を求めるために来る人が急増している。この3省は今、いずれも不景気に見舞われ、多くの人がリストラされ失業者となっている。当局の発表によれば、全国31省市自治区のうち、GDPワースト5に東北3省が顔を揃える。東北地域は国有企業が集積する有数の工業生産基地であり、その景気の悪さから中国経済の厳しさの一端がうかがえる。

中国経済統計の取り方は実態と合わない部分も

 中国経済の減速の要因のひとつは、車と住宅という2大成長エンジンが止まっているためだ。裾野が広く、他の産業分野への波及効果が絶大だが、ここに疲労感が漂い、牽引力が乏しい。

 中国経済は暗いだけかというと、そうでもない。中国政府はさらなる金融緩和など複数の景気刺激策を持っている。金利と預金準備率は日米欧に比べて高い水準にあり、今後も引き下げる余裕がある。追加インフラ投資も可能だ。外貨準備高は減少したものの、なお3・55兆ドルあり世界1位を保っている。金融危機の発生は考えにくい。ただし中長期的には生産年齢人口の減少や投資と生産の過剰など構造的問題を考えれば、5%や4%成長も視野に入れるべきだろう。

 中国の李克強首相は経済活動の指標として、電力使用量や鉄道貨物輸送量を重視するとしているが、これは現在の中国経済の実態にそぐわなくなっている。まず電力消費量だが、経済の構造変化で、GDPに占める第1次産業、第2次産業の割合が低下し、第3次産業へと比重が移ってきている。伸長著しいサービス業の電力消費量はあまり多くない。貨物輸送量も地域の格差を反映していない。上海市、北京市、重慶市の都市部は鉄道より自動車輸送が多いため、貨物輸送量が少ない。一方、遼寧省は鉄道網が発達しているため貨物輸送量が非常に多いといった問題がある。

 中国経済の減速が日本経済にどう影響するか。日本の第2四半期GDP成長率がマイナス1・2%に転落したのは、「チャイナショック」による日本株価下落率が中国を除く主要国の中で最も高かったことなどから裏付けられる。日本経済は中国依存度が高いからである。

 対中輸出は14年が前年比6%増の13兆3844億円。これに香港向け輸出4兆円強を加えると、17兆円で全体の23・6%で第1位。訪日中国人は、14年に前年比83・3%増の241万人で、台湾、韓国に次いで3位だが、日本での中国人消費金額は5583億円でダントツの1位だ。今年は人数も金額も1位となるのは確実で、中国人の「爆買い」消費は日本の景気を下支えしている。さらに対中直接投資のリターン。経済産業省が発表した「通商白書2015年版」によれば、12年度国別日系企業の日本側への配当金額は、中国の日系企業が約0・33兆円で1位となっている。

 中国巨大市場の日本への影響力はますます増大している。アベノミクスは円安株高のメリットを除き、経済成長の成果が少ないと言わざるを得ない。アベノミクスの成長戦略も日銀のインフレ目標2%の実現も、中国経済の減速の影響で、大きく目算が狂うかもしれない。(談)

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