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フォーカスポイントをどこに定めるかで変わる中国経済の見方――宋文洲 (ソフトブレーン マネージメント・アドバイザー)

実際の中国のGDPは公式発表より大きい?

(そう・ぶんしゅう)1963年中国山東省栄成市生まれ。85年中国東北大学工学部卒業。同年中国国費留学生として来日、86年北海道大学大学院に入学。90年同大学院工学研究科博士課程修了。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するが、3カ月で倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年にソフトブレーンを創業。2000年東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人では初のケースに。06年ソフトブレーン会長を退任し、現在は同社マネージメント・アドバイザー。 写真=佐藤元樹

(そう・ぶんしゅう)1963年中国山東省栄成市生まれ。85年中国東北大学工学部卒業。同年中国国費留学生として来日、86年北海道大学大学院に入学。90年同大学院工学研究科博士課程修了。天安門事件で帰国を断念し、札幌の会社に就職するが、3カ月で倒産。学生時代に開発した土木解析ソフトの販売を始め、92年にソフトブレーンを創業。2000年東証マザーズに上場。成人後に来日した外国人では初のケースに。06年ソフトブレーン会長を退任し、現在は同社マネージメント・アドバイザー。 写真=佐藤元樹

 中国経済は明らかに減速している。先に発表された第3四半期のGDPは前年同期比6・9%増。政府は年初、7%増を死守するとしていたが、株価暴落をきっかけに、現実を認めざるを得なくなったのだろう。政府発表のこの数字自体を疑問視する向きもあるが、私は全くの“でまかせ”ではないと思っている。

 世界銀行の予想数字もこれとあまり差異はなく、米国の著名な調査機関やシンクタンクも、実際は中国の発表より高いのではないかと見る向きもある。金融・経済情報を配信する米国の総合情報サービス会社ブルームバーグは、実際の中国GDPは公式発表より大きい可能性があると指摘。フランクリン・テンプルトン・インベストメンツの新興市場グループ会長を務めるマーク・モビアス氏は、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、「中国は現在、経済の軸足を製造業からサービス業に移しつつあるため、経済の多くの部分がデータに含まれていないと見ている」としている。

 米経済調査会社ロジウム・グループのアナリストらがワシントンの戦略国家問題研究所(CSIS)からの委託でまとめた9月のリポートも、中国のGDP算出方法が国際慣行にほぼ準拠しており、GDPが全くの捏造だという批判は誤解に基づいていると指摘した。また同リポートは中国経済のサービス部門の推計が一番難しく、不動産セクターのGDPへの寄与度は実際にはもっと高いと分析し、GDPは公式データよりも小さいことはないと指摘した。

 私は中国人だから、中国経済の見方に対して肩入れしているというわけではない。確かに今の中国経済が減速していることは明らかだが、ただ、多くの日本のマスコミが指摘する“中国崩壊論”は行き過ぎだろう。

 ではなぜこれほど中国経済への見方がぶれるのか。それはフォーカスポイントをどこに取るかで変わってくる。

 今年10月初めの国慶節は、中国国内の観光客が各地に押し寄せ、万里の長城は人の波で城壁が見えないほどで、道路も大混雑となった。中国人は、あまり車をローンで買う習慣がなく、現金決済。そのお金はどこから捻出するのか。訪日中国人観光客の“爆買い”も続いている。中国経済が破綻するのであれば、なぜあれほど多くの中国人観光客が来日し、買い物を行っているかの説明が付かない。中国人は今年1億人が海外に出掛けるということだが、何せ13億人の人口を抱え、彼らがこれから所得を伸ばしていけば、まだまだ巨大な消費が見込まれる。

ここ数年で5、6倍に高騰した中国の人件費

 私は6年前に家族と共に北京に拠点を移し、5年間生活して、昨年末に再び日本に戻ってきた。北京に帰国した2006年に、私の25歳の甥は大学を卒業後、中国で自動車ディーラーの事務職に就いていたが、その月給は2千元くらいだった。ところが今や大卒後1~2年のビジネスマンの月給は5千元くらいまで上がっている。5~6年で3倍くらいに上昇しているのである。私が最初に日本に来た30年前は、わずか100元前後だったのだから隔世の感がある。

 靴や靴下、おもちゃメーカーなど低賃金に支えられた製造業にとって、わずか5年で3倍に高騰した人件費は、大変なコスト圧迫要因だ。杭州や香港に近い沿岸部などには、安い人件費でモノづくりをして輸出を中心にしてきたこうした産業が集積している。それらは今、バタバタと倒産するか、工場をタイやベトナム、カンボジアなど人件費の安い地域へ移転している。

 一方で、日本と競争入札していたインドネシアの高速鉄道プロジェクトは、中国が受注した。インドネシア政府の財政負担なし、債務保証をする必要もなしという破格の条件だ。日本の場合はオールジャパンで臨むため、どこの企業から人員を出すかを決めるだけで1年かかることを含め、工期は最低5年程度なのに対し、中国は3年で完成にこぎつけるという。中国の強みはコスト面だけでなく、人海戦術による短期間の工期も大きい。しかも、中国はアジアの各国とは陸続きなので、日本に比べて効率が格段にいい。

 中国の国内の鉄道総営業キロ数は、この5~6年で日本の6倍くらいになった。今後、国内の人口100万人都市をすべて高速鉄道で結ぶ計画で、あっという間に日本の10倍くらいになるだろう。その先には東南アジアやインドなど、これからインフラ整備が控えている国々がある。中国のこの分野の製造業は今後数年にわたって活況を呈する。製造業といってもこのように明暗が分かれ、すべてが悪いということではない。

 中国は共産党による1党独裁政治なので、政治リスクは確かにあるし、今の体制が未来永劫存続するとも思わないが、あまり悲観的に見るよりも、足元の現実を直視しつつ、今後の中国に注目していくべきだ。(談)

 
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