国際

 周知のように、OECD(経済協力開発機構)中、韓国の自殺率が1番高い。2003年から2013年まで11年連続である。韓国の自殺率は10万人当たり29.1人で、2番目はハンガリー(19.4人)、3番目が日本(18.7人)と続く。特に、韓国では、若者の自殺率が高い。死因の第1位が自殺である。

 韓国の20代・30代へのアンケート(就職ポータルサイト・ジョブコリア。複数回答)結果を見ると、同国の過酷な実態が分かる。彼らは人生で“何かを諦める”必要があるというのだ。
 多くの若者は、①恋愛、②結婚、③出産を諦める。そのため、彼らは「3放世代」と呼ばれる。この3つに加えて、マイホームと人間関係(構築)を諦める「5放世代」、さらに夢と希望を諦める「7放世代」とも言われる。
 男性が諦めるのは、順に①結婚、②夢、③マイホーム、④出産、⑤恋愛である。他方、女性が諦めるのは、①出産、②結婚、③マイホーム、④夢、⑤希望の職業である。
 また、85.9%若者が、以上のいずれかを諦めなければならないと答えている。反対に、諦めないと答えた若者は、14.1%にすぎない。

 今、「働けば働くほど貧しくなる」と考えている韓国人がいる。また、「1日16時間働いても豊かになれない」と嘆く韓国人もいる。多くの韓国人は、労働意欲を喪失しているふしがある。

 IMD(スイス国際経営開発研究所)の調査によれば、韓国人の労働意欲は他のアジア諸国・地域と比べ著しく低い。61カ国中、韓国人は54位である。この順位は、52位のイタリア人、53位のロシア人の下に位置する。
 香港人は7位、台湾人は9位、日本人は11位、シンガポール人は21位、大陸の中国人は25位だった(ちなみに、1位がスイス人、2位がデンマーク人、3位がノルウェー人である)。
 韓国は日本をはるかに凌駕する「学歴社会」である。特に、大学受験は国を挙げてのメインイベントとなっている。また、大学での成績が良くないと、まず大企業には入れない。したがって、日本の大学生とは違って、韓国の大学生はほとんど遊ぶ暇はない。

 一般に、多くの韓国人は「寄らば大樹の陰」で“大企業依存症”である。起業する人は多くない(この点台湾人と真逆である。多くの台湾人は起業して「老板」〈=社長〉になるのが夢である)。
 そのため、韓国を代表する10大財閥(韓国GDPの約75%を占める)に勤めれば、“成功者”と見なされるだろう。ただし、従業員300人以上の大企業は、非正規雇用者が176万人おり全体の38.3%にも達する。非正規従業員が正規従業員に“昇格”する可能性は低い。

 さて、現在の韓国では「不公平、不安、不信」の「3不社会」だと言われる。
 第1に、貧富の格差である。韓国では、大企業と中小企業の賃金格差が100対40だという。歴代政権が、大企業優先の施策を採ってきたので、大きな格差が生まれたと考えられる。

 第2に、年金制度である。1988年に公的年金が導入された(当時、既に軍人・私学教員・公務員のための年金制度は存在していた)。原則、60歳以上に支給されるが、2013年から5年ごとに支給年齢が1歳ずつ上がる(2033年には65歳からの支給となる)。しかし、年金未加入者は40%以上にも及ぶという。

 また、日本と比べ、韓国の年金は1カ月平均4.4万円と低い(生活保護給付金4.7万円よりも劣る)。具体的な例を挙げてみよう。
 平均月収約23万円で、年金支払い年数が20年の場合、1カ月約2.3万円である。同額の月収で、年金の支払い年数が40年になっても2.9万円しか支給されない。
 平均月収約230万円でも、年金支払い年数が20年の場合、年金支給額は1カ月約5.4万円である。同額の月収で、年金支払い年数が40年でも、年金受給額は月額約10万円程度となっている。
 もし老後の蓄えがなければ、高齢者にとって生活は厳しいだろう。

 第3に、医療保険である。韓国の医療保険は支払い額が少ない。けれども、その分、自己負担の割合が大きい。大病院になるほど、自己負担率が3割から6割へと上昇する。したがって、病気・怪我で入院した際には、医療費が高額となるのを覚悟しなければならない。
 また、病気の早期発見に有益なCTスキャンやMRI等の検査は100%自己負担となる。そのため、一部の韓国人は病気が重くならないと病院へは行かない(ただ、がんなどの重篤な病気に限り、自己負担は軽くなる)。
 韓国の高齢者が病院へ行っても、青壮年と自己負担率は変わらない。したがって、高齢者には負担が重くのしかかる。

  結局、現代の韓国は、「3放世代」の若者はもとより、高齢者も生きづらい社会と言えるのではないだろうか。
 
 

関連記事

好評連載

グローバルニュースの深層

一覧へ

2015年の中国リスクと新時代の到来

[連載] グローバルニュースの深層

グローバルニュースの深層

[連載] グローバルニュースの深層

原油事情に関するロシアの分析

[連載] グローバルニュースの深層

プーチン露大統領の内外記者会見

[連載] グローバルニュースの深層

中間選挙後の米国を展望する

[連載] グローバルニュースの深層

中国を制するものは世界を制す

変貌するアジア

一覧へ

鴻海によるシャープ買収のもう1つの狙い

[連載]変貌するアジア(第37回)

変貌するアジア

[連載]変貌するアジア(第36回)

SDRの一翼を担う人民元への不安

[連載]変貌するアジア(第35回)

「3不社会」韓国の「3放世代」

[連載]変貌するアジア(第33回)

開催意義不明の日中韓首脳会議

[連載]変貌するアジア(第32回)

朱立倫の総統選出馬と台湾海峡危機

津山恵子のニューヨークレポート

一覧へ

CESの姿が変わる花形家電よりもネットワークに

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第20回)

津山恵子のニューヨークレポート

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第19回)

米・キューバ国交回復のインパクト

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第18回)

クリスマス商戦に異変! 店舗買いが消え行く

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第17回)

教育の機会格差解消にNY市が動き出す

[連載] 津山恵子のニューヨークレポート(第16回)

米中間選挙で共和党が圧勝 16年大統領選はどうなる!?

ビジネストレンド新着記事

注目企業

一覧へ

独自のプラットフォーム戦略で、外食産業の新たなスタンダードを創造する――きちり社長 平川昌紀

 1998年、関西に第1号店を出店して以来、現在に至るまで16期連続増収と絶好調なのが、多彩な業態の飲食店チェーンを展開するきちりだ。2006年からは関東にも本格的に進出、同社が展開する全78店舗のうち、既に首都圏の店舗が36店舗を占めるなど、その勢いは加速している。同社の平川昌紀社長は、「首…

20150310_face_01

新たな価値観への シフトを目指すソフトウエアテストのプロ集団――SHIFT社長 丹下 大

日本の会社を変える画期的な請求書電子化システム―― インフォマート社長 村上勝照

新社長登場

一覧へ

「技術立脚の理念の下、付加価値の高い香料を開発します」――高砂香料工業社長 桝村聡

創業から95年、海外に進出してから50年以上たつ国際派企業の高砂香料工業。合成香料では日本最大手であり、国際的にも6%以上のシェアを持つ優良企業だ。 100年弱の歴史を持つ合成香料のトップメーカー ── まず御社の特徴をお聞かせください。 桝村 1920年創業ですから、2020年に100周年を迎える…

桝村 聡

「ネット広告が変わってもクライアント本位の姿勢は変わりません」--バリューコマース社長 香川仁

「最新情報を発信、人と企業の働く環境を良くしていきます」--マンパワーグループ社長 池田匡弥

イノベーターズ

一覧へ

フィンテックで個人向け資産運用業界の“破壊”に挑戦――高岡壮一郎(ヘッジファンドダイレクト社長)

「世界ランキング上位の一流ヘッジファンドに低コストで投資できる」が売り。証券会社等の販売会社を「中抜き」することで、グローバルで一番良い選択肢を個人投資家に提供する投資助言サービス。契約累計877.4億円、継続率95%以上の実績で成長しているフィンテック・ベンチャー。最高品質を最安値で提供する 「金融のユニク…

20160115_TAKAOKA_CATCH

老舗コニャックメゾンがブランド強化で日本市場を深耕――Remy Cointreau Japan代表取締役 宮﨑俊治

デザイナーズ家具のEC販売で業界の“常識打破”に挑戦――リグナ社長 小澤良介

大学の挑戦

一覧へ

専門分野に特化した“差別化戦略”で新設大学ながら知名度・ブランド力向上を実現――了徳寺大学・了徳寺健二理事長・学長

2000年設立で、了徳寺大学が母体のグループ法人。医療法人社団了徳寺会をグループ内に持つ。大学名の「了」は悟る、了解する、「徳」は精神の修養により、その身に得た優れた品性、人格を指す。「了徳寺」は人間としての品性、道を論す館の意味を込めた大学名だ。 聞き手=本誌/榎本正義 、写真/佐々木 伸 教育部門と…

大学の挑戦

創立100周年を控えて「世界に貢献し、インパクトを与える人」の育成に努めます――西南学院大学・K.J.シャフナー学長

「“STAND BY YOU”のスローガンの下、学生一人ひとりに寄り添う教育を」――中央学院大学・佐藤英明学長

企業eye

一覧へ

海外ビジネスの第一線で活躍した2400人のエキスパートを擁し、日本企業の海外事業を支援。

上場企業OB・グローバル企業のエグゼクティブを中心に2400人の顧問を擁し、その人脈・ネットワークは90カ国に渡るサイエスト。費用対効果が見える現場経験に基づいた海外進出支援を行っている。 ── 起業の経緯について。塚崎 起業前、あるベンチャー企業の海外事業担当者としてインドに駐在し、携帯電話のアプリを販売し…

企業eye

部材選び、設計、施工まで100%オリジナルの住宅を提供。木製サッシ生産にも注力――東京組

建物のデザイン、設計、施工から販売、メンテナンスまでワンストップで提供――成和

経済界からのお知らせ

最新号のご案内

経済界7月5日号
[特集]
仕事と脳

  • ・脳科学が生み出す知見はビジネスチャンスの宝庫
  • ・加藤俊徳(脳の学校代表)
  • ・“生涯健康脳”には食事を含めた生活習慣の見直しを
  • ・佐々木 康志(NTTデータ経営研究所社長)
  • ・石山 洸(リクルートR&D本部RIT推進室室長)
  • ・山川 宏(ドワンゴ人工知能研究所所長)

[Special Interview]

 田中 仁(ジェイアイエヌ社長)

 「目から脳をのぞく。究極のウエアラブルデバイスは、JINS MEMEだ」

[NEWS REPORT]

◆三井不動産が狙う日本橋・医薬ビジネス聖地化計画

◆コンビニATM不正引き出し事件で深まる謎

◆領収書の電子化で不正経費は防げるのか

ページ上部へ戻る